ワインを評価する上で、1つ大きな要素となるのが、樽の利用の有無だと思います。
発酵工程や熟成工程においてオーク樽を利用したワインは、独特の風味を持っていると言われます。
そして、テイスティングにおいてそれらのワインを評価する場合には、それらの風味をしっかりと記述する必要があると思います。
樽をしたワインは、よく、バニラ、クローブ、コーヒー、スモークなどの記述用語で表現されます。
しかし、私はこれまでそれぞれの用語の違いをあまり考えずにこれらの記述用語を使ってきました。
そこで、これらの用語の違いを少し整理してみたいと思います。
参考にした記事は、Decanterの「Festive tasting notes decoded: Christmas spices in your wine?」という記事です。
まず、樽を表す用語として頻繁に用いられるものとして、次のような用語をピックアップしました:
・バニラ(vanilla)
・クローブ(clove)
・ココナッツ(coconut)
・スギ(cedar)
・木炭(charcoal)≒ 焦げた木(charred wood)
・スモーキー(smoky)≒ 燻製(smoke)
・チョコレート(chocolate)
・コーヒー(coffee)
そして、それぞれの用語の特徴を参考記事の情報をもとにまとめてみました:
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バニラ(vanilla)
・甘いスパイス
・赤ワインや白ワインに含まれる
・特に、若いアメリカンオーク樽での樽熟成中に多く生成される
・バニリン(vanillin)と呼ばれる香り成分に由来する
・リオハの赤ワイン、カリフォルニアとオーストラリアのシャルドネなどに含まれる
・樽のトーストレベルが軽いと表れやすい
クローブ(clove)
・オーク樽熟成中に生成される
・オイゲノール(eugenol)と呼ばれる香り成分に由来する
・甘いスパイスに分類される
・ボルドーのクラシックなオーク熟成をした赤ワインやソノマ・ナパヴァレーのボルドーブレンドなどに含まれる
ココナッツ(coconut)
・ココナッツミルク/オイル、スナックバーに含まれる乾燥ココナッツなどにも含まれる香りである
・甘い果物やハチミツとは違ったくすんだ甘い香りを持ち、アーモンド、コーヒー、チョコレートなどが持つような強い芳香を持つ
・ラクトン(lactone)というエステルに由来する香りである
・アメリカンオークによる樽熟成で生成される
・アメリカンオークで数か月樽熟成をしたリオハの赤ワインで感じられる香りである
スギ(cedar)
・赤ワインの製造においてオークが使われたことを示す香り
・ナパバレーやボルドー(特に左岸)のフルボディのカベルネソーヴィニヨンのバラエタル/ブレンドワインに含まれる
・フレッシュでセイボリー(旨味のある)で、樹脂のようなわずかにスパイシーな香り
・アメリカンオークなどの芳香の強いオークでは検出されにくい
木炭(charcoal)≒ 焦げた木(charred wood)
・炭火焼の香り
・煙のような、気のような、やや刺激的な風味
・シラー/シラーズワインなどによく含まれる
・オーク熟成などで生成される
・樽のトーストレベルなどでその強さが影響を受ける
・バローロなどのタンニンの強い赤ワインや、古典的なボルドーブレンドなどに含まれる
スモーキー(smoky)≒ 燻製(smoke)
・オーク由来の香り
・オークのトースト、樽の使用回数、樽の熟成期間によって香りの強さが決まる
・ヘビートーストをした新樽で香りが出やすい
チョコレート(chocolate)
・フルボディの赤ワインによくみられる香り/風味(南フランスのメルロー、モンテプルチャーノダブルッツォ、バロッサバレーシラーズなど)
・直火もしくはオーブンで強くトーストをした樽によってワインに付与される香りでもある
コーヒー(coffee)
・オークを使った白ワインで見つけられる香りの1つ
・若いワインの熟成中に樽から形成される香り
・ヴィンテージシャンパーニュにはスモーキーなカプチーノの香りが見つかる
・オーク樽のトーストによって生じるフルフリルチオール(furfurylthiol)と呼ばれる有機化合物に由来する香り
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全体を眺めてみると、使われる樽の種類(アメリカンオーク/フレンチオーク)や、ワインのスタイル(クラシック/それ以外)によって、使われる用語に違いがあるようです。
例えば、バニラやココナッツはアメリカンオークでよく用いられ、クローブ、スギ、木炭は比較的クラシックなボルドースタイルで用いられることが多いようです。
そしてそのイメージを独断と偏見でチャート化してみたのが下の図です。
まだ勉強が足りないので、アメリカンオーク的な用語と、フレンチオーク的な用語という1軸での評価ですが、勉強が進んだら新たにアップデートをしてみたいと思います。