ワインに関する書籍を読んでいると、時々、「ピノノワールの栽培には石灰岩土壌が向いている」という文言を目にすることがあります。
そのために、知らない間に「ピノノワールと言えば、石灰岩土壌」というイメージが勝手に頭の中に作り上げられてしまっていました。
しかし、改めて考えてみると、なぜ「ピノノワールに石灰岩土壌」が向いているのかを深く考えたことはありませんでした。
そこで今回は、「なぜ、ピノノワールに石灰岩土壌が向いているのか」を考察してみたいと思います。
石灰岩土壌は多くのブドウに向いている
まず、いくつかのワイン書籍やウェブサイトを調べてみてわかったことは、石灰岩土壌はワイン用のブドウ栽培一般に向いていると考えられているようであるということです。
特に、ピノノワールだけが石灰岩土壌の恩恵を受けるわけではないようです。
では、なぜ、ピノノワールと言えば「石灰岩土壌」があがるのでしょうか?
その大きな理由の1つは、ピノノワールのメッカであるブルゴーニュ、特に、コート・ド・ニュイの土壌にあるのだと思います。
ブルゴーニュの土壌は、石灰岩と粘土の混合です。その中でも、世界最高峰のピノノワールワインを生み出すと言われているコード・ド・ニュイの土壌では、石灰岩が大きな比率を占めています。
つまり、世界最高峰のピノノワールが生まれる土壌が石灰岩土壌であるために、「ピノノワールには石灰岩土壌が向いている」と言われているのだと思います。
そして、もう1つの理由としては、ピノノワールがワイン用ブドウ品種の中でも栽培が難しい品種の1つであるということがあげられると思います。
ピノノワールは、よく気難しい品種と形容されることがあるくらい、栽培が難しいことで有名であり、良い果実を実らせるためには最高の栽培環境が求められます。
そのため、ブドウ栽培にとって非常に適した土壌の1つである石灰岩土壌が適した栽培環境としてあげられているのだと思います。
石灰岩土壌は、なぜ、ブドウ栽培に適しているのか?
では、今度は、なぜ石灰岩土壌がブドウ栽培一般に適しているのかについて、考察をしてみたいと思います。
私が調べてみた範囲では、石灰岩土壌の次のような特徴が理由としてあるようです:
① 保水力と水はけの良さ
② ミネラルや栄養素の取り込みやすさ
③ 耐病性
諸説あるようですが、石灰岩土壌は、もともと海底にいた貝殻やサンゴなどの残骸が堆積し、石灰化した堆積物により形成された土壌であると言われています。この土壌の多くは、白、灰色、またはベージュの中間的な色合いであり、カルシウムを多く含むアルカリ性のpHの高い土壌です。また、石灰岩には多孔質という特性もあるようです。
一般に、ワイン用のブドウ栽培には、多すぎず少なすぎない水が必要であると言われています。そのため、土壌には一定の保水力と水はけの良さ(①)が求められます。多孔質である石灰岩土壌は、乾燥した時期には水分を保持し、大雨のときには水はけをよくすることができ、この一見矛盾するような両方の特徴を兼ね備えていると言われています。また、カルシウムを多く含む粘土質は、含まない粘土質よりも、構造上、根が深くまで入り込みやすいとも言われています。
ミネラルや栄養素の取り込みやすさ(②)については、これまでのいくつかの研究がなされているようです。それによれば、カルシウムを主成分とする土壌は、他の栄養素を主成分とする土壌よりも、ブドウの木が必要とするミネラルや栄養素(マグネシウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム)が取り込みやすいと言われています。
耐病性(③)についてもいくつか研究が行われており、カルシウムは病気に強い果実の形成に不可欠であるようです。カルシウムは果実の果皮に最も多く含まれますが、その量が欠乏すると、十分に強い果皮が形成されないそうです。その結果、果実は酵素の攻撃に弱くなったり、菌類の病気にかかりやすくなると言われています
このような理由から、石灰岩土壌はブドウ栽培に適しているようです。しかし、まだ研究中の分野もあり、必ずしもこれらのすべての特性が明確に証明されているわけでもないようです。
<了>