今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。
場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。
コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。
しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。
その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。
なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。
まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。
この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。
これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。
残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。
それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。
これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジェ・エシェゾー村の畑と一続きになっていることがわかります。
ここから考えられることですが、その畑ごとに独特のテロワールがあると言われているグランクリュ畑以外の畑では、この2つの村のテロワールには大きな違いがないのではないかということです。
ちなみに、AOC(原産地呼称統制)制度はテロワールを基礎に造られており、それぞれのAOCを与えられた土地が、その栽培地特有の品質をワインに与えることを前提としています。
つまり、フラジェ・エシェゾー村の名前を冠するワインが無い理由としては次のような要素が大きく影響しているのでないかと考察します:
・村名ワイン以上を造ることのできるブドウ畑が村の外れにある
・村名ワイン以上を造ることのできるブドウ畑がロマネ・コンティ村の畑に近い
・フラジェ・エシェゾー村の村名ワイン以上を造ることのできるブドウ畑の多くの面積を、2つのグランクリュ畑が占めている
また、ロマネ・コンティ村がワイン業界においてネームバリューがあることも、もしかしたら、理由の1つとなっているのかもしれません。
あくまでも個人的な考察をしてみました。
<了>