今回は、リースリングワインの産地による味わいの違いを考察してみようと思います。
リースリングの有名産地を3か国あげるとしたら、次の3つがあがると思います。
①ドイツ
②フランス(特に、アルザス)
③オーストラリア(特に、イーデンヴァレー、クレアヴァレー)
ドイツ
リースリングは、ワイン用ブドウとしてドイツで最も栽培面積の多い品種です。
ドイツ国内のリースリングの産地としては、モーゼルやラインガウなどいくつかがありますが、ワインのスタイルの違いは、産地による影響よりも、ワインのカテゴリ(品質分類)の違いによって大きくあらわれるようです。
スタイルの異なるワインのカテゴリとしては、辛口ワインが多く造られる「クヴァリテーツヴァイン(Quälitatswein)」と、多くの甘口ワインが造られる「プレディカーツヴァイン(Prädikatswein)」との2つがあげられます。
クヴァリテーツヴァインは最も生産量の多いワインであり、その多くは、辛口で、ライトボディ、かつ、フルーティーな早飲みワインです。ドイツのワイン産地は、世界のワイン産地の北限に位置しており、ブドウの成熟度はそれほど高くならないために、このようなスタイルになるのだと考えられます。
より成熟度の高いブドウから造られる一部の最高品質の辛口ワインもこのクヴァリテーツヴァインに含まれていますが、その数はそれほど多くありません。そのため、クヴァリテーツヴァインは主に次のような特徴をもっていると考察されます:
クヴァリテーツヴァインの特徴
【外観】
・淡いレモン色
【香り】
・弱い~中程度の香りの強さ
・フルーティーでフレッシュな香り
・ 緑色系果実(青リンゴなど)~柑橘類(レモン、ライムなど)
・白い花の香り
【風味】
・辛口~オフドライ
・高い酸味
・低~中程度のアルコール度
・ライトボディ
【品質・価格】
・良いワイン
・低価格~中程度の価格帯
ちなみに、先ほど言及したGG(Grosses Gewächs)などの最高品質の辛口ワインの場合には、ブドウの成熟度が高まるために、香りの強さが高くなり、香りには有核果実やトロピカルフルーツの香りが現れ、ボディも中程度以上になることが予測されます。それでも、冷涼地域のワインの特徴である香りの繊細さやボディの軽さ、酸味の高さはしっかりと感じられるものになるのではないかと思います。
(関連記事:ドイツワインのVDPとは?VDPの格付けに関する考察)
一方で、プレディカーツヴァインは、遅摘みのブドウや、過熟ブドウ、貴腐ブドウなど様々な糖度のブドウから造られるワインが含まれるために、そのワインスタイルにはかなりのバリエーションが含まれます。しかしそれでも、プレディカーツヴァインに共通する特徴としては、一定の残糖量、高い酸味、低いアルコール度があげられます。プレディカーツヴァインは主に次のような特徴を持っていると考察されます。
プレディカーツヴァインの特徴
【外観】
・淡いレモン色(カビネットなど)~濃い黄金色(TBAなど)
【香り】
・中程度~強い(※ワインの品質による)
・青色系果実(カビネットなど)~トロピカルフルーツ(アウスレーゼなど)
・白い花の香り
・(貴腐ブドウを含んだワインのみ) ハチミツ、ドライフルーツ、柑橘果実の皮、ショウガ
【風味】
・半辛口~甘口(極甘口を含む)
・高い酸味
・低いアルコール度(※辛口の場合は中程度のアルコール度)
・ライトボディ(カビネットなど)~フルボディ(TBAなど)
【品質・価格】
・良いワイン~素晴らしいワイン
・低価格~高価格
アルザス(フランス)
リースリングはアルザスにおいても最も栽培面積の大きいブドウ品種の1つです。
アルザスではリースリングは、上質指定4品種(Noble grape varieties)の1つであり、上質なワインが造られます。
アルザスはその雨風に守られた地形的な特徴から、緯度のわりに暖かく、雨も少ない乾燥した栽培環境であるために、成熟度の高いブドウが収穫されます。そのため、ドイツのリースリングに比べると、ボディはよりしっかりしており、香りは柑橘類(レモン、グレープフルーツ)に加えて、有核果実(モモなど)まで感じられるのが特徴です。
また、ドイツのリースリングは白い花の香りが感じられることが特徴であるのに対して、アルザスのリースリングは石や鋼のようなミネラルの香りが感じられることも特徴の1つであると言われています。これは一部のアルザスの土壌特性に由来していると言われています。
アルザスのリースリングワインの特徴をまとめると、次のようになるのではないかと考察されます:
アルザス産リースリングの特徴
【外観】
・中程度のレモン色
【香り】
・中程度~強い(※ワインの品質による)
・柑橘類(レモン、グレープフルーツ)~有核果実(モモなど)
・火打石/濡れた石の香り
【風味】
・辛口~オフドライ
・高い酸味
・中程度のアルコール度
・ミディアム~フルボディ
【品質・価格】
・良いワイン~素晴らしいワイン
アルザスのリースリングからは、遅摘みワインのヴァンダンジュ・タルティブや、貴腐ブドウを使ったセレクシオン・ド・グラン・ノーブルも製造されますが、製造量がそれほど多くないために、これらの特徴は割愛しています。
オーストラリア(クレアヴァレー、イーデンヴァレー)
オーストラリアで高品質なリースリングを造る地域としては、南オーストラリア州のクレアヴァレーとイーデンヴァレーが有名です。
オーストラリアの一般的な気候はリースリング栽培には暖かすぎますが、クレアヴァレーやイーデンヴァレーは、風の影響や、標高の高さによってオーストラリアの中でも涼しい気候が得られることが特徴です。
これらの地域で製造されるリースリングワインは、一般的に、辛口でミディアムボディ、高い酸味を持つことが特徴です。また、強い柑橘類の香りを持ち、熟成をさせると、ハチミツやトースト、石油のようなスモーキーな香りを持つと言われています。
オーストラリアのリースリングワインの特徴をまとめると、次のようになるのではないかと考察されます:
オーストラリア産リースリングの特徴
【外観】
・中程度のレモン色
【香り】
・中程度~強い(※ワインの品質による)
・柑橘類(レモン、グレープフルーツ)
・地域により、青色系果実(青リンゴ)や有核果実(モモ)の香り
・[熟成を経た場合] ハチミツ、トースト、石油
【風味】
・辛口
・高い酸味
・中程度のアルコール度
・ミディアム
【品質・価格】
・良いワイン~素晴らしいワイン
オーストラリア産リースリングワインの特徴を書き出してみると、アルザス産のリースリングワインにとても似通っており、味わいの違いを見極めるのが難しいような気がします。
しかし、色々調べてみた結果、アルザスリースリングは若いうちから比較的ふくよかでボディに厚みがある印象であり、オーストラリアリースリングは若いうちは痩せた印象のあるワインが多いようです。
例えば、アルザスリースリングは残糖があり、柑橘類に加えて有核果実(モモ、アプリコットなど)の香りまで持つものが多い一方で、オーストラリアリースリングは、残糖を持たず、柑橘類の香りが中心のものが多く、どちらかと言えば熟成をさせて初めてそのポテンシャルが発揮されるものが多いようです。
リースリングワインは、他の品種よりも産地による違いが大きく出にくい印象を受けますが、各ワインの特徴をまとめてみると、何となくそれぞれの違いが見えてくるような気がします。
<了>