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ドイツワインの品質分類のピラミッドで誤解していたこと

 ドイツワインは、ワイン法によって大きく 4つ に分けられています。 原産地名称保護のある「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」と「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein) 」、地理的表示保護のある「 ラントヴァイン(Landwein) 」、そして、地理的表示のない「 ドイッチャー・ヴァイン(Deutscher Wein) 」の4つです。 図で表すと次のようなピラミッドで表されます。ドイツワインを学ぶ場合、これはおなじみのチャートです。 これは基本的には、 品質分類の順位 を表したものだと思います。つまり、そのワインの 生産における制約の厳しさ を、上から順に並べたものだと思います。 例えば、最上位のプレディカーツヴァインの製造には、ブドウの栽培地、収穫方法、ブドウ中の最低糖度、ラベル表示などに厳しいルールが設けられています。しかし一方で、最下位のドイッチャー・ヴァインにおいてはドイツ国内であれば特にブドウ栽培地の制約はなく、その他についてもそれほど厳しい制約はありません。 そして、このような特徴を持つ品質分類のピラミッドにおいて、私は長らく勘違いをしていました。 それは、 「基準が厳しい=生産量が少ない」という思い込み です。そのため、生産量は階層が下のものの方が多く、上位になるにつれて減っていくと思っていました。 ちょうどピラミッドのチャートが表すように、下位の ドイッチャー・ヴァインやラントヴァインがドイツワインの生産量を下支えしている のだと思い込んでいました。 しかし、実際の生産量は、その思い込みと異なりました。 生産量を考慮すると、ピラミッドは概ね次のような形となります。 ドイツワインの生産量を下支えしていると思われていた「 ドイッチャー・ヴァイン 」と「 ラントヴァイン 」を合わせた生産量は実は全体の4%ほどしかないそうです。 そして、残りの生産の2/3ほどを「 クヴァリテーツヴァイン 」が占めており、残りの1/3ほどが「 プレディカーツヴァイン 」です。 実は、日常的にもっとも多く飲用されているワインは、このチャートが表すように「 クヴァリテーツヴァイン 」なのだとか。 今回の件は、チャートによる視覚的効果によって、事実を誤認してしまう典型的な例の1つだと思いました。 このような品質基準のピラミッドチャート...
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ピノノワールの味わいは産地によってどう変わるのか?ブルゴーニュ、ドイツ、カリフォルニア、ニュージーランド、チリ産の特徴の違いを考察

今回はピノノワールのワインの味わいが、産地によってどのように変わるのかを考察してみたいと思います。 (関連記事: メルローワインの味わいは産地によってどう変わるのか?チリ、アメリカ、フランス産の違いを考察 ) 取り上げる産地は次の通りです: ① ブルゴーニュ(フランス) ② ドイツ ③ カリフォルニア(アメリカ) ④ ニュージーランド ⑤ チリ ブルゴーニュ(フランス) ブルゴーニュは、世界の醸造家がお手本とするようなピノノワールの代表的な産地です。 今回取り上げたピノノワールの産地の中では比較的涼しい場所にあります。果実の成熟は全ての畑で毎年、約束されているわけではありません。 そのため、ボディは、広域AOCのワイン(Bourgogne AOCなど)でミディアム程度と言われています。涼しい地域であるために、酸味は高めで、アルコールは中程度(11.0~13.9%)です。タンニンについては、ピノノワールは果皮が薄い品種であるために、少なめ~中程度くらいです。 香りについては、赤系果実の香りを中心に、樽熟成のオークの香りが感じられるのが特徴です。新樽が一部利用されていることが多いですが、果実の成熟度に合わせて、バランスの取れた繊細な樽香が付けられていることが特徴です。 ブルゴーニュのワインは、広域AOCのものから、グランクリュまで品質の幅が広いため、その特徴も大きく変わりますが、おおよそ次のような特徴をもっているのではないかと考察します。 【外観】 ・中程度のルビー色 【香り】 ・中程度~強い香りの強さ ・フレッシュな赤系果実の香り(イチゴ、ラズベリー、赤サクランボ) ・樽香(クローブなど)  ※果実の凝縮度が高いものほど、強い樽香を帯びている ・土、猟鳥類、キノコ  ※数年の瓶内熟成を経たワインのみ  【風味】 ・辛口 ・高い酸味 ・少ない~中程度のタンニン  ※ただし長期の樽熟成を経た高品質なワインはもう少し高め ・中程度のアルコール度 ・中程度のボディ  ※品質の高いワインはより厚いボディを持つ 【品質・価格】 ・良いワイン~非常に良いワイン、素晴らしいワイン ・中程度~高価格帯が多い これらを踏まえると、ブルゴーニュの ピノノワールの特徴は、ミディアム程度のボディとアルコール、高い酸味、繊細な樽の香り になるのではないかと思います。個人的には、ミディアム...

【考察】なぜ、ピノノワールの栽培には石灰岩土壌が適しているのか?

 ワインに関する書籍を読んでいると、時々、「ピノノワールの栽培には石灰岩土壌が向いている」という文言を目にすることがあります。 そのために、知らない間に「ピノノワールと言えば、石灰岩土壌」というイメージが勝手に頭の中に作り上げられてしまっていました。 しかし、改めて考えてみると、なぜ「ピノノワールに石灰岩土壌」が向いているのかを深く考えたことはありませんでした。 そこで今回は、「なぜ、ピノノワールに石灰岩土壌が向いているのか」を考察してみたいと思います。 石灰岩土壌は多くのブドウに向いている まず、いくつかのワイン書籍やウェブサイトを調べてみてわかったことは、 石灰岩土壌はワイン用のブドウ栽培一般に向いていると考えられている ようであるということです。 特に、ピノノワールだけが石灰岩土壌の恩恵を受けるわけではないようです。 では、なぜ、ピノノワールと言えば「石灰岩土壌」があがるのでしょうか? その大きな理由の1つ は、ピノノワールのメッカであるブルゴーニュ、特に、コート・ド・ニュイの土壌にあるのだと思います。 ブルゴーニュの土壌は、石灰岩と粘土の混合です。その中でも、世界最高峰のピノノワールワインを生み出すと言われているコード・ド・ニュイの土壌では、石灰岩が大きな比率を占めています。 つまり、 世界最高峰のピノノワールが生まれる土壌が石灰岩土壌であるために、「ピノノワールには石灰岩土壌が向いている」と言われている のだと思います。 そして、 もう1つの理由 としては、ピノノワールがワイン用ブドウ品種の中でも栽培が難しい品種の1つであるということがあげられると思います。 ピノノワールは、よく気難しい品種と形容されることがあるくらい、栽培が難しいことで有名であり、良い果実を実らせるためには最高の栽培環境が求められます。 そのため、 ブドウ栽培にとって非常に適した土壌の1つである石灰岩土壌が適した栽培環境としてあげられている のだと思います。 石灰岩土壌は、なぜ、ブドウ栽培に適しているのか? では、今度は、なぜ石灰岩土壌がブドウ栽培一般に適しているのかについて、考察をしてみたいと思います。 私が調べてみた範囲では、石灰岩土壌の次のような特徴が理由としてあるようです: ① 保水力と水はけの良さ ② ミネラルや栄養素の取り込みやすさ ③ 耐病性 諸説あるようですが、石...

これができないと、テイスティング・スキルが上がらないと思うこと

 個人的に、これができないとテイスティング・スキルがいつまでたっても上がらないと思うことがあります。 それは、 ワインの品質を正しく評価できる ということです。 テイスティング・スキルという言葉が用いられる場合、それはワインに使われているブドウ品種や、ワインが造られた産地を言い当てられることを指すことが多いと思います。 しかし、ワインの品質を正しく評価できることも重要なテイスティング・スキルの1つであり、品種や産地当てよりも真っ先に理解すべきことなのではないかと思います。 さらに言えば、ワインの品質を正確に評価できなければ、いくらテイスティングのトレーニングを重ねても、全く意味をなさないこともあるとあると思います。 例えば、次のような2種類のワインがあります。 右のワインは5000円以上の価格のワイン、左のワインは1000円前後で購入できるワインです。価格帯は異なりますが、両者ともに、チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインです。 まず、 右の高価格帯のワイン を味わってみると、暖かい地域で育ったカベルネ・ソーヴィニヨンのしっかりと凝縮された果実の香り・風味が感じられます。そして、その裏に、長期の樽熟成に由来するヴァニラや丁子の香りも感じられます。味わいとしては、しっかりとした果実味と、これもカベルネ・ソーヴィニヨンの特徴である高いレベルの酸味やタンニンの調和が感じられます。チリの気候と強い日差しによって十分に成熟したタンニンの舌触りも感じられます。 このワインを味わうことで、次のようなテイスティングのトレーニングをすることができると思います。 ・暖かい産地であるチリのカベルネソーヴィニヨンワインの香りの特徴を捉える ・長期の樽熟成に由来する樽香の特徴を捉える ・暖かい産地であるチリのカベルネソーヴィニヨンワインの味わいの特徴(酸味、成熟したタンニンなど)を捉える 次に、 左の低価格帯のワイン を味わってみます。 先ほどのワインに比べると、果実の香りはかなり弱く感じられます。かなり感覚を研ぎ澄ませても、かすかな果実の香りしか感じ取ることができず、どのような果実であるかもかなりぼんやりしています。 果実の香りが弱いために、果実とは異なるアルコールを感じさせるような無機質な香りが感じられますが、それが何の香りかはよくわかりません。 味わいとしては、先ほ...

メルローワインの味わいは産地によってどう変わるのか?チリ、アメリカ、フランス産の違いを考察

メルローは世界中のワイン造りに使われている黒ブドウ品種です。 今回は、メルローワインの味わいが産地によってどのような違いかあるのかを考察してみたいと思います。 産地としては次の3つを取り上げたいと思います: ① チリ、セントラルヴァレー ② アメリカ、カリフォルニア ③ フランス、ボルドー、ポムロール まず、メルローのワインスタイルについてですが、大きく2種類のスタイルがあると言われています。それは 「インターナショナル・スタイル」 と 「ボルドー・スタイル」 です。 インターナショナル・スタイル のメルローワインは、暑い気候のブドウや、温和な気候の過熟ブドウから造られており、 黒系果実の香り を持ち、 高いアルコール度 で フルボディ なのが特徴です。その分、 酸味は中程度~やや低め で、 タンニンも中程度 です。特に熟度が高いものは、 フルーツケーキ や チョコレートの香り を持つと言われています。 一方で、 ボルドー・スタイル は、冷涼~温和な気候で栽培されたブドウから製造されており、先ほどのスタイルに比べるとよりエレガントなスタイルです。 赤系果実やハーブの香り を持ち、 アルコール度が中程度 の ミディアムボディ のワインです。その分、 酸味やタンニンはやや高め です。良いワインはオーク樽による熟成が行われ、 スパイスや樽の風味 を帯びています。 今回取り上げる産地の中では、チリとカリフォルニアのワインの多くがインターナショナル・スタイルで、ポムロールのワインの多くがボルドー・スタイルになるのではないかと思います。 ① チリ、セントラルヴァレーのメルローワイン チリのセントラルヴァレーでは多くの低価格帯のメルローワインが造られていることが有名です。また、一部、品質の高いメルローワインも造られています。 チリのセントラルヴァレーの気候は、温暖で晴れが多く、乾燥しておりブドウ栽培に非常に適しています。また、海洋からの冷涼効果が比較的得られにくいために、日中の温度が非常に高くなり、日差しの強さと相まって、果実の成熟度は非常に高くなります。 このような環境で造られるセントラルヴァレーのメルローワインは次のような特徴を持つと考えられます: 【外観】 ・濃い紫~ルビー色 【香り】 ・黒系果実の香り(ブラックベリー、ブラックプラム、ブラックチェリーなど) ・果実の熟度の...

ボルドーの右岸、左岸のワインスタイルとは?その違いを考察

 ボルドーワインについて語られるときに、 「右岸(のワイン)」 と 「左岸(のワイン)」 という言葉が用いられます。 「右岸」とは、ジロンド川とその支流のドルドーニュ川の東岸のエリア 、そして、 「左岸」とは、ジロンド川とその支流のガロンヌ川の西岸のエリア を指します。 ワインの世界ではボルドー以外でも「右岸」、「左岸」という言葉が用いられますが、基本的には川の上流を視点に川の右側、左側が決められています。 ちなみに、どちらにも当てはまらないドルドーニュ川とガロンヌ川にはさまれた地域は、「アントル・ドゥー・メール地区」(2つの海の間という意味)と呼ばれています。 「右岸」と「左岸」で異なるワインのスタイル 一般にボルドーの 「右岸」と「左岸」では、そのワインのスタイルが異なる と言われています。ボルドーのワイン生産量のほとんどは赤ワインであるために、右岸のワイン、左岸のワインという言葉が使われるときの多くは赤ワインのことを指しています。 スタイルの違いの主な理由は、それぞれのワインで使われる ブドウ品種の違い にあると言われています。 右岸のワイン で最も多く利用されるブドウ品種は 「メルロ」 であり、それに 「カベルネ・フラン」 などの品種がブレンドされます。 左岸のワイン で比較的多く利用されるブドウ品種は 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 であり、多くの場合それに 「メルロ」 がブレンドされています。 同じボルドーという名の地域にありながら、右岸、左岸で栽培されているブドウ品種が異なる理由は、主に土壌の違いと言われています。 「右岸」の土壌は主に粘土質土壌 です。粘土質土壌は水分を多く含むため、日中の温度が上がりにくいことが特徴です。そのため、果実の成熟に一定の暖かさが必要なカベルネ・ソーヴィニヨンは右岸の粘土質土壌での栽培が難しく、比較的、涼しい環境でも栽培のしやすい メルロ や カベルネ・フラン が多く栽培されています。 一方で、 「左岸」の土壌は砂利や小石を多く含む土壌 であり、排水性が良く、日中の気温が上がりやすいことが特徴です。そのため「左岸」の地域では、栽培に一定の暖かさが必要な カベルネ・ソーヴィニヨン が比較的多く栽培されていると言われています。 「右岸」と「左岸」ではこのようなワインに使われるブドウ品種の違いがあるわけですが、 この違いが...

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使...

素朴なワイン(Rustic Wine)とは?そのワインスタイルを考察

 ワインに関する説明を読んでいると、時々、「素朴な」や「ラスティックな」、「Rustic」と表現されるワインが登場します。 何となく意味が分かるような気がしますが、実はあまりわかっていないような気もするので、このようなタイプのワインのスタイルについて考察をしてみたいと思います。 「素朴なワイン」 の説明でよくあげられている言葉としては次のようなものがあります: ・無骨な ・気取らない ・骨太な ・粗削りな ・ブドウ品種に忠実な ・原料を活かした ・テロワールを表現した また、 「素朴なワイン」の反対のスタイル としては次のようなものがあげられています: ・上品な ・洗練された ・エレガントな ・シルキーな ・樽熟成などの醸造テクニックを前面に押し出した これらの言葉から考察をすると、 「素朴なワイン」とは、醸造技術を前面に押し出さず、ブドウの持つ本来の特徴を表現した、場合により粗さの残るワイン であるようです。 ちなみに、「素朴なワイン」とは文脈によりさまざまなタイプのワインを表すこともあるようですが、 一般的には赤ワインを指すことが多い ようです。その理由は、素朴な(Rustic)という言葉が、 タンニンの性質 を表す言葉として使われることが多いからのようです。 よく「素朴なワイン」として表されるワインは次のような特徴をもっているようです: ・酸味が高め ・しっかりとした舌触りのある粗く乾燥したタンニンを持つ ・野生味のある/乾燥した果実やハーブの風味を持つ ・土のニュアンスを持つ ブドウ品種としては、力強い品種である カベルネソーヴィニヨン や プティ・シラー を使ったワインに対する形容として用いられることがよくあるようです。 <了>

オレンジワインとは?かんたんに、他のワインとの製造工程の違いを比較・考察

 ワインと言えば、白ワイン、赤ワイン、ロゼワインの3つがメジャーなカテゴリーです。 しかし、近年、新たなカテゴリーとして「 オレンジワイン 」が人気を博しています。 オレンジワインとは、恐らくその見た目が命名由来であり、通常、オレンジ色や琥珀色をしています。 では、なぜそのような見た目の特徴が出るのかを、製造工程に焦点を当てて考察してみたいと思います。 オレンジワインの製造工程について まず、オレンジワインは 白ブドウ からできています。 しかし、そのスタイルは 白ワイン とは大きく異なります。そのスタイルの違いは製造工程に由来しており、 オレンジワインは白ブドウを使って赤ワインの製造工程を経て造られている とよく言われます。 白ワインと赤ワインの製造工程の違いを簡単にまとめると次のような図になります。 白ワインと赤ワインの製造工程の大きな違いは、果皮の分離のタイミングであり、白ワインは アルコール発酵前 に果皮が果汁から分離されるのに対して、赤ワインでは果皮は アルコール発酵後 に分離されます。 言い換えると、白ワインは果汁のみでアルコール発酵が行われるのに対して、赤ワインでは果汁が果皮(その他、種子や果肉も含む)を含んだ状態でアルコール発酵がなされます。 これを踏まえて、オレンジワインの製造工程を当てはめてみると、次の図のようにあらわされます。 同じ白ブドウから造られる白ワインと比較をしてみると、果皮の分離のタイミングが アルコール発酵後 であることがわかります。 オレンジワインでは、果汁と果皮が接触している時間が長いために、果皮から溶け出す成分の影響によって、オレンジ色のような色になると言われています。 ちなみに、オレンジワインは別名、 スキンコンタクトワイン とも呼ばれています。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によると、オレンジワイン/アンバーワインは「マセラシオンのある白ワイン」と説明されており、その最低期間は1か月と言われています。 先ほど説明をしたオレンジワインの製造工程では、簡素化のために果皮分離のタイミングをアルコール発酵後としていましたが、OIVの説明によると長期のマセレーションを経ていれば、必ずしも果皮とともにアルコール発酵を行っている必要はなさそうです。 下図の上の流れが、それを表したものです。下の流れは、先ほどの説明のようにアルコー...

ボルドー・シュペリウール(Bordeaux Supérieur)AOCとは?ボルドーAOCとの違いを考察する

ボルドー産のワインを購入してみると、よく見かけるのは「ボルドーAOC(Bordeaux AOC)」のワインです。 (関連記事: 個人的なAOCの簡単ざっくり理解 ~AOCってこういうこと? ) そしてボルドーAOCと同様に、「Bordeaux Supérieur」と書かれたワインもよく目にします。これは、原産地呼称が「ボルドー・シュペリウール(Bordeaux Supérieur)AOC」のワインです。(※Supérieurは、シューペリュールとも表記されます) 例えば、成城石井で長年人気の赤ワインである「CH ラ ヴェリエール ルージュ」は「Bordeaux Supérieur AOC」のワインです。 →  https://amzn.to/40Uz4aU (こちらのAmazonサイトで購入可能です) ふと思い立って、ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールAOCの2つのワインにどんな違いがあるのかを調べて考察してみました。 ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールの共通点 まずは、この2つのワインの共通点から調べてみました。主な共通点は次の通りです: ・ボルドーの全ワイン生産地域で製造可能なワインである(ジェネリックAOCワイン) ・品質レベルはそこそこで、ボルドーの特定地域の名称がラベルに書かれたワインほど品質が高くない ・価格は低価格~中価格程度である ・両者ともに赤と白のスティルワインがあり、赤はメルロ、白はソーヴィニヨン・ブラン主体のワインである ・ワインのスタイルは主にミディアムボディ程度である ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールAOCのワインは、ボルドーで最も生産量の多いワインであり、ボルドーで生産されるワインの約半分を占めるそうです。 ボルドーAOCとボルドー・シュペリウール の相違点 では、今度はこれらのワインの違いをまとめてみようと思います。それぞれの違いは次の通りです: ・ボルドー・シュペリウールAOCの 赤ワイン は、その名の通りボルドーAOCよりも若干品質が高い(supérieurとは、上位の、上質のという意味です) ・ボルドー・シュペリウールAOCの 白ワイン は、基本的に甘口で、ボルドーAOCとはスタイルが異なる(ただし、赤ワインに比べると製造量はずっと少ない) ・ボルドー・シュペリウールAOCの ロゼワイン はない ・...

ワインの味とは?ワインの味を感じ取るテイスティング方法を考察

ワインを評価する場合、多くの場合「外観」、「香り」、「味覚」の3つの要素が用いられます。 (関連記事: SAT式ワインの英語テイスティングコメント(英語表現) ) どれも重要な要素ですが、今回はワインのおいしさや飲みやすさに直結をする「味覚」に焦点を当てて、味覚に関するさまざまな要素をどのように感じ取ることができるのかを考察してみたいと思います。 まず、ワインの味覚を構成する要素としては次のようなものがあります: ・甘味 ・酸味 ・タンニン(主に赤ワイン) ・アルコール ・ボディ ・風味のタイプや強さ 甘味 甘味はワインに含まれている糖分によって感じ取られる要素です。糖分が含まれていない/非常に少ないワインは「辛口」で、糖分を豊富に含んで甘味が顕著な特徴となっているワインが「甘口」です。 この定義は当たり前のように感じられますが、実は非常に重要です。 なぜなら「甘味」を評価する場合、「糖分由来の甘い味わい」と「甘い香り」をしっかりと区別しなければならないからです。 例えば、綿あめのような甘い香りを持つマスカット・ベーリーAの辛口ワインの試飲をしてみるとその香りの影響によって一瞬、甘味のあるワインのように感じられてしまうことがよくあります。しかし、よくよく味わってみると、口の中では糖分由来の甘味を感じることはできません。 この「味覚」と「香り」の区別は、テイスティングの練習を重ねることが徐々に精度を上げることができますが、もしかしたら最初のうちは混同してしまうかもしれません。 多くの人にとって、甘味は舌先で最も強く感知されると言われているので、テイスティングの際にはこの部分に注意をしてみるのが良いかもしれません。 補足となりますが、ワインが感知のできる少量の糖分を含んでいる場合、ワインは「オフドライ」と言われます。「BRUT」と書かれているスパークリングワインの多くは泡の影響もあってあまり糖分を感じることができないかもしれませんが、実は「オフドライ」であることがほとんどです。 (関連記事: off-dry(オフドライ)ワインとは? | 英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) 酸味 ワインに含まれる主な酸は、酒石酸、リンゴ酸、乳酸です。そのため、酸味はこれらを多く含む食品であるブドウやレモン、その他の果物、ヨーグルトなどを口に含んだ時に感じられる「酸っぱさ」として感じられま...

ボルドーのブドウ栽培の特徴を考察

 ボルドーのワイン用ブドウの栽培の特徴をまとめると次の4点になるのではないかと思います: ① 高い栽培密度 ② キャノピーマネジメント ③ 収穫量のコントロール ④ 手作業による収穫 ① 高い栽培密度 ボルドーのブドウ畑では、しばしばブドウ木が高い密度で植えられます。 これは特に、高い品質のワインを造る生産者の畑で顕著な特徴です。 このような高密度での栽培がおこなわれる理由の1つは、ボルドーのブドウ畑の土地の価格の高さです。限られた財源で得られた、限られた広さの土地で、いかに効率的にブドウ栽培を行うかということが、ボルドーでのブドウ栽培の重要なテーマの1つになるのではないかと思います。 このような高密度での栽培ができる理由にはボルドーの気候の影響も考えられます。高密度でのブドウ木の栽培には水不足のリスクを伴いますが、比較的雨の多い海洋性のボルドーの気候では、このようなリスクを抱えることはあまりないのではないかと思います。 ボルドーの温和で湿気のある気候では、ブドウの実に十分に栄養をいきわたらせるためにブドウ木の樹勢を抑制することが重要となりますが、高密度で栽培されたブドウ木では自然に樹勢が抑制されます。この点も、高密度でのブドウ栽培がボルドーの気候に合っている1つの理由なのではないかと思います。 一方で、高密度での栽培には、棚付のためのより多くの支柱や針金を用意したり、専用のトラクターを準備する必要があったり、仕立や耕作、スプレーなどにより多くの手間がかかるなど余分なコストがかかることになります。しかし、これらのコストを差し引いても、ボルドーでは高密度で栽培をするメリットの方が大きいのだと思います。 ② キャノピーマネジメント 先ほども触れましたが、ボルドーの気候は温和な湿気のある気候のために、質の高いブドウを栽培するためには樹勢をコントロールすることが重要です。 (参考記事: ブドウの収穫量と果実の品質の関係を考察 ) (参考記事: canopy management(=キャノピー・マネジメント)の意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) キャノピーマネジメントには、枝葉の伐採などが含まれ、次のような効果があると言われています: ・ブドウ木の通気性の改善 ・果実の腐敗の防止 ・果実への日当たりの改善 ・収量の調整 ・果実への栄養の配分 ボルドーの雨や湿気の...

なぜ高地では日較差(昼夜の気温差)が大きいのかを考察

日較差(昼夜の気温差)はブドウ栽培に大きな影響を与える要素です。 日較差の大きい地域でブドウ栽培を行う場合、次のようなメリットがあると言われています: ・ブドウ中の酸味が保持される ・ブドウの成熟速度が緩やかになり、香りやタンニンが十分に成熟する (→ 補足記事: ブドウ栽培で涼しさはなぜ必要? ~温暖地域で冷涼効果が好まれる理由を考察 ) そして一般的に、高地では日較差が大きくなると言われています。 たとえは、アルザスのブドウ畑は日較差が大きいと言われていますが、多くの畑は山の東側の比較的標高の高い斜面に位置しています。 それでは、なぜ高地では日較差が大きくなるのかを考察してみたいと思います。 まず、日較差に大きな影響を与えるものは、 大気中に含まれる水分 であると言われています。 地面は日中、太陽光から得た熱を吸収し、夜間にはその熱を放出します。日中に得られた熱は大気中の空気や主に水蒸気によって保持されるために、一部の熱は夜間にも保持されます。 標高の高い高地では、空気が薄く、水分も保持しにくいために、日中の熱が急速に逃げるために、夜間の温度は低くなりやすいと言われています。 これをイメージ化すると、上のようなチャートで表すことができるのではないかと思います。 この空気中の熱を保持する力(主に水蒸気量)の違いが、標高の違いによる夜間の熱の放出量に違いを生み、日較差(寒暖差)を生み出しているようです。 そしてこれ以外にも、「放射冷却の影響」や「海からの距離」、「地中の水分量」なども、日較差に影響を与えていることが考えられます。 放射冷却は、雲があることによって妨げられますが、標高の高い地域の方が、平野部に比べて雲がかかることが少ないと考えられます。 海などの大きな水塊は、気温の変化を緩和する役割を果たしますが、一般的に標高の高い地域は、内陸の海から離れた地域に位置しています。 標高の高い特に斜面では、水はけのよい土壌が多いために、平野部に比べて地中の水分が少なくなります。乾いた土壌は水分の多い土壌に比べて、夜間の温度変化は大きくなります。 このように、空気中の水蒸気量の影響を中心に、標高の高い高地では、寒暖差が大きくなるのではないかと考察されます。 <了>

ピノグリ/ピノグリージョは産地によってなぜスタイルが異なるのか?を考察

 今回は、ピノグリ/ピノグリージョの産地によるスタイルの違いを考察したいと思います。 ピノグリとピノグリージョは名前は異なりますが同一品種であり、フランスでは「ピノグリ(Pinot Gris)」、イタリアでは「ピノグリージョ(Pinot Grigio)」と呼ばれています。 この品種は、萌芽が早く、成熟が早いことが特徴です。また、収穫を遅くすることで果実中の糖度を高めることができます。しかし、糖度の高まりが早い一方で、酸味を失うのも早いと言われています。 ピノグリ/ピノグリージョの主な特徴をまとめると次の通りです: ・萌芽が早い ・早熟 ・中程度の終了 ・高い糖度を持つことができる ・糖度の集積が早く、酸味を失うのも早い では、ここから各地で造られるワインのスタイルの確認をしていきたいと思います。 対象とする産地としては、アルザス(フランス)、トレンティーノ=アルト・アディジェ(イタリア)、ニュージーランドの3つをあげたいと思います。 アルザス アルザスのピノグリは、熟度の高い果実から造られるフルボディのスタイルが有名です。 そのスタイルの特徴をまとめると、およそ次のようになるのではないかと思います: ◆アルザスのピノグリワインのスタイルの特徴 【見た目】 ・濃い黄金色 【香り】 ・中程度の香りの強さ ・モモ、リンゴ ・熟成させると → トロピカルフルーツ(バナナ、メロン)、ショウガ、燻製、ハチミツ 【味わい】 ・基本的には辛口~オフドライ(中甘口や甘口のものもある) ・酸味:中程度 ・ボディ:フルボディ ・その他:オイリーな口当たり 【品質】 ・品質:良い~素晴らしい ・価格:中程度~高額 では、なぜアルザスではこのようなフルボディのワインができ上るのかを考察したいと思います。 ◆アルザスの栽培環境による影響 アルザスでフルボディのワインが造られる大きな理由の1つは、高緯度のわりに比較的暖かく、日照時間が長く、乾燥した気候にあると考えられます。 多くのブドウ畑は、ヴォージュ山脈の東側の斜面や平野に位置しており、西側からの雨風から守られることによって、このような好ましい気候に恵まれています。 ブドウ栽培地域としては比較的北部に位置するために日照時間が長く、ブドウの香り成分が十分に成熟することも特徴の1つです。収穫期は1年の中でも比較的乾燥した時期であり、これも...

マロラクティック発酵のバリエーションに関する考察

 マロラクティック発酵は、通常、アルコール発酵の後に行われる工程で、この工程によってワイン中のリンゴ酸が乳酸に変えられます。 乳酸はリンゴ酸に比べて酸味が弱く乳製品を連想させる独特の香りを持つために、マロラクティック発酵を経たワインは、まろやかでバターのような香りを持った味わいになると言われています。 マロラクティック発酵はほとんどの赤ワインと、この効果が有益と判断された一部の白ワインで行われます。 マロラクティック発酵は、もともとは春になるにつれてセラーの温度が上がるにつれて自然発生的に起こっていた反応のようですが、現在では培養した乳酸菌を加えることで最適環境を整えてこの工程を開始をすることができるようです。そして、そのマロラクティック発酵を開始させる環境の違いが、マロラクティック発酵のバリエーションにつながるわけです。 それではいくつかのバリエーションについて、その考察をしてみたいと思います。 小型の樽を使ったマロラクティック発酵 マロラクティック発酵は通常、タンクで行われることが多いようですが、あえて小型のオーク樽の中で行われることもあるようです。 この場合のメリットは、澱を同時に撹拌できることと、風味がより統合されると言われています。澱の撹拌によって、マロラクティック発酵で生成された乳酸の香りと、澱由来の香りの両方がワインによく溶け込んでいくのではないかと思います。 反対にデメリットは、ワインを少量ずつ個別の樽に分けるために、温度管理などの手間が増えることです。 アルコール発酵と同時に行うマロラクティック発酵 もう1つのバリエーションは、アルコール発酵と同時にマロラクティック発酵を行うというものです。 この方法でのメリットは、ワインの味わいがよりフルーティーになることと、製造時間短縮によるコスト減だと言われています。 味わいがよりフルーティーになる理由を考察すると、多分、自然発生的な澱の攪拌が行われないことによって、ワイン本来のフルーティーな味わいが損なわれないことが原因なのではないかと思います。 また、製造時間の短縮がなぜコスト減につながるかというと、マロラクティック発酵を別に行う場合と比べて管理の手間がかからないことと、タンクの回転率が上がることがその理由なのではないかと思います。 以上、マロラクティック発酵の2つのバリエーションとその効果につい...

発酵温度によるワインスタイルの違いのまとめ

マスト(ブドウ果汁や果肉、果皮などの混合物)の発酵温度によって出来上がるワインにどのような特徴の違いが出るのかをまとめてみました。 まず発酵温度についてですが、白ワインと赤ワインでは、低温、高温と言われる発酵温度は異なります。 一般に、白ワインの方が赤ワインに比べて低い温度で発酵されます。 低温での発酵の特徴 低温での発酵の特徴は、フレッシュでフルーティーな香りが生成・保持されやすいこと、また、ブドウからの果汁以外の成分の抽出度合いが低いことです。 それにより、出来上がるワインはフレッシュで果実味があり口当たりの良いものになると言われています。 しかし一方で、長期熟成に必要な果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンや酸味が十分に抽出されないために、早々に出荷されて消費されることを目的とした早飲みタイプのワインになりやすいと言われています。 ちなみに白ワインの発酵温度が赤ワインよりも低い理由は、白ワインにとってフレッシュでフルーティーな香りはより重要で、赤ワインのようにタンニンの抽出を必要としていないことにあるようです。 高温での発酵の特徴 高温での発酵の特徴は、ブドウの果皮などからの抽出度合いが高まるために、果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンなどの成分が果汁内に多く抽出されることです。 一方で、揮発性のエステルなどの成分が失われてしまうことで、フレッシュでフルーティな香りが失われてしまうとも言われています。 このような発酵の特徴から、高温で発酵された場合には、より長期熟成に向いたワインが出来上がると言われています。 <了>

【考察】なぜ、マセラシオン・カルボニックではタンニンがあまり抽出されないのか?

 赤ワインの製造には、 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」 が用いられることがあります。 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」を用いると次のような特徴を持ったワインが製造されると言われています: ① 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)が起こるためにキルシュやバナナ、風船ガム、シナモンのような独特な香りが加えられる ② 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)によりリンゴ酸が消費されて酸味が抑えられる ③ 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)によりグリセロールが生成されてワインに質感が加えられる ④ 茎由来のスパイスやハーブの香りがワインに加えられる ⑤ 茎由来のタンニンがワインに加えられる ちなみに、 『マセラシオン・カルボニック』 も「房ごとのブドウを用いた発酵手法」の1つです。マセラシオン・カルボニックで製造されたワインは次のような特徴を持っていると言われています: Ⓐ 品種由来の香りに加えて、キルシュやバナナ、風船ガム、シナモンのような独特な香りを持つ Ⓑ フルーティーでタンニンが少なく、早飲みスタイルのワインを造る ここで1つ疑問が発生します。上にあげた特徴の⑤とⒷは明らかに矛盾しているような気がします。 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」を用いると茎の存在のためにより多くのタンニンが抽出されるはずなのに、マセラシオン・カルボニックではタンニンが少ないワインができると言われています。 一見、矛盾に思われるこの特徴の違いがなぜ表れるのかを、一般的な「房ごとのブドウを用いた発酵手法」と「マセラシオン・カルボニック」の工程を比べることで調べてみました。 まず、 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」 としてよく用いられる、破砕したブドウマストに房ごとのブドウを加えて発酵させる手法の工程をしたにまとめてみました。 この工程では、果皮や種子に加えて茎もマストに加えられてマセレーション~アルコール発酵が行われています。 タンニンはアルコールに溶けやすい性質を持っているために、発酵によってアルコールが生成されることで、果皮や種子、そして茎から多くのタンニンがマスト内に溶け出します。 これが「房ごとのブドウを用いた発酵手法」において、茎由来のタンニンが抽出される理由です。 では次に、 「マセラシオン・カルボニック」 における流れを見てみたいと思います。下にマセラシオン・カル...

河川から覚えるアメリカ・カナダ東岸のワイン主要産地

アメリカやカナダ東岸の主要ワイン産地の多くは、大きな川の流域に位置しています。 川の流れを調べてみれば、ワイン産地の位置関係の把握に役立つのではないかと、コロンビア川を中心に、それらを地図上にまとめてみました。 対象とした地域は北から、ブリティッシュ・コロンビア州(カナダ)、ワシントン州(アメリカ)、オレゴン(アメリカ)です。 ここで注意すべきはワシントン州とオレゴン州の位置関係です。個人的には時々、上下関係がわからなくなってしまいます。しかし、「俺の上に鷲がいる」と覚えると、この上下関係を間違えることはありません。(参考記事: アメリカ西海岸ワイン産地(州)の位置関係に関する私的暗記法(ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州) ) コロンビア・ヴァレー(ワシントン州) まず、これらの地域で最も重要だと思われるのが、すべての州を流れている「コロンビア川」です。コロンビア川は、カナダを起源として南下をしてワシントン州に入り、ワシントン州とオレゴン州の州境を通って、太平洋まで流れています。 このコロンビア川が造る最大のワイン産地は、「コロンビア・ヴァレー」であり、これはコロンビア川の主な流域であるワシントン州に広がっています。そして、コロンビア・ヴァレーの一部はオレゴン州北部にも広がっています。 コロンビア・ヴァレーは、コロンビア・ゴージとワラワラ・ヴァレーとともに、ワシントン州とオレゴン州にまたがるワイン産地(AVA)としても有名です。 ウィラメット・ヴァレー(オレゴン州) コロンビア川はワシントン州とオレゴン川の州境となって太平洋まで流れ込みますが、その直前でコロンビア川と合流するのは「ウィラメット川」です。 ウィラメット川が作り出すワイン産地は、「ウィラメット・ヴァレー」と呼ばれ、これはオレゴン州最大のワイン産地です。ウィラメット・ヴァレーには、オレゴン州全体のの70%近いブドウ畑があると言われています。 サザン・オレゴン(オレゴン州) ウィラメット・ヴァレーに続く、オレゴン州第2のワイン産地は「サザン・オレゴン」です。ここには、「アンプクア川」と「ローグ川」が流れており、それぞれの流域には「アンプクア・ヴァレー」と「ローグ・ヴァレー」という名のワイン産地が広がっています。 アンプクア・ヴァレーとローグ・ヴァレーは、サザン・オレゴンに包含されるワイン産地(AV...