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ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

素朴なワイン(Rustic Wine)とは?そのワインスタイルを考察

 ワインに関する説明を読んでいると、時々、「素朴な」や「ラスティックな」、「Rustic」と表現されるワインが登場します。 何となく意味が分かるような気がしますが、実はあまりわかっていないような気もするので、このようなタイプのワインのスタイルについて考察をしてみたいと思います。 「素朴なワイン」 の説明でよくあげられている言葉としては次のようなものがあります: ・無骨な ・気取らない ・骨太な ・粗削りな ・ブドウ品種に忠実な ・原料を活かした ・テロワールを表現した また、 「素朴なワイン」の反対のスタイル としては次のようなものがあげられています: ・上品な ・洗練された ・エレガントな ・シルキーな ・樽熟成などの醸造テクニックを前面に押し出した これらの言葉から考察をすると、 「素朴なワイン」とは、醸造技術を前面に押し出さず、ブドウの持つ本来の特徴を表現した、場合により粗さの残るワイン であるようです。 ちなみに、「素朴なワイン」とは文脈によりさまざまなタイプのワインを表すこともあるようですが、 一般的には赤ワインを指すことが多い ようです。その理由は、素朴な(Rustic)という言葉が、 タンニンの性質 を表す言葉として使われることが多いからのようです。 よく「素朴なワイン」として表されるワインは次のような特徴をもっているようです: ・酸味が高め ・しっかりとした舌触りのある粗く乾燥したタンニンを持つ ・野生味のある/乾燥した果実やハーブの風味を持つ ・土のニュアンスを持つ ブドウ品種としては、力強い品種である カベルネソーヴィニヨン や プティ・シラー を使ったワインに対する形容として用いられることがよくあるようです。 <了>

オレンジワインとは?かんたんに、他のワインとの製造工程の違いを比較・考察

 ワインと言えば、白ワイン、赤ワイン、ロゼワインの3つがメジャーなカテゴリーです。 しかし、近年、新たなカテゴリーとして「 オレンジワイン 」が人気を博しています。 オレンジワインとは、恐らくその見た目が命名由来であり、通常、オレンジ色や琥珀色をしています。 では、なぜそのような見た目の特徴が出るのかを、製造工程に焦点を当てて考察してみたいと思います。 オレンジワインの製造工程について まず、オレンジワインは 白ブドウ からできています。 しかし、そのスタイルは 白ワイン とは大きく異なります。そのスタイルの違いは製造工程に由来しており、 オレンジワインは白ブドウを使って赤ワインの製造工程を経て造られている とよく言われます。 白ワインと赤ワインの製造工程の違いを簡単にまとめると次のような図になります。 白ワインと赤ワインの製造工程の大きな違いは、果皮の分離のタイミングであり、白ワインは アルコール発酵前 に果皮が果汁から分離されるのに対して、赤ワインでは果皮は アルコール発酵後 に分離されます。 言い換えると、白ワインは果汁のみでアルコール発酵が行われるのに対して、赤ワインでは果汁が果皮(その他、種子や果肉も含む)を含んだ状態でアルコール発酵がなされます。 これを踏まえて、オレンジワインの製造工程を当てはめてみると、次の図のようにあらわされます。 同じ白ブドウから造られる白ワインと比較をしてみると、果皮の分離のタイミングが アルコール発酵後 であることがわかります。 オレンジワインでは、果汁と果皮が接触している時間が長いために、果皮から溶け出す成分の影響によって、オレンジ色のような色になると言われています。 ちなみに、オレンジワインは別名、 スキンコンタクトワイン とも呼ばれています。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によると、オレンジワイン/アンバーワインは「マセラシオンのある白ワイン」と説明されており、その最低期間は1か月と言われています。 先ほど説明をしたオレンジワインの製造工程では、簡素化のために果皮分離のタイミングをアルコール発酵後としていましたが、OIVの説明によると長期のマセレーションを経ていれば、必ずしも果皮とともにアルコール発酵を行っている必要はなさそうです。 下図の上の流れが、それを表したものです。下の流れは、先ほどの説明のようにアルコール発酵後

ボルドー・シュペリウール(Bordeaux Supérieur)AOCとは?ボルドーAOCとの違いを考察する

ボルドー産のワインを購入してみると、よく見かけるのは「ボルドーAOC(Bordeaux AOC)」のワインです。 (関連記事: 個人的なAOCの簡単ざっくり理解 ~AOCってこういうこと? ) そしてボルドーAOCと同様に、「Bordeaux Supérieur」と書かれたワインもよく目にします。これは、原産地呼称が「ボルドー・シュペリウール(Bordeaux Supérieur)AOC」のワインです。(※Supérieurは、シューペリュールとも表記されます) 例えば、成城石井で長年人気の赤ワインである「CH ラ ヴェリエール ルージュ」は「Bordeaux Supérieur AOC」のワインです。 →  https://amzn.to/40Uz4aU (こちらのAmazonサイトで購入可能です) ふと思い立って、ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールAOCの2つのワインにどんな違いがあるのかを調べて考察してみました。 ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールの共通点 まずは、この2つのワインの共通点から調べてみました。主な共通点は次の通りです: ・ボルドーの全ワイン生産地域で製造可能なワインである(ジェネリックAOCワイン) ・品質レベルはそこそこで、ボルドーの特定地域の名称がラベルに書かれたワインほど品質が高くない ・価格は低価格~中価格程度である ・両者ともに赤と白のスティルワインがあり、赤はメルロ、白はソーヴィニヨン・ブラン主体のワインである ・ワインのスタイルは主にミディアムボディ程度である ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールAOCのワインは、ボルドーで最も生産量の多いワインであり、ボルドーで生産されるワインの約半分を占めるそうです。 ボルドーAOCとボルドー・シュペリウール の相違点 では、今度はこれらのワインの違いをまとめてみようと思います。それぞれの違いは次の通りです: ・ボルドー・シュペリウールAOCの 赤ワイン は、その名の通りボルドーAOCよりも若干品質が高い(supérieurとは、上位の、上質のという意味です) ・ボルドー・シュペリウールAOCの 白ワイン は、基本的に甘口で、ボルドーAOCとはスタイルが異なる(ただし、赤ワインに比べると製造量はずっと少ない) ・ボルドー・シュペリウールAOCの ロゼワイン はない ・ボルドー

ワインの味とは?ワインの味を感じ取るテイスティング方法を考察

ワインを評価する場合、多くの場合「外観」、「香り」、「味覚」の3つの要素が用いられます。 (関連記事: SAT式ワインの英語テイスティングコメント(英語表現) ) どれも重要な要素ですが、今回はワインのおいしさや飲みやすさに直結をする「味覚」に焦点を当てて、味覚に関するさまざまな要素をどのように感じ取ることができるのかを考察してみたいと思います。 まず、ワインの味覚を構成する要素としては次のようなものがあります: ・甘味 ・酸味 ・タンニン(主に赤ワイン) ・アルコール ・ボディ ・風味のタイプや強さ 甘味 甘味はワインに含まれている糖分によって感じ取られる要素です。糖分が含まれていない/非常に少ないワインは「辛口」で、糖分を豊富に含んで甘味が顕著な特徴となっているワインが「甘口」です。 この定義は当たり前のように感じられますが、実は非常に重要です。 なぜなら「甘味」を評価する場合、「糖分由来の甘い味わい」と「甘い香り」をしっかりと区別しなければならないからです。 例えば、綿あめのような甘い香りを持つマスカット・ベーリーAの辛口ワインの試飲をしてみるとその香りの影響によって一瞬、甘味のあるワインのように感じられてしまうことがよくあります。しかし、よくよく味わってみると、口の中では糖分由来の甘味を感じることはできません。 この「味覚」と「香り」の区別は、テイスティングの練習を重ねることが徐々に精度を上げることができますが、もしかしたら最初のうちは混同してしまうかもしれません。 多くの人にとって、甘味は舌先で最も強く感知されると言われているので、テイスティングの際にはこの部分に注意をしてみるのが良いかもしれません。 補足となりますが、ワインが感知のできる少量の糖分を含んでいる場合、ワインは「オフドライ」と言われます。「BRUT」と書かれているスパークリングワインの多くは泡の影響もあってあまり糖分を感じることができないかもしれませんが、実は「オフドライ」であることがほとんどです。 (関連記事: off-dry(オフドライ)ワインとは? | 英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) 酸味 ワインに含まれる主な酸は、酒石酸、リンゴ酸、乳酸です。そのため、酸味はこれらを多く含む食品であるブドウやレモン、その他の果物、ヨーグルトなどを口に含んだ時に感じられる「酸っぱさ」として感じられま

ボルドーのブドウ栽培の特徴を考察

 ボルドーのワイン用ブドウの栽培の特徴をまとめると次の4点になるのではないかと思います: ① 高い栽培密度 ② キャノピーマネジメント ③ 収穫量のコントロール ④ 手作業による収穫 ① 高い栽培密度 ボルドーのブドウ畑では、しばしばブドウ木が高い密度で植えられます。 これは特に、高い品質のワインを造る生産者の畑で顕著な特徴です。 このような高密度での栽培がおこなわれる理由の1つは、ボルドーのブドウ畑の土地の価格の高さです。限られた財源で得られた、限られた広さの土地で、いかに効率的にブドウ栽培を行うかということが、ボルドーでのブドウ栽培の重要なテーマの1つになるのではないかと思います。 このような高密度での栽培ができる理由にはボルドーの気候の影響も考えられます。高密度でのブドウ木の栽培には水不足のリスクを伴いますが、比較的雨の多い海洋性のボルドーの気候では、このようなリスクを抱えることはあまりないのではないかと思います。 ボルドーの温和で湿気のある気候では、ブドウの実に十分に栄養をいきわたらせるためにブドウ木の樹勢を抑制することが重要となりますが、高密度で栽培されたブドウ木では自然に樹勢が抑制されます。この点も、高密度でのブドウ栽培がボルドーの気候に合っている1つの理由なのではないかと思います。 一方で、高密度での栽培には、棚付のためのより多くの支柱や針金を用意したり、専用のトラクターを準備する必要があったり、仕立や耕作、スプレーなどにより多くの手間がかかるなど余分なコストがかかることになります。しかし、これらのコストを差し引いても、ボルドーでは高密度で栽培をするメリットの方が大きいのだと思います。 ② キャノピーマネジメント 先ほども触れましたが、ボルドーの気候は温和な湿気のある気候のために、質の高いブドウを栽培するためには樹勢をコントロールすることが重要です。 (参考記事: ブドウの収穫量と果実の品質の関係を考察 ) (参考記事: canopy management(=キャノピー・マネジメント)の意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) キャノピーマネジメントには、枝葉の伐採などが含まれ、次のような効果があると言われています: ・ブドウ木の通気性の改善 ・果実の腐敗の防止 ・果実への日当たりの改善 ・収量の調整 ・果実への栄養の配分 ボルドーの雨や湿気の多い気候

なぜ高地では日較差(昼夜の気温差)が大きいのかを考察

日較差(昼夜の気温差)はブドウ栽培に大きな影響を与える要素です。 日較差の大きい地域でブドウ栽培を行う場合、次のようなメリットがあると言われています: ・ブドウ中の酸味が保持される ・ブドウの成熟速度が緩やかになり、香りやタンニンが十分に成熟する (→ 補足記事: ブドウ栽培で涼しさはなぜ必要? ~温暖地域で冷涼効果が好まれる理由を考察 ) そして一般的に、高地では日較差が大きくなると言われています。 たとえは、アルザスのブドウ畑は日較差が大きいと言われていますが、多くの畑は山の東側の比較的標高の高い斜面に位置しています。 それでは、なぜ高地では日較差が大きくなるのかを考察してみたいと思います。 まず、日較差に大きな影響を与えるものは、 大気中に含まれる水分 であると言われています。 地面は日中、太陽光から得た熱を吸収し、夜間にはその熱を放出します。日中に得られた熱は大気中の空気や主に水蒸気によって保持されるために、一部の熱は夜間にも保持されます。 標高の高い高地では、空気が薄く、水分も保持しにくいために、日中の熱が急速に逃げるために、夜間の温度は低くなりやすいと言われています。 これをイメージ化すると、上のようなチャートで表すことができるのではないかと思います。 この空気中の熱を保持する力(主に水蒸気量)の違いが、標高の違いによる夜間の熱の放出量に違いを生み、日較差(寒暖差)を生み出しているようです。 そしてこれ以外にも、「放射冷却の影響」や「海からの距離」、「地中の水分量」なども、日較差に影響を与えていることが考えられます。 放射冷却は、雲があることによって妨げられますが、標高の高い地域の方が、平野部に比べて雲がかかることが少ないと考えられます。 海などの大きな水塊は、気温の変化を緩和する役割を果たしますが、一般的に標高の高い地域は、内陸の海から離れた地域に位置しています。 標高の高い特に斜面では、水はけのよい土壌が多いために、平野部に比べて地中の水分が少なくなります。乾いた土壌は水分の多い土壌に比べて、夜間の温度変化は大きくなります。 このように、空気中の水蒸気量の影響を中心に、標高の高い高地では、寒暖差が大きくなるのではないかと考察されます。 <了>

ピノグリ/ピノグリージョは産地によってなぜスタイルが異なるのか?を考察

 今回は、ピノグリ/ピノグリージョの産地によるスタイルの違いを考察したいと思います。 ピノグリとピノグリージョは名前は異なりますが同一品種であり、フランスでは「ピノグリ(Pinot Gris)」、イタリアでは「ピノグリージョ(Pinot Grigio)」と呼ばれています。 この品種は、萌芽が早く、成熟が早いことが特徴です。また、収穫を遅くすることで果実中の糖度を高めることができます。しかし、糖度の高まりが早い一方で、酸味を失うのも早いと言われています。 ピノグリ/ピノグリージョの主な特徴をまとめると次の通りです: ・萌芽が早い ・早熟 ・中程度の終了 ・高い糖度を持つことができる ・糖度の集積が早く、酸味を失うのも早い では、ここから各地で造られるワインのスタイルの確認をしていきたいと思います。 対象とする産地としては、アルザス(フランス)、トレンティーノ=アルト・アディジェ(イタリア)、ニュージーランドの3つをあげたいと思います。 アルザス アルザスのピノグリは、熟度の高い果実から造られるフルボディのスタイルが有名です。 そのスタイルの特徴をまとめると、およそ次のようになるのではないかと思います: ◆アルザスのピノグリワインのスタイルの特徴 【見た目】 ・濃い黄金色 【香り】 ・中程度の香りの強さ ・モモ、リンゴ ・熟成させると → トロピカルフルーツ(バナナ、メロン)、ショウガ、燻製、ハチミツ 【味わい】 ・基本的には辛口~オフドライ(中甘口や甘口のものもある) ・酸味:中程度 ・ボディ:フルボディ ・その他:オイリーな口当たり 【品質】 ・品質:良い~素晴らしい ・価格:中程度~高額 では、なぜアルザスではこのようなフルボディのワインができ上るのかを考察したいと思います。 ◆アルザスの栽培環境による影響 アルザスでフルボディのワインが造られる大きな理由の1つは、高緯度のわりに比較的暖かく、日照時間が長く、乾燥した気候にあると考えられます。 多くのブドウ畑は、ヴォージュ山脈の東側の斜面や平野に位置しており、西側からの雨風から守られることによって、このような好ましい気候に恵まれています。 ブドウ栽培地域としては比較的北部に位置するために日照時間が長く、ブドウの香り成分が十分に成熟することも特徴の1つです。収穫期は1年の中でも比較的乾燥した時期であり、これもブドウの

マロラクティック発酵のバリエーションに関する考察

 マロラクティック発酵は、通常、アルコール発酵の後に行われる工程で、この工程によってワイン中のリンゴ酸が乳酸に変えられます。 乳酸はリンゴ酸に比べて酸味が弱く乳製品を連想させる独特の香りを持つために、マロラクティック発酵を経たワインは、まろやかでバターのような香りを持った味わいになると言われています。 マロラクティック発酵はほとんどの赤ワインと、この効果が有益と判断された一部の白ワインで行われます。 マロラクティック発酵は、もともとは春になるにつれてセラーの温度が上がるにつれて自然発生的に起こっていた反応のようですが、現在では培養した乳酸菌を加えることで最適環境を整えてこの工程を開始をすることができるようです。そして、そのマロラクティック発酵を開始させる環境の違いが、マロラクティック発酵のバリエーションにつながるわけです。 それではいくつかのバリエーションについて、その考察をしてみたいと思います。 小型の樽を使ったマロラクティック発酵 マロラクティック発酵は通常、タンクで行われることが多いようですが、あえて小型のオーク樽の中で行われることもあるようです。 この場合のメリットは、澱を同時に撹拌できることと、風味がより統合されると言われています。澱の撹拌によって、マロラクティック発酵で生成された乳酸の香りと、澱由来の香りの両方がワインによく溶け込んでいくのではないかと思います。 反対にデメリットは、ワインを少量ずつ個別の樽に分けるために、温度管理などの手間が増えることです。 アルコール発酵と同時に行うマロラクティック発酵 もう1つのバリエーションは、アルコール発酵と同時にマロラクティック発酵を行うというものです。 この方法でのメリットは、ワインの味わいがよりフルーティーになることと、製造時間短縮によるコスト減だと言われています。 味わいがよりフルーティーになる理由を考察すると、多分、自然発生的な澱の攪拌が行われないことによって、ワイン本来のフルーティーな味わいが損なわれないことが原因なのではないかと思います。 また、製造時間の短縮がなぜコスト減につながるかというと、マロラクティック発酵を別に行う場合と比べて管理の手間がかからないことと、タンクの回転率が上がることがその理由なのではないかと思います。 以上、マロラクティック発酵の2つのバリエーションとその効果について考察を

発酵温度によるワインスタイルの違いのまとめ

マスト(ブドウ果汁や果肉、果皮などの混合物)の発酵温度によって出来上がるワインにどのような特徴の違いが出るのかをまとめてみました。 まず発酵温度についてですが、白ワインと赤ワインでは、低温、高温と言われる発酵温度は異なります。 一般に、白ワインの方が赤ワインに比べて低い温度で発酵されます。 低温での発酵の特徴 低温での発酵の特徴は、フレッシュでフルーティーな香りが生成・保持されやすいこと、また、ブドウからの果汁以外の成分の抽出度合いが低いことです。 それにより、出来上がるワインはフレッシュで果実味があり口当たりの良いものになると言われています。 しかし一方で、長期熟成に必要な果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンや酸味が十分に抽出されないために、早々に出荷されて消費されることを目的とした早飲みタイプのワインになりやすいと言われています。 ちなみに白ワインの発酵温度が赤ワインよりも低い理由は、白ワインにとってフレッシュでフルーティーな香りはより重要で、赤ワインのようにタンニンの抽出を必要としていないことにあるようです。 高温での発酵の特徴 高温での発酵の特徴は、ブドウの果皮などからの抽出度合いが高まるために、果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンなどの成分が果汁内に多く抽出されることです。 一方で、揮発性のエステルなどの成分が失われてしまうことで、フレッシュでフルーティな香りが失われてしまうとも言われています。 このような発酵の特徴から、高温で発酵された場合には、より長期熟成に向いたワインが出来上がると言われています。 <了>

【考察】なぜ、マセラシオン・カルボニックではタンニンがあまり抽出されないのか?

 赤ワインの製造には、 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」 が用いられることがあります。 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」を用いると次のような特徴を持ったワインが製造されると言われています: ① 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)が起こるためにキルシュやバナナ、風船ガム、シナモンのような独特な香りが加えられる ② 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)によりリンゴ酸が消費されて酸味が抑えられる ③ 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)によりグリセロールが生成されてワインに質感が加えられる ④ 茎由来のスパイスやハーブの香りがワインに加えられる ⑤ 茎由来のタンニンがワインに加えられる ちなみに、 『マセラシオン・カルボニック』 も「房ごとのブドウを用いた発酵手法」の1つです。マセラシオン・カルボニックで製造されたワインは次のような特徴を持っていると言われています: Ⓐ 品種由来の香りに加えて、キルシュやバナナ、風船ガム、シナモンのような独特な香りを持つ Ⓑ フルーティーでタンニンが少なく、早飲みスタイルのワインを造る ここで1つ疑問が発生します。上にあげた特徴の⑤とⒷは明らかに矛盾しているような気がします。 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」を用いると茎の存在のためにより多くのタンニンが抽出されるはずなのに、マセラシオン・カルボニックではタンニンが少ないワインができると言われています。 一見、矛盾に思われるこの特徴の違いがなぜ表れるのかを、一般的な「房ごとのブドウを用いた発酵手法」と「マセラシオン・カルボニック」の工程を比べることで調べてみました。 まず、 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」 としてよく用いられる、破砕したブドウマストに房ごとのブドウを加えて発酵させる手法の工程をしたにまとめてみました。 この工程では、果皮や種子に加えて茎もマストに加えられてマセレーション~アルコール発酵が行われています。 タンニンはアルコールに溶けやすい性質を持っているために、発酵によってアルコールが生成されることで、果皮や種子、そして茎から多くのタンニンがマスト内に溶け出します。 これが「房ごとのブドウを用いた発酵手法」において、茎由来のタンニンが抽出される理由です。 では次に、 「マセラシオン・カルボニック」 における流れを見てみたいと思います。下にマセラシオン・カルボニック

河川から覚えるアメリカ・カナダ東岸のワイン主要産地

アメリカやカナダ東岸の主要ワイン産地の多くは、大きな川の流域に位置しています。 川の流れを調べてみれば、ワイン産地の位置関係の把握に役立つのではないかと、コロンビア川を中心に、それらを地図上にまとめてみました。 対象とした地域は北から、ブリティッシュ・コロンビア州(カナダ)、ワシントン州(アメリカ)、オレゴン(アメリカ)です。 ここで注意すべきはワシントン州とオレゴン州の位置関係です。個人的には時々、上下関係がわからなくなってしまいます。しかし、「俺の上に鷲がいる」と覚えると、この上下関係を間違えることはありません。(参考記事: アメリカ西海岸ワイン産地(州)の位置関係に関する私的暗記法(ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州) ) コロンビア・ヴァレー(ワシントン州) まず、これらの地域で最も重要だと思われるのが、すべての州を流れている「コロンビア川」です。コロンビア川は、カナダを起源として南下をしてワシントン州に入り、ワシントン州とオレゴン州の州境を通って、太平洋まで流れています。 このコロンビア川が造る最大のワイン産地は、「コロンビア・ヴァレー」であり、これはコロンビア川の主な流域であるワシントン州に広がっています。そして、コロンビア・ヴァレーの一部はオレゴン州北部にも広がっています。 コロンビア・ヴァレーは、コロンビア・ゴージとワラワラ・ヴァレーとともに、ワシントン州とオレゴン州にまたがるワイン産地(AVA)としても有名です。 ウィラメット・ヴァレー(オレゴン州) コロンビア川はワシントン州とオレゴン川の州境となって太平洋まで流れ込みますが、その直前でコロンビア川と合流するのは「ウィラメット川」です。 ウィラメット川が作り出すワイン産地は、「ウィラメット・ヴァレー」と呼ばれ、これはオレゴン州最大のワイン産地です。ウィラメット・ヴァレーには、オレゴン州全体のの70%近いブドウ畑があると言われています。 サザン・オレゴン(オレゴン州) ウィラメット・ヴァレーに続く、オレゴン州第2のワイン産地は「サザン・オレゴン」です。ここには、「アンプクア川」と「ローグ川」が流れており、それぞれの流域には「アンプクア・ヴァレー」と「ローグ・ヴァレー」という名のワイン産地が広がっています。 アンプクア・ヴァレーとローグ・ヴァレーは、サザン・オレゴンに包含されるワイン産地(AV

エントレ・コルディリェラス? チリの新しい原産地呼称の覚え方

 チリのワイン産地は南北に長く広がりますが、地形的な特徴の影響を受けるために、実は南北よりも東西にかけて、気候や土壌の多様性が非常に高いと言われています。 従来の原産地呼称では、この東西にかけてのワインスタイルの特徴の違いが十分に表現されていませんでしたが、2011年から、この問題を解決するための新たな付加的な原産地呼称が加えられました。 それが、「コスタ(Costa)」、「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」、「アンデス(Andes)」の3つです。 これは従来の原産地呼称に付加的に加えられるもので、例えば「Aconcagua」で造られたワインに対して、「Aconcagua Costa」、「Aconcagua Entre Cordilleras」、「Aconcagua Andes」のようにラベルに表記されるようです。 上図のように、「コスタ」は海の影響を受ける地域、「アンデス」はアンデス山脈の影響を受ける地域、そして「エントレ・コルディリェラス」はその間の地域を表します。 この新たな原産地呼称の仕組み自体はシンプルなのですが、それぞれの名前、特に「エントレ・コルディリェラス(Entre Cordilleras)」を覚えるのが厄介です。 そこで、これを覚えるための語呂合わせを考えてみました。 エントレ・コルディリェラスは少し苦しいですが、英語のスペルも覚えられるように、それに合わせた語呂合わせにしてみました。 <了>

チリのワイン用のブドウ栽培環境のまとめ

 チリのワイン用のブドウ栽培環境をまとめてみたいと思います。 さらには、地域ごとの栽培環境の違いによるワインスタイルの違いにも言及してみたいと思います。 これはあくまでも個人的なまとめなので、もしかしたら誤っている部分があるかもしれません。 まず、地域差はありますが、チリの全体的な栽培環境は次の通りです: 温暖な地中海性気候であるということは、非常にブドウ栽培に適した気候であると言えると思います。ここから、大量生産ワイン用のブドウ栽培が期待できると言えそうです。 また、温暖な気候であるとともに、海や山からの冷涼効果が期待できるということは、低品質の大量生産ワインだけでなく、高品質ワインに向いたブドウの栽培も期待できると言えそうです。 ではここから、主なワイン産地である4つの地域について、栽培環境を見ていきたいと思います。チリには6つのワイン地域がありますが、主要なワイン産地は、コキンボ、アコンカグア、セントラルヴァレー、南部地方の4つのようです。 チリの国土は縦長であり、それぞれの地域によって気候や栽培環境に大きな違いがあります。そして、その違いは生産されるワインのスタイルにも大きな違いを生み出します。 まずは、 「コキンボ」 からです。 コキンボの栽培環境とワインスタイルの特徴を下にまとめてみました。 コキンボの特徴は、とても険しい山間にあり、厳しい栽培環境にあるということです。 すぐ北にはアタカマ砂漠があるようなとても乾燥した地域で、ブドウ栽培地域としては緯度の低い場所にあります(南緯30°くらい)。 このような厳しい栽培環境においてもブドウ栽培ができるのは、海岸山脈にキャップがあるような谷間であり、そこには海風が吹き込むことで一定の冷涼効果が得られるようです。また地域によっては、アンデス山脈からの冷たい風の冷涼効果も得られます。 また険しい山間にあることから、標高による冷涼効果も得られ、日夜の寒暖の差も得られます。 コキンボで製造されるワインのイメージは、厳しい環境で造られたギュッと凝縮された少量生産のワインです。平野部が少ないことや、都市部からのアクセスが難しいことで、このような利益率の高いワインの生産が向いているようです。 次は、 「アコンカグア」 です。 アコンカグアはコキンボの南、セントラルヴァレーの北に位置します。 アコンカグアの特徴は、沿岸部からア

チリのセントラルヴァレーのサブリージョン/ゾーンの覚え方

チリ最大のワイン産地であるセントラル・ヴァレーには4つのサブリージョンがあります。 そして、サブリージョンのいくつかは、さらに細かいゾーンに分かれています。 これらのサブリージョンやゾーンは比較的メジャーな産地なのですが、何度覚えてもすぐに忘れてしまうので、忘れないための語呂合わせを考えてみました。 ラペル・ヴァレー(サブリージョン)のカチャポアル・ヴァレー(ゾーン)とコルチャグア・ヴァレー(ゾーン)以外にもいくつかゾーンはあるようですが、今回は有名なこの2つのゾーンのみを取り上げました。 実際に、「ラペル・ヴァレー」という名前よりも、「カチャポアル・ヴァレー」や「コルチャグア・ヴァレー」というゾーンの名前の方がワインラベルに使われることが多いそうです。 以上。

サルデーニャ州(イタリア)の白ワインと主要白ブドウ品種の覚え方

サルデーニャ州の主要な白ワインと、白ブドウ品種の覚え方を考えてみました。 まず、サルデーニャ州の主要な白ブドウ品種と言えば、ヴェルメンティーノ(Vermentino)です。 栽培面積の大きさは、カンノナウについで州内で第2位と言われています。 ヴェルメンティーノは、フランス南部ではロール(Rolle)という名前でも呼ばれる品種です。スペルはRolle(役割)とは違い、「L」が2つ重なるようです。 そして、サルデーニャ州の高品質な白ワインはこの品種から造られています。次の2つのワインは、このヴェルメンティーノから造られています。 ・ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャDOC ・ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラDOCG 「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラDOCG」はこの州唯一のDOCGワインとしても有名です。 ここまで国際的に広く利用されている品種であるヴェルメンティーノを取り上げてきましたが、サルデーニャには土着品種の白ブドウも広く栽培されています。 それが、「ヌラグス」というなのブドウです。 このブドウから造られるワインの多くは、主にこの地域で消費されるようなワインに使われているようです。 <了>

サルデーニャ州(イタリア)の赤ワインと主要黒ブドウ品種の覚え方

 イタリアのサルデーニャ州で製造されている主要赤ワインと、主要黒ブドウ品種の覚え方を考えてみました。 まず赤ワインとして有名なのは次の2つです: ・カンノナウ・ディ・サルデーニャDOC(Cannonau di Sardegna DOC) ・カリニャーノ デル スルチスDOC (Carignano del Sulcis) カンノナウとは、グルナッシュ・ノワールのサルディーニャ州での呼称です。 カンノナウはサルデーニャ州で最も栽培面積の大きなブドウ品種です。 また、カリニャーノとはカリニャンのイタリアでの呼称です。 カリニャンは、黒ブドウの中でカンノナウに続いて2番目に栽培面積の大きな品種です。 サルデーニャではこのように2種類の国際品種が多く栽培されていますが、土着品種の黒ブドウも栽培されいます。 その中でも栽培面積の大きいものは、モニカ(Monica)という名前のブドウです。これは主に、この土地で消費されるようなワインに使われているようです。 <了>

シチリア州のワイン用【黒】ブドウ品種の覚え方(語呂合わせ)

 白ブドウ品種に続けて、黒ブドウ品種の覚え方も考えてみました。 ネロ・ダヴォラ(Nero d'Avola) ネロ・ダヴォラは、シチリアで最も広く栽培されている黒ブドウ品種です。カラブレーゼ(Clabrese)という名前でも知られています。 シチリア唯一のDOCGワインである「 チェラスオーロ・ディ・ヴィットリア(Cerasuolo di Vittoria) DOCG 」の主要品種としても有名です。このDOCGではフラッパート(Frappato)という名の黒ブドウとブレンドされます。 ネロ・ダヴォラは晩熟品種で、赤系~黒系果実の香りと、比較的しっかりとした骨格(タンニン、酸味)を持っています。 品質の低い低価格なワインも造りますが、収量を制限すると熟度の高いブドウから品質の高い中~高価格のワインを製造できます。品質の高いワインの多くは、小さめのオーク樽で熟成されます。 高品質なワインを造ることのできる特徴から、90年代には大きな注目も集めた品種であるようです。 ネレッロ・マスカレーゼ(Nerello Mascalese) ネレッロ・マスカレーゼは、近年は、 エトナDOC(赤) の主要品種として注目されている品種です。収量を増やして大量生産に使われることもありますが、収量を制限した高品質なワインの製造にも使われる品種のようです。 エトナDOCは、エトナ火山を囲むように広がる地域です。ちなみに先ほど登場したチェラッスオーロ・ディ・ヴィットリアは島の南部に広がっています。 ネレッロ・マスカレーゼは、ネロ・ダヴォラと同様に、晩熟でしっかりとした骨格(特に高い酸味)を持つブドウ品種です。 ネロダヴォラと比べると、赤系果実の香りが中心で、スミレやハーブ、土のような複雑な香りを持っています。強めの香りの強さを持っているようです。 香りの良さと、しっかりとした骨格を持つという特徴から、近年注目されている理由もうかがい知れます。 エトナには60-100歳にもなる古木も栽培されており、最も品質の高いワインは、このような古木から収穫されたブドウで造られています。 <了>

シチリア州のワイン用【白】ブドウ品種の覚え方(語呂合わせ)

 シチリア州(イタリア)の白ワイン用ブドウ品種を覚えるための語呂合わせを考えてみました。 カタラット(Catarratto) カタラットは黒ブドウ、白ブドウの両方を合わせても、最も広く栽培されているブドウ品種です。英語で書く場合は、「r」が2つ並ぶのでスペルミスをしてしまいそうです。 シチリアの白ブドウは、低価格帯の辛口ワインや、酒精強化ワインのマルサーラの製造に使われることが多いようですが、カタラットも例外ではありません。 高い収穫量を期待でき、軽めのレモンやハーブの香りを持ち、高い酸味を持つことが特徴と言われています。 カタラットは、アルカモDOC(白)製造のための主要品種としても知られています。 グリッロ(Grillo) グリッロは、カタラットと同様にレモンの香りと高い酸味を持つ白ブドウ品種です。暑さに強い品種なので、シチリアの温かく乾燥した気候には非常に適しているようです。 グリッロから製造されるワインも、カタラットと同様に、低価格な辛口ワインやマルサーラ、アルカモDOCなどがあります。 しかし、中程度の強度の香りと、花の香りを持つために、カタラットよりも品質の高いワインが造られる傾向があるようです。 インツォリア(Inzolia) = アンソニカ(Ansonica) インツォリアは、アンソニカとも呼ばれる白ブドウ品種です。早熟で乾燥に強い特徴を持ったブドウ品種です。 カタラットやグリッロと同様に、中程度のレモンの香りを持った品種ですが、酸味は中程度で、カタラットやグリッロほどの酸味はありません。そのために、両品種とのブレンドに相性が良いようです。 インツォリアからも、低価格な辛口ワインやマルサーラ、アルカモDOCなどが造れらるようです。 ジビッボ(Zibibbo)= マスカット・オブ・アレキサンドリア シチリアではマスカット品種も栽培されており、ジビッボという名前で知られています。ZとBばかりの独特な綴りです。 ジビッボは、熱や乾燥に強いという特徴を持っているために、強烈な日差し、暑さ、乾燥した風によって最も乾燥に強い品種しか育たないパンテッレリーア島でのワイン造りに役立っています。パンテッレリーア島は、シチリアとチュニジアにある島です。 ここでは、通常の辛口や甘口のレイト・ハーヴェストワインに加えて、半干しブドウから造られるパッシート・スタイルのワインが

スペインの「グラン・レセルバ(Gran Reserva)」ワインとは?その品質を考察

スペインの「グラン・レセルバ(Gran Reserva)」ワインとは、スペインのワイン法で定められた最長の熟成基準を満たしたワインのことを指し、ラベルに「Gran Reserva」と表記することが許されたワインのことです。 赤ワインの場合、最低限5年の熟成期間が求められており、そのうち最低18か月以上の樽熟成が必要です。樽熟成に使われる樽のサイズにも規定があり、330ℓを超えるものを用いることはできません。 熟成期間の規定には独自にさらに厳しい条件を課している地域(リオハDOCaなど)もあり、さらに長い最低熟成期間や、瓶熟成の規定、より小さい樽の利用などの条件が課せられています。 白ワインやロゼワインにも「グラン・レセルバ」を名乗るには同様の熟成規定があり、4年の最低熟成期間(うち、6か月は330ℓ以下での樽熟成)という条件が課せられています。 一定の熟成規定を満たしたワインに表示のできるラベル用語としては「Gran Reserva」以外にも「Reserva(レセルバ)」や「Crianza(クリアンサ)」がありますが、最も長く厳しい熟成規定が設けられているのは「Gran Reserva」です。 では、「Gran Reserva」が最も品質の高いワインと言えるのでしょうか? 答えは必ずしもそうとは限りません。 その理由を考察していきたいと思います。 【理由①】「Gran Reserva」は熟成しか規定していない ワインの品質に大きな影響を与える要素としては、ブドウの品質(ブドウ栽培)、醸造手法(ワイン醸造)、熟成手法(ワイン熟成)があると言われています。 しかし、「Gran Reserva」が規定しているのは、このうちの「熟成手法」のみについてです。「ブドウの品質」や「醸造手法」については何も条件が課せられていません。 極端な例をあげると、最高の日当たりと水はけの畑でとられた最高級のブドウから造られたワインでも、栽培条件の良くない畑の粗悪なブドウから造られたワインでも、一定の条件を満たす熟成工程を経た場合、どちらも「Gran Reserva」が名乗れてしまうわけです。 例えば、同じ熟成規定のもとで造られるリオハDOCaワインであっても、これだけ広範囲にわたるブドウ畑があれば、そこで造られるブドウの品質もまちまちです。そして、そのブドウから造られるワインの品質もピンから