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ピノグリ/ピノグリージョは産地によってなぜスタイルが異なるのか?を考察

 今回は、ピノグリ/ピノグリージョの産地によるスタイルの違いを考察したいと思います。


ピノグリとピノグリージョは名前は異なりますが同一品種であり、フランスでは「ピノグリ(Pinot Gris)」、イタリアでは「ピノグリージョ(Pinot Grigio)」と呼ばれています。


この品種は、萌芽が早く、成熟が早いことが特徴です。また、収穫を遅くすることで果実中の糖度を高めることができます。しかし、糖度の高まりが早い一方で、酸味を失うのも早いと言われています。


ピノグリ/ピノグリージョの主な特徴をまとめると次の通りです:

・萌芽が早い

・早熟

・中程度の終了

・高い糖度を持つことができる

・糖度の集積が早く、酸味を失うのも早い



では、ここから各地で造られるワインのスタイルの確認をしていきたいと思います。


対象とする産地としては、アルザス(フランス)、トレンティーノ=アルト・アディジェ(イタリア)、ニュージーランドの3つをあげたいと思います。





アルザス


アルザスのピノグリは、熟度の高い果実から造られるフルボディのスタイルが有名です。


そのスタイルの特徴をまとめると、およそ次のようになるのではないかと思います:


◆アルザスのピノグリワインのスタイルの特徴


【見た目】

・濃い黄金色

【香り】

・中程度の香りの強さ

・モモ、リンゴ

・熟成させると → トロピカルフルーツ(バナナ、メロン)、ショウガ、燻製、ハチミツ

【味わい】

・基本的には辛口~オフドライ(中甘口や甘口のものもある)

・酸味:中程度

・ボディ:フルボディ

・その他:オイリーな口当たり

【品質】

・品質:良い~素晴らしい

・価格:中程度~高額



では、なぜアルザスではこのようなフルボディのワインができ上るのかを考察したいと思います。


◆アルザスの栽培環境による影響


アルザスでフルボディのワインが造られる大きな理由の1つは、高緯度のわりに比較的暖かく、日照時間が長く、乾燥した気候にあると考えられます。


多くのブドウ畑は、ヴォージュ山脈の東側の斜面や平野に位置しており、西側からの雨風から守られることによって、このような好ましい気候に恵まれています。


ブドウ栽培地域としては比較的北部に位置するために日照時間が長く、ブドウの香り成分が十分に成熟することも特徴の1つです。収穫期は1年の中でも比較的乾燥した時期であり、これもブドウの成熟の助けとなっています。


また、ヴォージュ山脈の斜面の標高の高い地域では、昼夜の寒暖差が生まれるために、ブドウには一定の酸味が確保されます。この酸味があることで、ワインは瓶内熟成の能力を保持することができ、熟したトロピカルフルーツやショウガなどのスパイス、ハチミツのような香りを生むことができます。


このような斜面の畑の多くは南向きや東向きに面しており日当たりが良く、さらに水はけの良さや栄養分の少ない土壌と相まって、香りが凝縮されたブドウが栽培されます。このようなブドウの業種区間はワインの香りの強さにつながります。


ワインのスタイルに影響を与えている栽培環境の特徴をまとめると次の通りになると思います:

・晴れが多く乾燥した、緯度の割には暖かい気候

・高緯度による日照時間の長さ

・南向きや東向きの日当たりの良い畑が多い

・標高による比較的大きな日較差(斜面の畑)

・水はけの良さとやせた土壌(斜面の畑)




◆アルザスのワイン醸造手法による影響


アルザスのワイン醸造手法の特徴は、単一品種のみを利用して、品種由来の果実の香りを大事にすることです。


これがモモ、リンゴ、トロピカルフルーツの香りの際立ったアルザスのピノグリワインを生み出します。


醸造オプションをまとめると次の通りです:

【発酵前マセレーション】

・スキンコンタクトが利用されることもある

【アルコール発酵】

・低温(12~16度)

・不活性な発酵容器を利用(大きなオーク樽が一般的)

・マロラクティック発酵は行わない

【熟成】

・不活性な発酵容器を利用

・澱との攪拌はあまり行われない



◆アルザスのワインのその他の特徴


今まであげた特徴に加えて、アルザスのピノグリワインには「ヴァンダンジュ・タルディヴ(略:VT)」と「セレクシオン・ドゥ・グラン・ノーブル(略:SGN)」という名の2種類のワインがあります。


VTは主に遅摘みによって糖度を高めたブドウから(一部、貴腐ブドウを含む)、SGNは貴腐菌により糖度が凝縮されたブドウから製造されます。


VTは通常のアルザスワインよりも完熟したトロピカルフルーツの香りや、ドライフルーツの香りを持つことが特徴で、その多くは甘口のワインとして製造されます。しかし、アルコール度の高い辛口のワインが造られることもあるようです。


SGNはVTよりもさらに糖度の高い貴腐ブドウから造られることが特徴で、ハチミツ、アプリコット、柑橘系果実、ドライフルーツ、ショウガなどの複雑な香りを帯びた、極甘口のワインです。


アルザスでVTやSGNのような非常に糖度の高いワインを造ることのできる理由は、暖かい気候や長い日照時間、乾燥した収穫期があることだと考えられます。


また、夜間の涼しさによって、甘口ワインに必要な一定の酸味を確保できることも、VTやSGNがアルザスで造られる理由の1つだと考えられます。




トレンティーノ=アルト・アディジェ


イタリアでは、この品種はピノグリージョ(Pinot Grigio)と呼ばれています。


イタリア北部のトレンティーノ=アルト・アディジェで造られるピノグリージョのスタイルは、アルザスのピノグリワインに比べて、ボディはより軽めです。また、ブドウの熟度が低めなためか、味わいもより辛口のものが中心に造られています。


トレンティーノ=アルト・アディジェのピノグリージョワインのスタイルの特徴をまとめると次のようになるのではないかと思います。



◆トレンティーノ=アルト・アディジェのピノグリージョワインのスタイルの特徴


【見た目】

・淡い~中程度のレモン色

【香り】

・弱い~中程度の強さ

・緑色系果実(リンゴ)~柑橘系果実(レモン)~有核果実(モモ)

・良いものはナッツやハチミツの香りを持つ場合もあり

【味わい】

・辛口

・酸味:中~高

・ボディ:ライト~ミディアムボディ

【品質】

・品質:良い~素晴らしい

・価格:低価格~中程度の価格



トレンティーノ=アルト・アディジェの栽培環境による影響


トレンティーノ=アルト・アディジェのブドウ畑の多くは、アルプス山脈の麓の丘陵地帯に位置しています。


アルプス山脈によって北からの風から保護されていることもあり日中は温度が上がることもあり、温和な大陸性気候に属しています。そのため果実も十分に成熟することが考えられます。


ブドウ畑の多くは標高の高い地域に位置しており、ブドウは昼夜の寒暖差にさらされるために、十分な酸味が保持されます。


トレンティーノ=アルト・アディジェは、アルザスよりも南部に位置するためにより暖かい気候にありますが、トレンティーノ=アルト・アディジェのピノグリージョがよりライトボディなワインになる理由はその収穫時期にあるようです。


トレンティーノ=アルト・アディジェのピノグリージョは、アルザスのピノグリージョと比べると、早めに収穫が行われる傾向にあるようです。ブドウの成熟度はアルザスほどではありませんが、その分、多くの酸味が保持されます。


トレンティーノ=アルト・アディジェに限らず、イタリアのピノグリージョは、フランスのピノグリに比べると収穫が早めでよりフレッシュさが強調されたスタイルで造られます。そして、イタリア/フランス以外で造られるピノグリージョ/ピノグリワインはどちらのスタイルにより近いかによって、「ピノグリージョ」もしくは「ピノグリ」のラベルが付けられます。


ちなみにトレンティーノ=アルト・アディジェのピノグリージョは、イタリアの他の地域で造られるピノグリージョにワインに比べると、より香りの強さや深みがあると言われています。この理由としては、この地域の気候の影響に加えて、この地域で利用されているクローンにも影響があるようです。このクローンは、より小さな実をつけて、ワインに凝縮した果実の香りをもたらすと言われています。



トレンティーノ=アルト・アディジェのワイン醸造手法による影響


この地域では、ピノグリージョワインは、果実の香りと新鮮さを保持することを重視して製造されます。これは基本的にはアルザスにおけるピノグリージョワインの製造と同じです。


醸造オプションをまとめると次の通りです:


【アルコール発酵】

・低温(12~16度)

・不活性な発酵容器を利用(ステンレスタンク or コンクリートタンク)

・マロラクティック発酵は行わない

【熟成】

・不活性な発酵容器を利用

・熟成中の澱との接触は短期間





ニュージーランド


ピノグリ/ピノグリージョは、ギズボーン、マールボロ、セントラルオタゴなど、ニュージーランドの各地で製造されています。


ニュージーランドのスタイルはアルザスに似たスタイルであり、多くのワインには「ピノグリ」の名前でラベルがされています。


アルザスと同様に、質感のある口当たりや中程度の酸味という特徴を持っていますが、アルザスに比べてより純粋な果実味を持ち、やや残糖量が多いと言われています。


また、ニュージーランドのピノグリワインのスタイルは、若々しさを前面に出したよりライトボディのワインと、熟度の高い果実から造られたよりフルボディの2種類のワインがあります。



◆ニュージーランドのピノグリワインのスタイルの特徴


まず、フルボディのワインはアルザススタイルにより近いスタイルだと思われます。特徴をまとめると次の通りです:


【見た目】

・濃い黄金色

【香り】

・中程度~強いの香りの強さ

・熟した有核果実(モモ、アプリコットなど)

・スイカズラ

・熟成させると → トロピカルフルーツ(バナナ、メロン)、ショウガ、燻製、ハチミツ

【味わい】

・辛口~オフドライ

・酸味:中程度

・ボディ:フルボディ

・その他:オイリーな口当たり

【品質】

・品質:良い~素晴らしい

・価格:中程度~高額


一方で、ライトスタイルのものは次のようにまとめられると思います:


【見た目】

・淡い~中程度のレモン色

【香り】

・弱い~中程度の香りの強さ

・有核果実(モモ、アプリコットなど)

・ややシンプルな香り

【味わい】

・辛口~オフドライ

・酸味:中程度

・ボディ:ミディアムボディ

・その他:オイリーな口当たり

【品質】

・品質:良い

・価格:低価格~中程度



ニュージーランドの栽培環境による影響


ニュージーランドの多くの地域は、冷涼~温和な海洋性気候に属します。


海洋性気候であるために雨が多い印象がありますが、西側の山々によって雨風から守られた畑が多いために、それほど多くの雨が降るというわけでもないようです。例えば、マールボロの年間降水量650mmであり、アルザスの600mmと比べてそれほど大きな数字ではありません。土壌も水はけのよい沖積土が多いために、それほど大きな雨の影響を受けないというのも特徴の一つです。


ニュージーランドは緯度が高く、空気の澄んだ南半球にあることから、長時間の強い日差しを受けることも栽培環境の特徴の1つです。これは、十分な果実の成熟を促します。


強い日差しの影響で日中の気温が高くなる一方で、夜間は海風の影響で気温が下がるために、昼夜の気温差は大きくなり、これが香りの成熟を促し、果実内の酸味の保持を助けます。


このような気候的特徴があるために、ニュージーランドではアルザスのような成熟度と酸味を持ったピノグリが栽培できるのだと考えられます。そして、アルザスと同様にピノグリは十分に成熟してから収穫されていると考えられます。


また、アルザスのものに比べて、ニュージーランドのピノグリワインに純粋な果実の香りが現れる理由は、陽ざしの強さなどにより、より成熟度の高い果実が栽培されることが原因なのではないかと考察します。



◆ニュージーランドのワイン醸造手法による影響


ニュージーランドの多くのワインは、フレッシュさと果実味を大事にした単一品種ワインとして造られます。これはピノグリワインについても同様です。


しかし一方で、ヨーロッパのような製造に関する規制が少ないことから、さまざまな製造手法が実験的に行われていることも特徴の1つです。


安価なワインについては次のような醸造手法が多く用いられます:


【アルコール発酵】

・低温(12~16度)

・不活性な発酵容器を利用(ステンレス鋼タンク)

・培養酵母が使われる

・マロラクティック発酵は行わない

【熟成】

・不活性な発酵容器を利用

・澱との接触は短期



高価なワインについては、味わいの複雑性を増すために次のような醸造手法が用いられているようです:


【発酵前マセレーション】

・スキンコンタクトが利用されることもある

【アルコール発酵】

・低温(12~16度)

・不活性な発酵容器と、一部、小樽での発酵が行われることもある

・天然酵母が使われることもある

・マロラクティック発酵は行わない

【熟成】

・オーク樽による熟成が行われることもある

・澱との攪拌が行われることもある




まとめ


ここまで、「アルザス」、「トレンティーノ=アルト・アディジェ」、「ニュージーランド」のワインスタイルの違いをまとめてみました。


それぞれスタイルが異なりますが、その違いは、それぞれの地域における栽培環境の違いと、醸造手法の違いに大きく起因していることが考察されました。


<了>


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ブドウ樹は、その土地に合わせて様々な形をしています。このブドウ樹の形は「仕立て」と呼ばれ、休眠期の剪定によって整えられます。 例えば、ボルドーやブルゴーニュでは針金と柱を用いて枝を地面と垂直方向に伸ばす「垣根仕立て」が多く採用されています。 一方で日本では、ブドウや葉を棚の天面に広げる棚仕立て(Pergola ペルゴラ)が多く採用されています。 このような仕立てや選定は、気温、日照、水、土壌の栄養分などのブドウ樹が必要とする要素や、ブドウ畑の機械の使用などを考慮して、そのブドウ畑に最適なものが選ばれます。 WSETレベル3では、この「仕立て」、「剪定」について比較的しっかりと学ぶのですが、ブドウ畑に馴染みのない私にとっては少し理解が難しい部分でした。 特に私が混乱してしまったのは、「仕立て(training)」と「剪定(pruning)」の違いでした。両者はお互いに深い関係があり、テキストの説明だけでは直感的にわかりにくかったので、個人的に図などを利用してまとめてみました。 (関連記事:t rellis の意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) <仕立てと剪定の違い> WSETテキストによれば「仕立て」と「剪定」は次のように説明されています。 「ブドウ樹の整枝・仕立てとは一般に株の形状のことをいい、大きく分けて、株仕立てとコルドン仕立ての二つに分類できる。」(株…ブドウ樹で一年以上経っている木質部のこと) 「剪定とは、冬または生育期間中に、望ましくない葉や長梢、株を除去することである。剪定によって樹の形が決まり、大きさが制限される。」 つまり、仕立てとは「ブドウ樹の形」を意味し、剪定とはその「ブドウ樹の形をつくるための作業」ということになります。 <仕立てと剪定の種類> 「仕立て」は株(一年以上経っている木質部)の形によって大きく「株仕立て(head training)」と「コルドン仕立て(cordon training)」の二つに分類ができるようです。 「株仕立て」は株の部分が比較的小さいのに対して、「コルドン仕立て」はコルドンと呼ばれる腕枝があるのが特徴です。コルドンは通常1~2本ですが、4本以上のコルドンを持つ「大木仕立て(big vine)」と呼ばれるものもあるようです。 ...

クリアンサ、レゼルバ、グランレゼルバとは?スペインワインの熟成規定(最低熟成期間)の私的暗記法

スペインの赤ワインのうち、最良のワインにはほぼ確実にオークを使用した熟成がされていると言われています。白ワインの大半はフレッシュで果実味が豊かなワインと言われていますが、一部のワインではオークを使った熟成が行われ、異なる風味が加えられています。 スペインのワイン法でもワインの熟成表記に関する規定が定められており、最低熟成期間の長さによって、「 クリアンサ(Crianza) 」、「 レゼルバ(Reserva) 」、「 グラン・レゼルバ(Gran Reserva) 」などのカテゴリーが規定されています。 最低熟成期間には、総熟成期間と樽熟成期間があり、総熟成期間は樽熟成期間を含めたトータルの熟成期間を示しています。 いくつかのワイン試験では、この最低熟成期間をワインの種類(赤、白・ロゼ)ごと、カテゴリーごとに覚えなければならないのですが、この数字の羅列を覚えるのはなかなか至難の業です。 そこで、個人的に考えた、このスペインワインの熟成規定の覚え方を紹介したいと思います。 1. 表を年表示にする まずは、数字を覚えやすくするために、表の単位を「月」から「年」に変換します。 まるで囲んだ部分だけ、語呂合わせなどを使って覚えます。 2. 赤ワインの「グラン・レゼルバ」の熟成期間を覚える 赤ワインのグラン・レゼルバの最低熟成期間は、偶然にもクリアンサとレゼルバの最低熟成期間を足し合わせた期間なので、簡単に覚えられます。 3. 白・ロゼワインの「クリアンサ」、「レゼルバ」の最低総熟成期間を覚える 白・ロゼワインにおいて、クリアンサ、レゼルバの最低の総熟成期間は、偶然にも赤ワインの「最低総熟成期間ー最低樽熟成期間」に一致します。これを覚えます。 4. 白・ロゼワインの「グラン・ レゼルバ」の最低総熟成期間を覚える 今までの法則で行くと、「グラン・レゼルバ」の最低の総熟成期間は3.5年が望ましいですが、 実際は4年 です。ここだけ、例外的に 0.5年だけずれる と覚えます。 5. 白・ロゼワインの 最低樽熟成期間を覚える 白・ロゼワインの最低の樽熟成期間は、全て同一の0.5年です。 赤ワインの「クリアンサ」のものと同じと覚えておくと、覚えやすいかもしれません。 最後に、この表を法則とともに覚えておくことで、暗記作業は完了です。 関連記事: スペインの「グラン・レセルバ(Gran Re...

WSETレベル3の英語受講から合格までの体験記(難易度、勉強法、合格の秘訣など)

ワインの素人だった私が、ワインの勉強をまじめに始めて2年目にWSETレベル3の英語試験を合格した勉強法を紹介したいと思います。 WSETは世界で通用するワイン資格です。主催団体によればレベル3は、 「 ワインの業界で働くプロフェッショナルおよびワイン愛好家を対象とした上級レベルの資格 」 です。 全世界で通用する資格であるために、海外のワイナリーに行ってWSETのレベル3を持っていると言えば、ワインについてはそれなりに知っていると思ってもらえるようです。 いつか海外のワイナリーを訪れることを思い描きながら、WSETレベル3に挑戦をした軌跡を紹介します。 (参考記事: 意外に高い?WSETの合格率 ) なぜWSETレベル3を受験? 私にとってのワインの勉強は、 飲み友達作り にワインスクールに通ったことから始まりました。 当時はワインの勉強などそっちのけで、中途半端な知識でワインスクールのクラスメートとワインを飲み明かすことだけを楽しんでいました。 折角ワインスクールに通ったのに、フランスのワイン産地はブルゴーニュとボルドーしか頭に残っていませんでした。 そんなワイン素人の私がまわりの飲み友達に影響されて、JSAワインエキスパート試験に挑戦をしました。まじめなワインの勉強はゼロから始めたこともあり、はじめはイチかバチかくらいの気持ちで始めた挑戦でしたが、ワインスクールのサポートにも助けられてなんとか一回で合格をすることができました。 次に挑戦すべきは上位資格である「JSAワインエキスパート・エクセレンス」だと思い、この資格は5年間待たなければならないことを知って、ワインの勉強はしばらくお預けだと少し寂しく思っていました。 しかし、ひょんなことからWSETは英語でワインが学べるということを知って、今度も大きな挑戦でしたが、WSETレベル3の英語講座に通うことに決めました。 (参考記事: WSETとは?WSETワインレベル3資格とは? ) (参考記事: ワインを英語で学ぼうと思ったきっかけと意外な発見 ) WSETレベル3を受講してよかったこと WSETレベル3を受講した良かったことは、ワインを英語で学んで、資格試験にも合格をしたことで、英語の環境でも臆せずワインについて話ができるようになっ...