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1月, 2023の投稿を表示しています

最新記事

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

ヴァルポリチェッラ・リパッソの製造方法を図を使ってまとめてみる

イタリアのヴェネト州で造られるヴァルポリチェッラ・リパッソワインは、ヴァルポリチェッラ・デッラ・アマローネ(リパッソ)の製造工程で利用した発酵中の果皮を転用して製造するユニークなワインです。 ヴァルポリチェッラDOCと、ヴァルポリチェッラ・デッラ・アマローネ(リパッソ)DOCGの製造工程が絡む複雑な製造工程です。 (関連記事: 地図を使ったヴェネト(Veneto)州の主要なDOCGの暗記法 ) 一度覚えても、何かと細かい部分を忘れてしまうので、今回図にまとめてみることにしました。 基本的には、ヴァルポリチェッラDOCの新たなベースワインを造って、アマローネ(リパッソ)から取り出した未圧搾のブドウの果皮を取り出して、発酵容器で再発酵をさせる流れです。 なぜ、再発酵と呼ばれるかというと、ベースワインは1度目のヴァルポリチェッラDOCの製造工程でアルコール発酵が行われているからです。 また、再発酵が起こるメカニズムは、アマローネ(リパッソ)から取り出したブドウの果皮には酵母と糖分が残されているために、これらの間でアルコール発酵が発生することによって起こります。 アマローネ(リパッソ)から取り出すブドウの果皮は圧搾前のものである必要があるようですが、これは圧搾により糖分が失われないようにするためなのではないかと考察します。 最後に、リパッソの味わいですが製法から想像できるように、アマローネやレチョートと比べると軽めのボディですが、ヴァルポリチェッラDOCと比べると、より重いボディです。 (関連記事: リパッソが手に入ったのでやってみた ~ヴァルポリチェッラ・ワイン4種類の比較テイスティング~ ) <了>

ヴァルポリチェッラ・ワインを構成するブドウ品種とは? ~コルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラの役割を考察~

 ヴァルポリチェッラ(Valpolicella)とは、イタリアのヴェネト州で造られる有名な赤ワインです。 「ヴァルポリチェッラ」という名前が有名で、製造に使われているブドウ品種の名前を度々忘れがちなのでまとめてみました。 ちなみに、ヴァルポリチェッラは、ヴェネト州にある都市ヴェローナの北部に位置します。多くの畑は山のふもとの斜面に位置しています。 東側は白ワインで有名なソアヴェ、西側にはガルダ湖に挟まれています。 ヴェネト州の有名なワインを3つあげると、「プロセッコ」、「ヴァルポリチェッラ」、「ソアーヴェ」があがると思うのですが、そのうち2つがヴェローナの近郊で造られています。(プロセッコの産地はヴェネト州中部のトレヴィーゾ近郊です) ヴァルポリチェッラの主要品種 ヴァルポリチェッラの主要品種と言えば、まずは 「コルヴィーナ(コルヴィーナ・ヴェロネーゼ)」 があがります。 この品種の特徴は、高収穫が見込めることです。また、花の香り(すみれ)や赤系果実の香り(サクランボ、赤プラム)と、高い酸味を持つことも特徴です。 栽培方法としてはペルゴラ(pergola)と呼ばれる棚仕立て多くが栽培されています。それには、次のような理由があるようです。 ・十分な収穫を得るためには新梢を長く伸ばす必要があること ・日焼けに弱いこと(ペルゴラは日陰を多く作れる) ・カビに弱いこと(ペルゴラは風通しが良い) コルヴィーナが主要品種として用いられる理由は、比較的はなやかな香りを持ち、高い収穫量を見込めるからではないかと思います。 また、酸味というしっかりとした骨格をもっていることもその理由の1つではないかと思います。ヴァルポリチェッラには、レチョートと呼ばれる甘口ワインや、アマローネと呼ばれるフルボディのワインもありますが、これらにおいて高い酸味を持つことは大きなメリットなのではないかと思います。 ヴァルポリチェッラの補助品種 次にヴァルポリチェッラに補助的に用いられている品種です。よく用いられる品種は、 「コルヴィノーネ(Corvinone)」 と 「ロンディネッラ(Rondinella)」 です。 コルヴィノーネは「大きなコルヴィーナ」と似た名前を持っており、品種特徴が似ていることからコルヴィーナのクローンであると歴史的に思われてきたようですが、実際は関係のない異なる品種のようです。

なぜワイン選びが難しいのか?ブルゴーニュのワインラベルから考察

 ワイン選びはある程度の知識がないと難しいと言われます。 なぜワイン選びが難しいのかをフランスのワインを使って考察してみました。 まず、ワインを選ぶ際に、最初に調べる情報は次のようなものだと思います。 ----------------------- ・タイプ(スティル?泡?酒精強化?) ・色(赤?白?ロゼ?) ・原産国(フランス?イタリア?アメリカ?…) ・価格 ----------------------- これらの情報は、お店のポップを見れば書いてあるので、探すのに苦労するような情報ではないと思います。 また、外観や裏ラベル、ボトルの形状からもある程度分かると思います。スパークリングワインなどは瓶の口元の形が特徴的です。 しかし、そのワインの味わいがどのようなものかを知ろうと思うと、一気に難易度があがります。 例えば、次のラベルのワインからその味わいを知ろうと思ったら、ある程度の事前知識を持っている必要があります。 味わいの手掛かりとしては、まずは使われているブドウ品種を知ることです。しかし、品種に関する情報はどこにも書いてありません。 まずは、品種の情報が無いことが、ワイン選びを難しくしている理由の1つだと思います。 ちなみに、ある程度のワインの知識がある人が注目するのは下図の赤い下線の部分です。 「Appellation d'Origine Contrôlée」 と書かれていることで、これがAOCレベルのワインであることが分かります。 AOCレベルのワインは、各産地ごとに厳しい栽培・醸造ルールに則って生産されているワインのことであり、産地によって生産できるワインの色や利用できるブドウ品種も決められています。AOCはフランスで適用されているルールですが、似たようなルールがヨーロッパ全体で運用されています。 従って、このワインの産地が分かればブドウ品種も分かることとなります。 そして、ワインを少しでもかじったことがある人は、 「Mâcon Villages(マコン・ヴィラージュ)」 が産地を表しているとすぐに分かり、頭には次のような地図が思い浮かぶと思います。 マコン・ヴィラージュの 「マコン」 とはマコネ地区にある街の名前であり、ワインで有名なブルゴーニュ地方に含まれています。 ブルゴーニュ地方のAOCレベルの白ワインはほとんど全てが「シャルドネ種」か

長らく疑問に思っていること ~マセラシオン・カルボニックは「醸し?」それとも「発酵?」~

 マセラシオン・カルボニックは、密閉槽の中に破砕していないブドウの房のみを入れて、それを二酸化炭素で満たして、数日間置いておく醸造手法です。 この手法を用いると、ブドウから色素は抽出されるが、タンニンはほとんど抽出されず、その結果できるワインは果実味が豊かで口当たりの柔らかいものになると言われています。ボージョレ・ヌーヴォーの製造で使われていることでも有名な手法です。 このマセラシオン・カルボニックで特徴的なのは、「酸素」や「酵母」を利用せずに、「酵素」の働きによりアルコールを作り出すブドウの細胞内の発酵が起こることです。 (細胞内の発酵に関する詳細はこちら→  関連記事:赤ワインで重要な「房ごと発酵する醸造方法」と「細胞内の発酵」 ) 私は長らく、マセラシオン・カルボニックに対して疑問をもっていました。 それは、この手法が「マセラシオン(醸し)」に該当するのか、それとも、「発酵」に該当するのかという疑問です。 マセラシオン・カルボニックは名前から判断をすると「マセラシオン」に該当すると思うのですが、この工程の中身を見てみるとアルコールを発生させる発酵反応を伴うために、「発酵」に該当するようにも感じます。 そこで、マセラシオン・カルボニックの一連の工程を調べてみました。おおむね下の図のような流れになるようです。 そこで気が付いたことは、ブドウの細胞内の発酵が終わった後に、ブドウ果汁に対しては通常のアルコール発酵が行われているということです。 通常の赤ワインの醸造工程は、「収穫→受入→除梗・破砕→マセラシオン→アルコール発酵→熟成→瓶詰め」という流れです。 マセラシオン・カルボニックのあとに個別にアルコール発酵が行われていることを考えると、やはりマセラシオン・カルボニックは「マセラシオン」に該当する可能性が高いような気がします。 未だに正解はわからないのですが、この疑問を持ったことで、マセラシオン・カルボニックを深く理解することができたような気がします。 <了>

何が違う?高品質ワイン vs 大量生産ワイン ~ローヌの赤ワインの醸造方法で比較~

 高品質ワイン(≒ 高額ワイン)と、大量生産ワイン(≒ 低価格・低品質ワイン)では、ワイン醸造の方法が異なります。 WSET試験では、ワイン醸造の各工程における違いをよく問われます。 ローヌのクリュ・ワイン(高額・高品質ワイン)と、大量生産ワインの醸造方法を調べてみると、見事に各工程における醸造手法の違いが明確に現れていたので、それを表にまとめてみました。 クリュ・ワインの例としては「Cote Rotie(コート・ロティ)」や「Chateauneuf-du-Pape(シャトーヌフ・デュ・パプ)」があり、大量生産ワインの例は、「IGPワイン」や「広域AOC(AOC Cote du Rhoneなど)ワイン」があります。 まず、収穫について。収穫は厳密にはワイン醸造ではないかもしれませんが、収穫はワイン醸造に影響を与える大きな要素です。 クリュ・ワインでは基本的に手作業による収穫であるのに対し、大量生産ワインでは機械収穫がメインです。 興味深いのは大量生産ワインでも人件費のかかる手作業による収穫が行われている点です。これは機械収穫では不可能な房ごとのブドウを確保するためであり、これによってマセラシオン・カルボニックと呼ばれる低価格ワインと相性のよい醸造手法を用いることができます。 次に醸造前マセレーションについてです。発酵前マセレーションは、色素や香りの抽出のために行われます。 (関連記事: anthocyanin の意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) クリュワインでは、コールドマセレーション(低温浸漬)という手法が取られることがあります。これは、タンクスペースや冷却のエネルギーが必要なために比較的コストがかかる方法です。 大量生産ワインでは、特に大手の製造者では、フラッシュ・デタントやサーモヴィニフィケーションと呼ばれる手法を用いて、素早い色素や香りの抽出が行われます。 (関連記事: フラッシュ・デタント (Flash détente)とは?の備忘録 ) アルコール発酵に関する違いとしては、高品質ワインは天然酵母が利用されることがあることと、発酵温度が高めであることです。これにより香りの複雑さや、色素、香り、タンニンの抽出が高まります。大量生産ワインでは、培養酵母が用いられ、発酵温度は中程度です。これによりフルーティーでタンニンの抽出が低めのワインが造られます。

GSMブレンドワインとは?

GSMブレンドと呼ばれるワインがあります。 知らないと意味がわからなのですが、GSMとはブレンドワインの一種の頭文字をとったものです。 G = Grenache Noir(グルナッシュ・ノワール) S = Syrah (シラー) M = Mourvedre(ムールヴェ―ドル) を表します。 代表的なGSMブレンドは南ローヌのワインであり、ここでは品種の利用比率などが細かく決められています。 多くの場合、グルナッシュ・ノワール主体で、シラーとムールヴェ―ドルが補助的な役割を果たします。また、いくつかのローカル品種の利用も許可されています。 GSMワインは、赤系と黒系の熟した果実味、乾燥したハーブやコショウのアロマ、グリップ感のあるフィニッシュで知られています。 GSMブレンドにおける各品種の特徴・役割は次の通りです。 グルナッシュ・ノワール ・淡いルビー色 ・熟した赤系果実の風味(イチゴ、赤プラム、サクランボ) ・スパイスやハーブの香り ・弱い酸味 ・低~中程度のタンニン ・高いアルコール度 シラー ・濃いルビー色 ・中程度から強いスミレ、赤黒プラム、ブラックベリーの風味 ・黒コショウ、ハーブのニュアンス ・中~高レベルの酸味とタンニン ・ブレンドに骨格、果実味、色を加える ムールヴェ―ドル ・濃いルビー色 ・強い香り ・黒系果実(ブラックベリー)、スミレの風味 ・高いレベルのしっかりとしたタンニン ・高レベルのアルコール度 ・ブレンドに骨格、果実味、色を加える <了>

北ローヌと南ローヌのワインの特徴の違いとは? ~栽培環境の違いから考察~

 北ローヌと南ローヌは、同じローヌ地方に位置しますが、調べてみるとブドウの栽培環境も、造られる主なワインのタイプも異なります。 そこで、栽培環境が造られるワインに与える影響を考察してみました。 栽培エリア まず、栽培エリアですが、北ローヌ、南ローヌは次のように位置しています。 ぱっと見てまず気が付くのはその栽培面積の違いです。 南ローヌの栽培面積は北ローヌの栽培面積の10倍を優に超えるかなりの広さがあります。ブドウ畑はローヌ川を中心としていますが、川からも離れたかなり広範囲に分布しています。 一方で、北ローヌの栽培エリアをよく見てみると、ブドウ畑はローヌ川にごく近いわずかな面積の場所に位置しているのみです。 気候 気候は、北ローヌは「温和な大陸性気候」であるのに対し、南ローヌは「温暖な地中海性気候」です。 北ローヌがより涼しい「温和な大陸性気候」である理由は、北ローヌがより緯度が高い北部の内陸に位置していることが理由です。 温和な大陸性気候の特徴は、暑く短い夏と、寒く厳しい冬です。このような気候ではブドウの成熟のための十分な生育期間を確保できないために、ブドウ畑は少しでも暖かさと日照を確保できる日当たりの良い斜面につくられます。そしてそのようなブドウ畑は、ローヌ川によってつくられる斜面に限られます。これが、北ローヌのブドウ畑の栽培面積が小さく、ローヌ川沿いの狭い地域に密集している理由だと思います。 一方で、南ローヌが「温暖な地中海性気候」である理由は、南ローヌがより緯度が低い南部の地中海近くに位置していることが理由です。 温暖な地中海性気候の特徴は、暑く乾燥した夏と、比較的温和な冬です。このような気候はブドウ栽培に好ましい環境であり、広い範囲で十分にブドウを成熟させることができます。このような気候条件と、作業のしやすい平地の多さも相まって、南ローヌでは広いブドウ畑が確保できるのだと思います。 地形 北ローヌのブドウ畑は、気候の部分で説明をしたように、多くが川の近くの斜面に位置しています。 斜面の畑には暖かさや日照時間というメリットがありますが、それ以外にも、水はけの良さや、ローヌ特有のミストラルと呼ばれる強い北風からブドウ樹を保護するというメリットもあります。 しかしその反面、斜面の畑には機械を持ち込むことができないために、全ての作業を手作業で行わなければならず、人

「Colli」、「Castelli」とは?イタリアのワインラベルを読み解いてみる

 イタリアのワイン名はとにかく長い名前のものが多いと思います。 例えば、「Conegliano Valdobbiadene Prosecco」とか、「Dolcetto di Diano d'Alba」とか。 例外もあるんですが、イタリアのワインが長い理由の1つは「地名」と「品種名(ワイン名)」の両方を含んでいるパターンが多いからだと思います。 例えば、「Dolcetto di Diano d'Alba」では、「Dolcetto = 品種名」で、「Diano d'Alba = 地名」です。 フランスのワインの名前の多くが、地名のみで品種名を省略していることを考えると、少なくともこれだけで2倍の長さをもっていることになります。 さらに、ワインのタイプを表す言葉も名称に含めてしまっていることも、名称を長くしている理由だと思います。 例えば、「Verdicchio di Matelica Riserva」とか、「Soave Classico Superiore」とか。 「Verdicchio di Matelica Riserva」の場合、「Verdicchio=品種」、「Matelica=地名」ですが、「Riserva=ワインのタイプ」です。 また、「Soave Classico Superiore」の場合、「Soave=ワイン名」ですが、「Classico」と「Superiore」は特定のワインのタイプです。 ちなみに、特定のワインのタイプを表す言葉は、いくつかのワインで共通して使われており、次のようなものがあります: ・Riserva = 規定された熟成期間よりも長く熟成されたワイン ・Classico = 古くからあるブドウ畑から造られたワイン(同じ名称の新しい畑から造られたワインと区別をするための用語です) ・Superiore = 通常のアルコール規定を上回るアルコール度のワイン ・Passito = 陰干しブドウから造った甘口ワイン ・Recioto = 陰干しブドウから造った甘口ワイン (ヴェネト州における呼称) ・Amarone = 陰干しブドウから造った辛口ワイン ・Sforzato = 陰干しブドウから造った辛口ワイン(ロンバルディア州における呼称) ・Cerasuolo = ロゼワイン ・Rosso = 赤ワイン ・Bianc

サンジョベーゼ種との比較でモンテプルチアーノ種の特徴を考察してみる

 モンテプルチアーノと言えば、イタリアの赤ワイン用ブドウ品種の中でも栽培面積第2位の品種です。 しかし、何かとサンジョヴェーゼやネッビオーロの陰に隠れて、あまり注目を浴びていないような気がします。 モンテプルチアーノは、個人的には、サンジョベーゼと似たような特徴をもったブドウのような気がしています。 そこで、今回、サンジョヴェーゼと比べることで、モンテプルチアーノという品種とそのワインの特徴を明らかにしたいと思います。 栽培地域と栽培面積 モンテプルチアーノ、サンジョヴェーゼともに、主な栽培地域はイタリアの中部から南部に渡ります。 イタリアの土着品種は、特定の州でしか栽培されていないブドウ品種も多くありますが、両者ともにさまざまな州にまたがって、広く栽培されている品種です。 そのようなこともあり、サンジョベーゼの栽培面積は黒白合わせてイタリアで第1位のブドウであり、モンテプルチアーノ黒ブドウの中では栽培面積第2位のブドウです。つまり、黒ブドウ品種においては、これらのブドウはトップ2の栽培面積を誇っています。 栽培地域をもう少し細かく見ると、サンジョヴェーゼはトスカーナ州を中心として西海岸側、モンテプルチアーノはマルケ州とアブルッツオ州を中心として東海岸側が多い印象です。 どちらの品種にも共通して言えることですが、ある程度の暖かさがないと十分に育たない品種です。ですので、イタリア北部ではほとんど栽培されていないようです。 ちなみにDOC(G)としては、モンテプルチアーノは、次のようなワインが有名です。 ・オフィーダ DOCG (マルケ州) ・コネーロ DOCG(マルケ州)  ・ロッソピチェーノ/ピチェーノ DOC  ・ロッソ・コネーロ DOC  余談ですが、トスカーナにはサンジョヴェーゼから造られる「ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ (Vino Nobile di Montepulciano)」というDOCGワインがあります。これは「Montepulciano」という名前を含むワインですが、モンテプルチアーノ種が使われているわけではありません。「Montepulciano」という名は、トスカーナにある地域の名前からとられています。JSAのソムリエ・ワインエキスパート試験では、ひっかけ問題としていかにも好まれそうです。 栽培における特徴 栽培における特徴として

なぜ、ヴェルデッキオ種のワインがマルケ州で造られるのかを考察

 イタリアのワインはさまざまな土着品種のブドウからワインが造られます。 今回、焦点を当てるのは主にマルケ州で造られる「ヴェルデッキオ」という白ワイン品種です。 このヴェルデッキオというブドウ品種は、晩熟で、成熟しても酸味が保持されるという特徴を持っています。また、カビに弱いという特徴もあるようです。 イタリアの気候をざっくりとまとめてみると、次のように図示することができると思います。 そして、この図で見るとマルケ州は、「暖かい地中海性気候+春から秋に降水が少ない」地域に位置します。 マルケ州は、暖かく雨が少ない気候であるために、晩熟品種を栽培するには、十分な生育期間が確保できると考えられます。 また、雨が少ないことは、カビに弱い特徴を持つこの品種にとって、大きなメリットでもあります。 その反面、雨が少ないと干ばつの可能性も高まりますが、マルケ州の土壌は石灰質と泥の混ざった土壌であり、適度な保水力を保持します。そのため、ブドウに必要な水分は年間を通して供給されます。 さらに、ヴェルデッキオの主要な産地を見てみると、イエージとマテリカという町の近くのアペニン山脈の麓です。マルケ州は海岸のイメージがありますが、内陸に近づくとこのような比較的標高の高い地域が現れます。 このような内陸の標高の高い地域は、大陸性気候の影響を受けて、昼夜の温度差が発生し、ブドウには十分な酸が保持されると考えられます。そのため、このような地形も、強い酸味が特徴的なヴェルディッキオ種に向いた環境なのではないかと思います。( 追記:ヴェルディッキオ種はもともと酸が非常に高い品種であるために、これはあまり関係が無いようです。寒暖差のメリットは、ゆっくりとした熟成により果実味が十分に成熟することにあるようです。 ) (関連記事: なぜ温暖な地域でのブドウ栽培には冷涼効果が好まれるのか?を考察 ) ちなみに、イエージでは「ヴェルディッキオ・ディ・カステッリ・イエージ」、マテリカでは「ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ」というDOCワインが造られています。両ワインともに、一定の熟成規定を満たしたワインは「Riserva」を名乗ることができ、これらのRiservaワインはDOCGワインとなります。 (関連記事: 地図と地名で覚えるマルケ州のDOCG ) ヴェルディッキオワインは、通常、リンゴ、レモン、果樹の花、ハ

オーストリアの主要黒ブドウ品種「ツヴァイゲルト」と「ブラウフレンキッシュ」は何が違うのか?を考察

オーストリアの赤ワインと言えば、その多くが「ツヴァイゲルト(Zweigelt)」と「ブラウフレンキッシュ(Blaufränkisch)」の2品種から造られています。 オーストリアは隣国のドイツと比べると、何かとマイナーな産地のイメージがあるために、個人的にはずっとこの2品種を混同しがちでした。 そこで、今回その違いをまとめてみたいと思います。 産地(オーストリア国内の産地) ツヴァイゲルトは、オーストリア国内のさまざまな産地で広く栽培されています。そのため、国内の栽培面積は第1位です。 一方で、ブラウフレンキッシュの産地は、主にブルゲンランド州に限られます。ブルゲンランドはパンノニア平原の暖かい風の影響を受ける国内でも特に暖かい地域ですが、この品種は一定の暖かさが無いと十分に十分に成熟しないことが、生産地が限られている理由のようです。 歴史 栽培面積の多いツヴァイゲルトの方が意外にも、ブラウフレンキッシュよりも新しい品種です。 ツヴァイゲルトは、ブラウフレンキッシュとサン・ローラン(ザンクト・ラウレント)の交配品種として1992年に登場しました。 そして、その名前はこの交配品種を開発したフリッツ・ツヴァイゲルトの名前に由来します。 一方で、ブラウフレンキッシュは少なくとも1800年代からありました。その名の「Blau」とはドイツ語で「青い」と言う意味なので、「青いフレンキッシュ」という意味です。フレンキッシュと言う名前は、ドイツのワイン産地であるフランケンに由来しているそうです。 つまり、ブラウフレンキッシュから生まれたツヴァイゲルトが広くオーストリアに広まって、より多く栽培される品種となりました。これは、ツヴァイゲルトがブラウフレンキッシュよりも成熟しやすく、ブルゲンラントほどの暖かさが求められないことが大きく関連しているのではないかと思います。 栽培における特徴 ブラウフレンキッシュは、成熟が遅いという特徴があります。そのため、十分に成熟させるためには、ブルゲンランドのような暖かい気候が必要です。また萌芽が早く、春霜にさらされる可能性があります。 一方で、ツヴァイゲルトはブラウフレンキッシュに比べて早く成熟すると言われています。また、霜によるリスクは低いようです。 収量に関しては、両者ともに多くの収量を見込むことができます。しかしその場合、ブラウフレンキッシュは

なぜ、バーデンはドイツ有数のシュペートブルグンダー(ピノノワール)の産地なのか?を考察

 ドイツのバーデンは、高品質なシュペートブルグンダー(=ピノノワール)の産地として有名です。 なぜ、バーデンがシュペートブルグンダーの栽培に向いているのかを考察してみました。 まず、前提として、ドイツはワイン用ブドウの栽培地域として北限に位置しています。気候は冷涼な大陸性気候であり、通常であれば、黒ブドウの栽培には向きません。 しかし、バーデンはドイツの産地の中でもスイスに近い最南端にあります。そのため、ドイツの他の産地に比べて、比較的暖かい気候であると言えます。 さらに、バーデンは西側に位置するヴォージュ山脈によって、風や雨から守られています。これは、国境を挟んで向かいに位置するアルザスの気候特徴と似ています。 このため、バーデンはドイツの中でも最も暖かく、乾燥した、日照時間の長い産地と言われています。 また、バーデンとヴォージュ山脈の間には、ライン川が流れています。ライン川は、春や秋の急激な気温の変化を和らげ、ブドウの育成期間を延ばします。また、シュペートブルグンダーは萌芽が早く春霜に弱いと言われますが、近くに川が流れることで、霜害のリスクも減らされます。 土壌としてはバーデンは、石灰質土壌が多く、水はけがよく、保水性に優れたブドウ畑が広がっています。 シュペートブルグンダーは高品質なワインを造る場合には収量を制限する必要がありますが、このような適度に水が制限された土壌も、シュペートブルグンダーに向いた環境と言えます。 まとめると、 ・ドイツの南端であること ・ヴォージュ山脈により雨風から守られていること ・ライン川により育成期間が延ばされ、また、霜害から守られていること ・石灰質土壌により適度に水が制限されていること が、バーデンをドイツ有数のシュペートブルグンダーの産地にしている要因ではないかと思います。 <了>

土壌を表す英単語「limestone」、「chalk」、「calcareous」の違いを考察

ワインに関する英文を読んでいると、石灰質土壌を表す言葉として、さまざまな言葉が登場します。 特に気になるのが、 ① Limestone = 石灰岩 ② Chalk = チョーク ③ Calcareous soil = 石灰質土壌 の3つです。 いつもこの3つの違いが分からままだったのですが、ここらで少し整理をしてみようとおもいました。 いきなり正解に行き着くのは難しそうなので、少し調べてみて、自分なりの理解をまとめてみようと思います。 まずは、 「① Limestone = 石灰岩」 から。 Limestoneとは、炭酸カルシウム(CaCO3)を50%以上含む堆積岩を指すようです。 次に、 「② Chalk = チョーク」 。 Chalkとは、未固結の石灰岩を指すようです。つまり、Limestoneの一種という位置づけのようです。 最後に、 「③ Calcareous soil」 です。 Calcareousとは、「石灰質の、炭酸カルシウムの」という意味です。なので、「Calcareous soil」とは、「石灰質/炭酸カルシウムの土壌」という意味になります。 炭酸カルシウム(CaCO3)を多く含む土壌は幅広く「Calcareous soil」と呼ぶことができ、①と②の両方を包含することができそうです。③は①と②に比べると、よりその化学的な組成に注目をした言葉であるようです。

サントル・ニヴェルネ地区(ロワール)でシュナンブランが栽培されない理由を考察

 フランスのロワールでは、地域によって主に生産されている白ブドウ品種が異なります。 アンジュ―&ソミュール地区とトゥーレーヌ地区における主要な白ブドウ品種は「シュナンブラン」である一方で、サントル・ニヴェルネ地区では「ソーヴィニヨンブラン」です。 シュナンブランが、アンジュ―&ソミュール地区とトゥーレーヌ地区の広域で栽培されているにもかからわず、なぜサントル・ニヴェルネ地区で一気に生産されなくなるのかを、シュナンブランの特徴をもとに考察してみました。 まず、 シュナンブランの特徴 と言えば... ・萌芽が早く(春の霜にやられやすい)、晩熟(秋の雨にやられやすい) ・樹勢が強い品種である(十分な水と栄養を与えれば高い収量が得られる) ・ボトリティス菌に侵されやすい(甘口ワインの醸造にはボトリティス菌は良い影響を与える) ・うどんこ病や幹の病気にもかかりやすい ・果実の熟し方にばらつきがある(高品質のワインを造るためには、選果をしながら収穫する必要がある) ・酸味が強い ・非芳香族系品種である ・スパークリングワイン、辛口、オフドライ、甘口など様々なスタイルのワインを生産するロワール中流域の主要品種 ・ロワール地方では、青リンゴやレモンのアロマを持つ(鉄っぽさやスモーキーさを伴うこともある) ・南アフリカで最も栽培されている品種(辛口、甘口、貴腐ワイン、スパークリングワイン、酒精強化ワインが生産されている) ・南アフリカでは、熟した黄色いリンゴや桃のアロマに、トロピカルフルーツのニュアンスが感じられる などです。 このうち、栽培における重要な特徴は、「 萌芽が早く 」、「 晩熟」 という部分です。 ロワール中流域の気候 は、ブドウ栽培にとっては涼しい気候ですが、大西洋の影響を受けて年間の寒暖差はやや緩和されています。 また、海洋性の影響を受けますが、ペイナンテ地区ほど春や秋の雨に悩まされることもなく、早霜のリスクもそれほど大きくはないと考えられます(内陸にいくほど大陸性気候の影響を受けることで、冬と春の気温差がはっきりして、萌芽の時期が均一になるため)。 このようにロワール中流域のアンジュー&ソミュール地区とトゥールーヌ地区では、春から秋まで十分な生育期間が確保できるので、シュナンブランのような萌芽が早く晩熟な品種でも十分に栽培できると考えられます。また反対に、ロワール