タイトルの通り、ワインの名称に出てくる 「Côte」 と 「Coteaux」 は非常に紛らわしい言葉です。 両者ともに丘陵地や斜面を表す言葉ですが、「Côte」は 「コート」 、「Coteaux」は 「コトー」 と表記されることが多いようです。 「Côte」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Côtes du Rhône (コート・デュ・ローヌ) ・Côtes de Provence (コート・ド・プロヴァンス) 一方で、 「Coteaux」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Coteaux Champenois (コトー・シャンプノワ) ・Coteaux Bourguignons (コトー・ブルギニヨン) この2つの言葉の違いを調べてみましたが、どうやら 「Côte」 の方が狭い、特定の丘陵地・斜面を表し、 「Coteaux」 は比較的広い地域を表し、複数の丘陵地・斜面を表すことが多いようです。 例えば、 「Côtes du Rhône 」 はローヌ川沿いにある斜面という特定の地域のブドウ畑から造られたワインを示しています。一方で、 「Coteaux Champenois」 は、シャンパーニュ地方にある広範囲の数々の丘陵地から造られたワインを指しているようです。 詳しいことはそこまでよくわかりませんが、 ・「Côte」 → 狭い、特定のエリア ・「Coteaux」 → 広い、包括的なエリア のような使われ方のようです。 ちなみに、プロヴァンス地方のロゼワインのAOCでは、広さにそんなに違いがないにも関わらず「Côte」と「Coteaux」 の名が付くAOCが入り混じっています。 「Côte」と「Coteaux」 のどちらが含まれるのかは、必ずしも広さだけでは決まらないようです。 <了>
シェリーワインの学習において何かと覚えることが多いのは、生物学的熟成を経て作られるタイプの「フィノ」や「マンサニーリャ」。
これらのタイプのシェリーは、フロールと呼ばれる産膜酵母の下で熟成されることが特徴です。
通常の白ワインの製造工程で作られたベースワインは、95%のグレープスピリッツで酒精強化され、オーク樽で熟成されます(通常、バットと呼ばれる660Lのオーク樽で、アメリカンオークで作られるものが多い)。
酒精強化されたワインは15.0~15.5%にするのがポイントで、この範囲でのみワイン表面にフロールが発生するそうです。
フロールの発生はその環境に大きく依存するようで、次のような環境が必要とされています。
・ワインのアルコール度数=15.6~16.0%
・酸素:ワインは樽の85~90%満たし、空気の入るスペースを残す
・貯蔵庫の温度:16-20°C
・貯蔵庫の湿度:65%
このような環境を整えるために、シェリーの貯蔵庫(ボテガス)は特別な構造になっているようです。
例えば、屋内の温度を涼しく一定に保つために、ボテガスの壁は厚く、屋根は高く、屋根の近くには窓があり、床は湿った状態で保たれています。屋根が高いと暖かい空気が逃げやすく、また、窓からは大西洋からの南西の風が入り温度が下げられるようです。
また、湿った床や、大西洋からの風は屋内の湿度を保つのにも一役買っているようです。
最後に、フロールによるワインへの影響ですが、「フィノ」や「マンサニーリャ」が持つ独特な特徴の多くはフロールの影響によって作り出されています。
まず、色は「淡いレモン色」ですが、これは熟成期間中にフロールによりワインが酸素から守られているためにこのような新鮮な色が保たれています。
香りは、フロールがアルコールを消費することによって発生する「アセトアルデヒド」の影響が大きく表れます(フロールはアルコールと酸素を消費し、アセトアルデヒドと二酸化炭素を生成する)。アセトアルデヒドの香りは、リンゴ、干し草、カモミールの香りと言われています。また、味に少し苦みも現れるようです。また、酵母であるフロールの影響で、旨味、ナッツの香りが現れます。
また、フロールは熟成中にアルコールやグリセロールを消費するため、アルコール度は上がらず(15.5%以下)、ボディーは軽くなると言われています。
「フィノ」や「マンサニーリャ」は、ブドウ独自の特徴をあまり持たないパロミノ種から造られますが、フロール下で熟成されることによってこれだけの特徴が加えられるわけです。
そう考えると、とても学び甲斐のあるワインだと思います。
(関連記事:酒精強化ワインの私的な見分け方)