今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...
シェリーワインの学習において何かと覚えることが多いのは、生物学的熟成を経て作られるタイプの「フィノ」や「マンサニーリャ」。
これらのタイプのシェリーは、フロールと呼ばれる産膜酵母の下で熟成されることが特徴です。
通常の白ワインの製造工程で作られたベースワインは、95%のグレープスピリッツで酒精強化され、オーク樽で熟成されます(通常、バットと呼ばれる660Lのオーク樽で、アメリカンオークで作られるものが多い)。
酒精強化されたワインは15.0~15.5%にするのがポイントで、この範囲でのみワイン表面にフロールが発生するそうです。
フロールの発生はその環境に大きく依存するようで、次のような環境が必要とされています。
・ワインのアルコール度数=15.6~16.0%
・酸素:ワインは樽の85~90%満たし、空気の入るスペースを残す
・貯蔵庫の温度:16-20°C
・貯蔵庫の湿度:65%
このような環境を整えるために、シェリーの貯蔵庫(ボテガス)は特別な構造になっているようです。
例えば、屋内の温度を涼しく一定に保つために、ボテガスの壁は厚く、屋根は高く、屋根の近くには窓があり、床は湿った状態で保たれています。屋根が高いと暖かい空気が逃げやすく、また、窓からは大西洋からの南西の風が入り温度が下げられるようです。
また、湿った床や、大西洋からの風は屋内の湿度を保つのにも一役買っているようです。
最後に、フロールによるワインへの影響ですが、「フィノ」や「マンサニーリャ」が持つ独特な特徴の多くはフロールの影響によって作り出されています。
まず、色は「淡いレモン色」ですが、これは熟成期間中にフロールによりワインが酸素から守られているためにこのような新鮮な色が保たれています。
香りは、フロールがアルコールを消費することによって発生する「アセトアルデヒド」の影響が大きく表れます(フロールはアルコールと酸素を消費し、アセトアルデヒドと二酸化炭素を生成する)。アセトアルデヒドの香りは、リンゴ、干し草、カモミールの香りと言われています。また、味に少し苦みも現れるようです。また、酵母であるフロールの影響で、旨味、ナッツの香りが現れます。
また、フロールは熟成中にアルコールやグリセロールを消費するため、アルコール度は上がらず(15.5%以下)、ボディーは軽くなると言われています。
「フィノ」や「マンサニーリャ」は、ブドウ独自の特徴をあまり持たないパロミノ種から造られますが、フロール下で熟成されることによってこれだけの特徴が加えられるわけです。
そう考えると、とても学び甲斐のあるワインだと思います。
(関連記事:酒精強化ワインの私的な見分け方)