果房管理は、赤ワインの製造において、ブドウの果皮などから色素や、風味、タンニンを抽出するための重要な工程です。
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WSET L3では、果帽管理の方法として、パンチングダウン(punching down)、ポンピングオーバー(pumping over)、ラックアンドリターン(rack and return)、回転式発酵槽(rotary fermenters)などが取り上げられていましたが、ずっと疑問だったことがありました。
それは、「それぞれの果帽管理の手法の特徴は?それがどのようなワインに使われるのか?」ということでした。
個人的な意見ですが、WSET L3の試験は醸造オプションを選ばせたり、その特徴を答えさせる問題が出題されそうな気がしており、この部分をテキストでもっと詳しく記述してほしいと思っていました。
今回、この疑問を解消するために、個人的にそれぞれの手法の特徴を調べてみました。個人リサーチなので、もしかしたら間違っている部分もあるかもしれません。
まずは、パンチングダウン(punching down)。フランス語ではピジャージュ(pigeage)という名前でも有名です。この方法は、基本的には、作業員がタンクの上にたまった果帽を櫂と呼ばれる棒で突いてかき混ぜる方法です。最近は機械化も進められているようです。メリットとしては強すぎず、弱すぎず、まずまずの抽出ができる手法のようです。一方で、人手に頼らなければならないのがデメリットのようです。人手=コストなので、基本的には、少量の高額のワインを造る場合に向いている手法のようです。
次は、ポンピングオーバー(pumping over)。フランス語ではルモンタージュ(remontage)という名前で有名です。この方法は、タンクの底の液体を抜いて、上からそれを振りかけることで果帽をかき混ぜる手法です。メリットとしては、激しすぎない、自動化が可能、酸素に多く触れるので還元臭が発生しにくいなどがあるようです。デメリットとしては、とてもやさしい方法なので、他の手法と組み合わせて使わなければならないということがあるようです。この手法は、どんなタイプや価格帯のワインにも使える手法のようです。
ラックアンドリターン(rack and return)。フランス語ではデレスタージュ(delestage)。メリットとしては、果汁を丸々別のタンクに移してしまって、それを再度元のタンクに移すので、とても抽出の効率は良いようです。しかし、自動化できないことや、貴重なタンクをもう1つ用意しなければならないことから、お金がかかることがデメリットのようです。とても抽出度合いが高いので、強めの抽出を要する品種であるシラーやカベルネソーヴィニヨンなどに向いているようです。
最後に、回転式発酵槽(rotary fermenters)。これは、タンクを回転させながら、タンク内のブレードが果帽を壊すので、とても抽出度合いの高い方法のようです。メリットは、抽出度合いが高いことと、自動化ができることのようです。しかしその反面、抽出方法が激しいので、あまり品質の高いワインには向かないようです。また、専用タンクなので設備が高額であることもデメリットのようです。これらの特徴から、大量生産をする低価格帯のワインで、強めの抽出を必要とする品種、シラーやカベルネソーヴィニヨンなどに使われるようです。