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多すぎる!ポルトガルワインの土着品種の覚え方を考える

ポルトガルワインに使われるブドウ品種の特徴は、土着品種の多さです。


地域ごとに異なる種類の土着品種が使われるので、それぞれの品種を覚えるのが大変です。


地域ごとに覚えたいブドウ品種を、黒ブドウ、白ブドウそれぞれについてまとめてみました。



赤ワインに使われるブドウ品種


ポルトガルでは、より多くの赤ワインが造られていますが、まずは赤ワインの製造に使われる黒ブドウから。






ポルトガルには31のDOC(DOPレベル)と、14のVR(PGIレベル)がありますが、すべて細かく覚えていくのが大変なので、まずは5つのDOCに絞ってみました。


ヴィーニョヴェルデDOC、ドウロDOC、バイラーダDOC、ダォンDOC、アレンテージョDOCの5つです。


品種を覚えるための手助けとして、まずは各地域を南北に北部、中部、南部に分けて、東西に沿岸部、内陸部に分けてみました。(青い点線で記しました)


まず、全体的な特徴としては、海風の影響が限定的でより暖かい内陸部では圧倒的に赤ワインの生産量が多いということです。


このような内陸部では、ティンタロリス(テンプラニーリョ)や、トウリガナショナル、トウリガフランサなどが大きな役割を果たしています。


一方で、沿岸部で栽培されているブドウ品種は、より地域によって特徴的です。


ヴィーニョヴェルデ

この地域で生産されるワインの8割以上が白ワインであり、赤ワインが注目されることはそれほどないかもしれません。


ヴィーニョヴェルデで圧倒的に多く栽培されている黒ブドウは、ヴィニャン(Vinhão)です。この品種は、ドウロエリアでも栽培されており、ソウソン(Sousão)という名前で知られています。


この品種の特徴は、

・果皮が厚く、色濃いワインを造る

・高い酸味を持つ

・赤系果実(さくらんぼ)の香りを持つ

などです。



バイラーダ

この地域で最も多く栽培されている黒ブドウは、バガ(Baga)という名の品種です。


ポルトガルワインの多くは複数ブドウ品種のブレンドから造られますが、バガはしばしば単一品種のワインとしても製造されるようです。


バガの特徴は、

・晩熟品種

・高いレベルの酸味とタンニン

・中程度のボディ

・赤系果実の香り(クランベリー、さくらんぼ、赤プラム)

・若いうちは口当たりが良くないが、瓶内熟成で複雑な味わいになる

などです。


バイラーダは海に近く、雨の多い地域ですが、晩熟品種が最も多く栽培されているのは意外な気がします。さらに、バイラーダのワイン生産量の6割以上が赤ワインというのも意外です。


雨が多い地域での晩熟品種の栽培となるために、バガの栽培には、水はけと保水力のバランスのよい石灰粘土土壌が好まれるようです。



さて、ここから内陸部に移りますが、内陸部では沿岸部に比べて気候が温かいために、赤ワインの生産比率が高いことが特徴です。また、このような地域では、晩熟品種から早熟品種まで、様々なブドウ品種を用いたブレンドワインが多く造られていることも特徴です。



ドウロ

海風の影響の限定的で沿岸部よりも温かい気候のドウロでは、ワイン生産の7割近くが赤ワインで、多くの黒ブドウ品種が栽培されています。


その中でも重要なのが、晩熟~やや晩熟品種のトウリガフランカ、トウリガナシオナルの2品種と、早熟品種のティンタロリスとティンタバロッカの2種、そしてソウソンです。ソウソンは先ほどヴィーニョヴェルデで出てきたヴィニャン(Vinhão)と同じブドウ品種です。


トウリガフランカとトウリガナシオナルは、特にワインの主体に用いられることが多いようです。これらは赤系果実と黒系果実の香りに加えて、タンニンや酸味などの骨格もしっかりと持っていることが特徴の品種のようです。特にトウリガナシオナルは、色濃く、高レベルのタンニンや酸味を持ち、花の香りも持ち合わせ、長期熟成可能なワインを造ることもあり、ポルトガル国内で広く栽培されている品種です。


ティンタロリス(テンプラニーリョ)もポルトガルで幅広く栽培されている品種ですが、こちらはワインにボディを与える役割を果たします。


ソウソンは高い酸味を持つことが特徴で、ワインにさわやかな酸味を与える役割として好んで使われているようです。



ダォン

ダォンは内陸に位置するために、ドウロに似た気候を持つ地域です。


山に囲まれた地形ですが、ドウロほどの地形の険しさもないためか、やや海風の影響を受けて、ドウロよりも雨が多く、気温もドウロほど高くはならない地域のようです。


この影響は、ワインのスタイルにも表れて、ドウロワインほど凝縮度は高くなく、それほどフルボディではありませんが、ドウロワインに比べてよりフレッシュさや酸味に特徴のあるワインが造られるようです。


ダォンの赤ワインでは次のような品種が多く使われていますが、トウリガナシオナルとティンタロリスはドウロワインと共通するブドウ品種です。

・トウリガナシオナル

・ティンタロリス

・ジャエン

・アルフロシェイロ


ジャエンやアルフロシェイロは、バイラーダも含めてポルトガル中部でよく栽培される黒ブドウ品種のようです。


両者ともに単一で使われる場合には、早飲みでフルーティなワインを造りますが、ブレンドワインでは、赤系果実の香りを持ちワインに果実の香りや柔らかさを与える品種です。


ちなみに、ジャエンはスペインでは「メンシア(Mencia)」と呼ばれるブドウ品種です。



アレンテージョ

最も南に位置するアレンテージョは、全体的に内陸に位置します。


平野やなだらかな丘が多い地域ですが、北側、南側、東側は山脈に囲まれています。


気候はブドウ栽培に適した地中海性気候で、湿気に弱い品種や、一定の温かさがないと育たないような品種でも栽培が可能であるようです。そのような気候であることもあり、次のような様々な品種が栽培されています。

・アラゴネス(ティンタロリス=テンプラニーリョ)

・アリカンテ・ブーシェ

・トリンカデイラ

・トウリガナシオナル

・シラー


単一品種のワインは例外的で、ほとんどのワインが複数品種のブレンドで造られます。アレンテージョDOCの特徴の1つは、いくつかの国際品種の利用も認められていることです。最も多く栽培されている国際ブドウ品種はシラーです。


ここアレンテージョでも、ティンタロリスやトウリガナシオナルが栽培されており、特にティンタロリスはアレンテージョの主要品種の1つです。ティンタロリスはここでは特に、「アラゴネス(Aragonez)」という名前で呼ばれています。


アリカンテ・ブーシェと、トリンカデイラはこの地域でよく栽培される品種のようです。


トリンカデイラは湿気に弱い品種であるために、アレンテージョの乾燥した気候ではとてもよく育ちます。ブレンドワインに、酸味やタンニン、黒系果実の香りやスパイスの香りを加えます。


アリカンテ・ブーシェは、果皮だけでなく、果肉も赤みを帯びていることが特徴的な品種です。そのため、ブレンドワインに色の濃さを与えます。また、タンニンや酸味のような骨格や、赤系~黒系果実の香りも加えます。





白ワインに使われるブドウ品種


続いては、ポルトガルの主要ワイン産地で使われる白ブドウ品種です。


こちらもまずは5つのDOCのみに絞ってみました。








ヴィーニョ・ヴェルデ

ヴィーニョ・ヴェルデは赤ワインの生産の多いポルトガルの中でも、圧倒的に白ワインの生産量が多い地域です。ヴィーニョ・ヴェルデのワイン生産量の8割は白ワインと言われています。


ポルトガルでは最も北に位置しており、海風の影響を大きく受ける涼しい気候が、黒ブドウよりも白ブドウの生産に向いているのかもしれません。


ヴィーニョ・ヴェルデでは次のような様々な白ブドウ品種が生産されています。

・ロウレイロ

・アルバリーニョ

・ペデルナァ(アリント)

・アヴェッソ

・トラジャドゥーラ


ロウレイロ(Loureiro)は、ヴィーニョヴェルデで最も広く栽培されている白ブドウ品種です。栽培地域は幅広いですが、特に沿岸地域での栽培が多いようです。青系~柑橘系果実の香りと花の香り、やや高い酸味が特徴の品種です。


アリヴァリーニョは、スペインのガリシア州、リアス・バイシャスDOで有名なアルバリーニョと同一の品種です。リアスバイシャスでは圧倒的な栽培面積を誇りますが、ヴィーニョヴェルデでは栽培面積が第2位です。高いレベルの酸味と、柑橘系果実~有核果実~南国系果実の香りが特徴です。ロウレイロよりも熟した果実の香りを持っているようです。


ペデルナァは、別名アリント(Arinto)とも呼ばれる品種で、ヴィーニョヴェルデ以外でも幅広く栽培されている品種ですが、ここでの栽培面積は第3位です。ロウレイロやアリヴァリーニョに比べるとより控えめな香りを持ちますが、高い酸味が特徴の品種です。


アヴェッソは、晩熟型の品種でより気候の温かい南部の内陸地域で多く栽培される品種です。酸味は低めですが、ややフルボディのワインを造ります。


トラジャドゥーラは、酸味が低くい品種であるために、しばしば酸味の高い品種とのブレンドで使われます。リンゴやモモの香りを持つと言われています。




バイラーダ

バイラーダは沿岸に近く比較的涼しい気候なためか、近年、白ワインの生産も注目されている地域のようです。


次のような様々な土着品種が栽培されています。

・マリアゴメス

・ビカル

・アリント

・セルシアル


マリアゴメス(Maria Gomes)はポルトガルで最も栽培面積の多い白ブドウ品種です。ポルトガルの他の地域では、「フェルナン・ピレス(Fernão Pires)」という名前で知られています。柑橘系果実や花の香りを持ち、早めに収穫することで高いレベルの酸味を持つと言われています。早熟品種であることから、バイラーダの雨の多い気候に向いているようです。


ビカル(Bical)はポルトガル中部で多く栽培される白ブドウ品種で、マリアゴメスと同様、早熟な品種です。高い酸味が特徴で、フレッシュな白ワインだけではなく、スパークリングワインの生産にも使われるようです。


アリントは、ポルトガル北部や南部でも栽培されている品種で、ヴィーニョヴェルデでは「ペデルナァ」と呼ばれています(ポルトガルの品種は別名が多くて、本当に混乱します)。高い酸味が特徴で、酸味を加えるためにブレンドワインに使われることが多いようです


セルシアルも、アリントと同様に、酸味が特徴的で、酸味を加えるためにブレンドワインに使われることが多いようです。ポルトガルの酒精強化ワイン「マデイラ」に使われる品種に名前が似ていますが、実は異なる品種です。

(参考記事:ポルトガルの2つの「セルシアル」と呼ばれるブドウ品種)





ドウロ

ドウロは、ポートワインや赤ワインの生産が注目されがちな地域ですが、生産量の25%程度は白ワインの生産です。


フルーティーで早飲みの低価格のワインから、古木のブドウを使った樽熟成を経た高価格帯のワインまで、様々なワインが造られています。様々な品種を用いたブレンドワインが多いようです。


栽培されている主な白ブドウ品種は次の通りです:

・ヴィオジーニョ

・ラビガート

・ゴウヴェイオ

・モスカテル・ガレゴ・ブランコ


各品種の特徴は、「記事:語呂合わせで覚えるドウロ・ワインの白ブドウ品種」で紹介しています。


ドウロは比較的温かい地域なので、白ブドウ品種には向いていないような印象を受けてしまいますが、その多くは標高の高い場所で栽培されているようです。



ダォン

ダォンもドウロのように山に囲まれた温かい地域であるために、赤ワインの製造が8割を超えており、白ワインの製造は限定的です。


この地域の白ブドウ品種としては、「エンクルザード」という名の品種が有名です。多くの白ワインは、エンクルザードを主体としています。


品種ブレンドのワインの場合は、バイラーダで登場したビカルやセルシアル、そして、マルヴァジア・フィナなどの品種が加えられるようです。




アレンテージョ

南部+内陸という暖かい地域のアレンテージョでは、多くの赤ワインブドウ品種が栽培されている一方で、白ワインの生産は限定的です。


しかし、アレンテージョはポルトガルでは最もワインの生産量の多い地域であるために、白ワインの生産量としてはそれほど小さいわけではないかもしれません。


ここでは、ポルトガル全土で栽培されている品種に加えて、南部特有の品種も栽培されています。主な品種は次のようなものです:

・ロウペイロ

・アリント(= ペデルナァ)

・アンタンヴァス


この中でも最も栽培面積の大きい品種は「ロウペイロ(Roupeiro)」です。ヴィーニョヴェルデで栽培されている「ロウレイロ(Loureiro)」に名前が似ているような気がしますが、アルファベットにしてみると、頭文字がRとLで異なります。


ロウペイロは、湿気や腐敗に弱い品種ですが、アレンテージョの温かく乾燥した気候では良く育つようです。


ポルトガル全土に広く栽培されているアリントは、ブレンドワインに酸味を加えるために使われることが多いようです。


アンタン・ヴァス(Antaõ Vaz)は、干ばつに強いため、古くからアレンテージョで広く栽培されている品種です。あまり酸味がないために、ロウペイロやアリントなどの酸味の豊富なブドウとブレンドされることが多いようです。


アレンテージョDOCでは、土着品種に加えて、シャルドネ、ヴィオニエなどの国際品種も許可されています。




<了>

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ワイン用語を学習していると、少し違いの分かりにくい言葉がいくつか登場します。 私が最近疑問に思ったのは、 「アパッシメント(appassimento)」 と 「パッシート(passito)」 。 両者ともイタリアの陰干しブドウで造ったワインに関する用語なのですが、少し違いが分かりにくいと思いました。 結論から言うと、 「アパッシメント(appassimento)」= ブドウの陰干しの 工程/製法 「パッシート(passito)」= 陰干しブドウで造られた ワインスタイル ということのようです。 つまり、 アパッシメントで、パッシートスタイルのワインができる ということです。 こちらのウェブサイト(https://www.winespectator.com/glossary/index/word/appassimento)では、アパッシメント、パッシートが次のように説明されています: ----------------------------------------------- アパッシメント(Appassimento) - 収穫されたブドウを、伝統的に竹の棚や藁のマットの上で、糖分と風味を濃縮するために数週間から数ヶ月間乾燥させることを表すイタリア語。このプロセスは、アマローネ、レシオト、スフォルツァートの製造に使用される。 パッシート(Passito) - イタリア語で文字通り「甘い」と訳されているパッシートは、イタリアでアパシメント法で乾燥ブドウから作られたワインを表すために使用される。ブドウを乾燥させると糖分が濃縮され、このプロセスを使用して、レチョートなどの甘いデザートワインと、アマローネやスフォルツァートなどの辛口赤ワインの両方を作ることができる。 ----------------------------------------------- これだけならばそんなに混乱をする話ではないのですが、厄介なのは時々、 「パッシート製法(passito method)」 という言い回しが使われることです。 この場合、「パッシート(passito)」という言葉が、製法を表す用語としても使われているので注意が必要です。 どうやら、「パッシート(passito)」という言葉は、基本的には「ワインスタイル」を表すものの、時には、「製法」表す言葉としても使われることがあるよ...

lees(=澱) の意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語

「 lees = 澱(おり) 」です。 澱はワインを置いておくと容器の底にたまる沈殿物のことです。 「lees」は複数形ですが、通常、複数形として使われるようです。 澱を構成している物質は、死んだ酵母、死にかけている酵母や細菌、ブドウの断片、沈降したタンニン、栄養分やその他の不溶性物質などです。 澱は通常、 沈殿法(sedimentation) 、 清澄(fining) 、 濾過(filtration) などの方法を使って取り除かれます。 しかし、ワインによっては澱とともに一定期間の熟成を経るものもあります。これは「 澱との熟成(lees aging) 」や「 澱の上の熟成(aging on lees) 」、フランス語に由来する シュル・リー(sur lie) と呼ばれます。 澱との熟成の効果は、ワインにボディを与える、口当たりをまろやかにする、(酸化やたんぱく質による濁りに対して)ワインを安定化させることなどがあげられるそうです。 また、死んだ 酵母の自己分解(yeast autolysis) により放出される化学物質によって、ワインにはパンやビスケット、トーストのような風味が加えられます。 シャンパーニュのように瓶内二次発酵中の澱との接触工程を経た発泡性ワインや、シュールリーを経たミュスカデや甲州の白ワインが、パンやビスケット、トーストのような風味を持つのはこのためです。