ニュージーランドには10にも上るワイン産地があり(サブリージョンを含めるともっと!)、それぞれの地域で栽培されているブドウ品種はそれぞれ異なります。
それぞれの産地について、栽培環境や主要品種を個別に覚えていくのは結構大変な作業です。
そこで、ニュージーランドを大きく3つの気候帯に分けて考えてみると、そこで栽培されているブドウ品種の特徴が見えてくるのではないかと、気候帯と栽培されているブドウ品種の関係を考察してみることにしました。
3つの気候帯の分け方ですが、次の地図の通りです:
北から、
・温和な海洋性気候(ホークスベイなど)
・冷涼な海洋性気候(マールボロなど)
・冷涼な半大陸性気候(セントラルオタゴのみ)
の3つです。
ニュージーランドのほとんどの産地は海の影響を受ける「海洋性気候」です。その中でもより緯度の低い北島はより暖かい「温和な気候」、緯度の高い南島は「冷涼な気候」です。
そして、南島の中でも山に囲まれたユニークな地形を持ったセントラルオタゴは、「冷涼な半大陸性気候」です。
それでは、それぞれの地域で栽培されているブドウ品種を見ていこうと思います。
<温和な海洋性気候の地域>
ここは、ニュージーランドでも最も暖かい気候を持つ地域です。南島に比べて地形の起伏も大きくなく、昼夜の寒暖差もなく、育成期間を通して一定の暖かさが得られるようです。
そのため、晩熟の赤ワイン用ブドウが栽培されていることが特徴です。
例えば、オークランドのカベルネソーヴィニヨンやシラー、ホークスベイのシラー、メルロ、カベルネソーヴィニヨンなどが有名です。
特に、ホークスベイのギンブレット地区はボルドーのような砂利土壌を持ち、水はけがよく暖かい栽培環境が得られるために、メルロを中心に晩熟型のボルドー品種が多く栽培されています。
一方で、白ワインについては比較的、シャルドネが多く栽培されているようです。ギズボーンやホークスベイで多く栽培されています。
ニュージーランドの白ワインと言えばソーヴィニヨンブランですが、この地域にはソーヴィニヨンブランが有名な地域はあまり無いようです(北島のワイラパパはソーヴィニヨンブランが有名ですが、私の分析では次の「冷涼な海洋性気候」に含めています)。もしかしたら、品質の高いソーヴィニヨンブランを育てるためには、少し暖か過ぎで、あまり寒暖差がないことが原因かもしれません。
<冷涼な海洋性気候の地域>
この地域は先ほどの北側の地域と比べると、緯度が高く、より涼しい気候を持っています。
気温が低いことはブドウの十分な成熟にはマイナスですが、この地域の多くは西から来る冷たい風や雨雲の影響から守られているため一定の温かさや日照時間が確保されており、果実の十分な成熟が可能です。
白ワイン用の品種としては、この地域ではソーヴィニヨンブランが多く栽培されています。特に、マールボロはニュージーランドにおけるソーヴィニヨンブランの最大の産地です。その他、ネルソン、カンタベリーでも幅広く栽培されています。
果実の成熟に必要な十分な日照量と、緯度による涼しさがソーヴィニヨンブランの栽培に向いているのだと考えられます。また、内陸の比較的標高の高い畑では、日夜の大きな気温の変化が発生し、香りや風味が十分に成熟し、高い酸味も保たれるため、より高品質なソーヴィニヨンブランが造られます。
赤ワイン用のブドウとしては、この地域ではピノノワールが多く栽培されています。この品種は暑さに弱い早熟型のブドウですが、この地域の涼しい気候がこの品種の栽培を可能にしていると思われます。
ピノノワールは、マールボロ、カンタベリー、ネルソンと幅広い地域で栽培されていますが、特にそれぞれの涼しい地域を中心に栽培されているようです。
<冷涼な半大陸性気候の地域>
この気候を持つ地域は、基本的にはセントラル・オタゴのみです。
サザン・アルプスに囲まれた特有の地形がこのような独自の気候をもたらしています。
セントラル・オタゴは、サザン・アルプスに守られているために、ニュージーランドの他の地域に比べて非常に乾燥しています。マールボロの年間降水量が650mm程度であるのに対して、セントラル・オタゴの年間降水量はわずか360mm程度です。
サザン・アルプスの影響は、偏西風のブロックだけではありません。山々に囲まれたこの地域の標高は他の地域に比べて高くなります。そのため、ブドウ畑には大きな昼夜の温度差が発生します。
また、ニュージーランドでは最も緯度が高い地域であるために、雨の少なさと相まって、ブドウの生育期間には長時間の日照が確保されています。また、南半球特有の紫外線の強さの恩恵も得られます。
まとめると、この地域は次のようなブドウの育成環境で特徴づけられます:
・暖かく乾燥した夏の気候
・強く長い日照
・標高による大きな寒暖差(涼しい夜間の温度)
一定の涼しさを確保しながら、十分な日照による香りやタンニンの成熟か期待できるこの地域では、早熟な黒ブドウであるピノノワールの栽培に適していると言われています。実際、セントラル・オタゴの栽培面積の70%をピノノワールが占めています。
セントラル・オタゴの温かく乾燥し、日照が長く、寒暖差のある気候では、色が濃く香りが強く、酸味の高い、熟したタンニンを持つフルボディのピノノワールが製造されています。
<まとめ>
ニュージーランドにはいくつもの産地がありますが、主に存在するのは上の3つの気候です。
地域ごとに適したブドウ品種は、大きく気候の影響を受けるので、まずは3つの気候と、それぞれの地域で栽培されている主なブドウ品種をおさえておくと、ニュージーランドのワイン産地の全体像をつかむ助けになるのではないかと思います。
<了>