タイトルの通り、ワインの名称に出てくる 「Côte」 と 「Coteaux」 は非常に紛らわしい言葉です。 両者ともに丘陵地や斜面を表す言葉ですが、「Côte」は 「コート」 、「Coteaux」は 「コトー」 と表記されることが多いようです。 「Côte」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Côtes du Rhône (コート・デュ・ローヌ) ・Côtes de Provence (コート・ド・プロヴァンス) 一方で、 「Coteaux」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Coteaux Champenois (コトー・シャンプノワ) ・Coteaux Bourguignons (コトー・ブルギニヨン) この2つの言葉の違いを調べてみましたが、どうやら 「Côte」 の方が狭い、特定の丘陵地・斜面を表し、 「Coteaux」 は比較的広い地域を表し、複数の丘陵地・斜面を表すことが多いようです。 例えば、 「Côtes du Rhône 」 はローヌ川沿いにある斜面という特定の地域のブドウ畑から造られたワインを示しています。一方で、 「Coteaux Champenois」 は、シャンパーニュ地方にある広範囲の数々の丘陵地から造られたワインを指しているようです。 詳しいことはそこまでよくわかりませんが、 ・「Côte」 → 狭い、特定のエリア ・「Coteaux」 → 広い、包括的なエリア のような使われ方のようです。 ちなみに、プロヴァンス地方のロゼワインのAOCでは、広さにそんなに違いがないにも関わらず「Côte」と「Coteaux」 の名が付くAOCが入り混じっています。 「Côte」と「Coteaux」 のどちらが含まれるのかは、必ずしも広さだけでは決まらないようです。 <了>
今回は、シュール・リー工程を経て作られたミュスカデ(ムロン・ド・ブルゴーニュ)の特徴を捉えるためのテイスティング練習をしてみました。
シュール・リー(sur lie)とは、ワイン発酵後に粗い澱を取り除いた後に、しばらくの間、細かい澱とともにワインを熟成させる工程のことです。
この工程を経ることで、ワインにボディが加えられたり、口当たりがまろやかになるというメリットがあるようです。
ミュスカデは、もともと、酸度が高く、軽いボディのワインを造るという特徴をもっていますが、シュール・リーを経ることで、ワインに厚みやまろやかさを加えて、より品質の高いワインにしているのだと、個人的には理解しています。
このようなテイスティング理論を踏まえて、今回は、ミュスカデAOCのワインと、ドライイーストの入ったグラスを並べて、本当に酵母の香りが感じられるのかを試してみました。(上の写真の左と真ん中)
またシュール・リーを経ることで、ワインには澱(主に酵母)に由来する独特な香りが加えられると言われています。それは、ヨーグルト、パン生地、ビスケット、トーストの香りと言われています。
これは、シャンパーニュなどの瓶内二次発酵のスパークリングワインでも顕著に感じられる香りです。しかし、シャンパーニュなどの多くの瓶内二次発酵スパークリングワインに比べて、ミュスカデワインの澱との接触期間は比較的短いために、その香りはあまり強くは感じられないようです。(ロワールのミュスカデAOCでは、ワインは収穫の翌年の、3月1日から11月30日までに瓶詰することになっているので、澱との接触は最長でも1年程度のようです)
(左:ドメーヌ ウ゛ィネ ミュスカデ セーウ゛ル エ メーヌ シュル リー ドメーヌ サン マルタン 375ml)
また、ベンチマーク用のワインとして、低価格なシャルドネワインも並べてみました。本当は低価格なシャブリあたりを用意したかったのですが、今回は自宅にたまたまあったオーストラリアの低価格シャルドネで代用をしました。(最も右のグラス)
<テイスティングの結果>
テイスティングの印象は、次の通りです:
・弱い~やや弱い香り
・香りの種類は、緑系果実(青りんごなど)、草の香り、かすかに酵母の香り(パン生地)
・やや高い~高い酸味
・ライト~ミディアム(-)ボディ
今回用意をしたドライイーストの香りと比べてみると、やはり共通する香りがミュスカデAOCワインからも感じ取られました。ちなみに、トライイーストの香りは、食パンの真ん中の白い部分の香りそのものでした。
ワインからの香りは、はじめに果実の香りや、やや青っぽい香りが感じられ、その後に、セイボリー(旨味)を感じるニュートラルに近い香りが余韻として強く感じられました。この余韻がいわゆる「パンの香り」に当たるのですが、それほど顕著に感じられるわけではなく、「なんとなくパンのような」、「ちょっと穀類のような」香りとして印象に残りました。
個人的には、「シャンパーニュと共通する香りがする!」というのが強い印象でした。
このセイボリー(旨味)を感じる香りは、オーストラリアのシャルドネの発する果実や花の華やかな香りと比べると、非常に特徴的に感じられました。
後味は、樽由来の苦みがあるわけでもなく、非常にすっきりとした味わいでした。それもそのはず、ミュスカデAOCのシュール・リーは、コンクリートタンクで行われることが多いそうです。
<結論>
シュール・リーを経たミュスカデワインを見極めるには、「繊細な香り」、「高い酸味」、「軽めのボディ」、「セイボリーな香り(かすかな酵母の香り)」、「すっきりとした後味」がポイントになるのではないかと思いました。
今回用いたワイン: ドメーヌ ウ゛ィネ ミュスカデ セーウ゛ル エ メーヌ シュル リー ドメーヌ サン マルタン 375ml