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ロゼワインの3つの製法の違いをシンプルにまとめる

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チリのワイン用のブドウ栽培環境のまとめ

 チリのワイン用のブドウ栽培環境をまとめてみたいと思います。


さらには、地域ごとの栽培環境の違いによるワインスタイルの違いにも言及してみたいと思います。


これはあくまでも個人的なまとめなので、もしかしたら誤っている部分があるかもしれません。


まず、地域差はありますが、チリの全体的な栽培環境は次の通りです:




温暖な地中海性気候であるということは、非常にブドウ栽培に適した気候であると言えると思います。ここから、大量生産ワイン用のブドウ栽培が期待できると言えそうです。


また、温暖な気候であるとともに、海や山からの冷涼効果が期待できるということは、低品質の大量生産ワインだけでなく、高品質ワインに向いたブドウの栽培も期待できると言えそうです。



ではここから、主なワイン産地である4つの地域について、栽培環境を見ていきたいと思います。チリには6つのワイン地域がありますが、主要なワイン産地は、コキンボ、アコンカグア、セントラルヴァレー、南部地方の4つのようです。


チリの国土は縦長であり、それぞれの地域によって気候や栽培環境に大きな違いがあります。そして、その違いは生産されるワインのスタイルにも大きな違いを生み出します。


まずは、「コキンボ」からです。


コキンボの栽培環境とワインスタイルの特徴を下にまとめてみました。




コキンボの特徴は、とても険しい山間にあり、厳しい栽培環境にあるということです。


すぐ北にはアタカマ砂漠があるようなとても乾燥した地域で、ブドウ栽培地域としては緯度の低い場所にあります(南緯30°くらい)。


このような厳しい栽培環境においてもブドウ栽培ができるのは、海岸山脈にキャップがあるような谷間であり、そこには海風が吹き込むことで一定の冷涼効果が得られるようです。また地域によっては、アンデス山脈からの冷たい風の冷涼効果も得られます。


また険しい山間にあることから、標高による冷涼効果も得られ、日夜の寒暖の差も得られます。


コキンボで製造されるワインのイメージは、厳しい環境で造られたギュッと凝縮された少量生産のワインです。平野部が少ないことや、都市部からのアクセスが難しいことで、このような利益率の高いワインの生産が向いているようです。



次は、「アコンカグア」です。


アコンカグアはコキンボの南、セントラルヴァレーの北に位置します。


アコンカグアの特徴は、沿岸部からアンデスのふもとまで、東西にワイン産地が広がっているために、気候やワインスタイルのバリエーションに富んでいるということです。


チリで新しく導入された、「コスタ」、「エントレ・コルディリェラス」、「アンデス」の原産地呼称の特徴の違いが最も顕著に表れる地域と言われているようです。

(参考記事:エントレ・コルディリェラス? チリの新しい原産地呼称の覚え方


また、沿岸部には非常に涼しい産地(カサブランカ・ヴァレーやサンアントニオ・ヴァレー)が広がることも特徴の1つです。




アコンカグアでは畑の場所によって様々なタイプのワインが造られているようですが、個人的には、冷涼な地域であるカサブランカヴァレーやサンアントニオヴァレーで造られる、ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ、ピノ・ノワールノイメージが強い産地です。


比較的暖かい首都近郊で、これだけ涼しい産地は貴重なのかもしれません。



次は、「セントラル・ヴァレー」です。


セントラル・ヴァレーは広大で、チリワインの大部分を生産している地域です。


栽培環境は、ブドウ栽培に適しており、温暖で日照環境も良く、灌漑により適度の水分が確保できます。


大量のブドウ栽培に適しているために、フルーティーな低価格の大量生産ワインが多く造られます。


しかし近年では、谷の両端などの冷涼効果のある場所で、より複雑で上質な高価格帯ワインも造られているようです。


生産されている品種は、晩熟の赤ワイン用品種であるカベルネソーヴィニヨン、シラー、カルメネール、メルロなどが圧倒的に多いようです。



最後は、「南部地域」です。




<続く>


    


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地図を使ったヴェネト(Veneto)州の主要なDOCGの暗記法

ヴェネト(Veneto)州にあるDOCGの数は、イタリア全州の中で2番目です。 私がJSAソムリエ・ワインエキスパートで覚えたときは、全部で14のDOCGがありました。 ヴェネト州のDOCGを覚える場合、DOCGからではなく、重要なDOCから覚えていくのがおすすめです。ヴェネトの重要なDOCGは、DOCの名前を含んでいるものが多いので、DOCを覚えることで自然にそのDOCGを覚えてしまいます。また、ブドウ品種についても、DOCの品種を覚えてしまうと、DOCGの品種をわざわざ覚えなくてもよいことが多いです。 (関連記事: 「なぜイタリアのDOC(G)は覚えるのが難しいのか?」の考察 ) ヴェネト州の主要DOCやDOCGは、州の西部の都市であるヴェローナ近くに集中しています。 【ヴェローナ(Verona)近郊】 ヴァルポリチェッラ ヴァルポリチェッラはヴェローナの北西に位置し、この地域で生産されるブドウを使って造られるワインは、 ヴァルポリチェッラ(Valpolicella)DOC とラベル表示ができます。山麓の丘陵地帯には古くからのブドウ畑があり、この畑のブドウから造られたワインは特に、 ヴァルポリチェッラ・クラッシコ(Valpolicella Classico)DOC とラベル表示をすることができます。 主要品種はコルヴィーナ種(Corvina)種でという地域原産の品種です。この品種は、果皮が薄く、色は中程度で、低から中程度のタンニンと、高い酸味を持つのが特徴です。 ヴァルポリチェッラには2種類のパッシート(passito)ワインがあります。パッシート(=アパッシメント)製法とは、まだ酸味が高いうちに早くブドウを摘み、屋内で乾燥させて、糖分と風味を凝縮させる製法です。 アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Amarone della Valpolicella)DOCG は、パッシート製法を用いて造られた辛口またはオフドライのフルボディのワインです。 レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Recioto della Valpolicella)DOCG もパッシート製法を用いて造られたワインですが、これは発酵が止まるほど非常に甘いブドウを使って造られる甘口のワインです。 (関連記事: アパッシメント(appassimento)とパッシート(passito)の違いに関...

クリアンサ、レゼルバ、グランレゼルバとは?スペインワインの熟成規定(最低熟成期間)の私的暗記法

スペインの赤ワインのうち、最良のワインにはほぼ確実にオークを使用した熟成がされていると言われています。白ワインの大半はフレッシュで果実味が豊かなワインと言われていますが、一部のワインではオークを使った熟成が行われ、異なる風味が加えられています。 スペインのワイン法でもワインの熟成表記に関する規定が定められており、最低熟成期間の長さによって、「 クリアンサ(Crianza) 」、「 レゼルバ(Reserva) 」、「 グラン・レゼルバ(Gran Reserva) 」などのカテゴリーが規定されています。 最低熟成期間には、総熟成期間と樽熟成期間があり、総熟成期間は樽熟成期間を含めたトータルの熟成期間を示しています。 いくつかのワイン試験では、この最低熟成期間をワインの種類(赤、白・ロゼ)ごと、カテゴリーごとに覚えなければならないのですが、この数字の羅列を覚えるのはなかなか至難の業です。 そこで、個人的に考えた、このスペインワインの熟成規定の覚え方を紹介したいと思います。 1. 表を年表示にする まずは、数字を覚えやすくするために、表の単位を「月」から「年」に変換します。 まるで囲んだ部分だけ、語呂合わせなどを使って覚えます。 2. 赤ワインの「グラン・レゼルバ」の熟成期間を覚える 赤ワインのグラン・レゼルバの最低熟成期間は、偶然にもクリアンサとレゼルバの最低熟成期間を足し合わせた期間なので、簡単に覚えられます。 3. 白・ロゼワインの「クリアンサ」、「レゼルバ」の最低総熟成期間を覚える 白・ロゼワインにおいて、クリアンサ、レゼルバの最低の総熟成期間は、偶然にも赤ワインの「最低総熟成期間ー最低樽熟成期間」に一致します。これを覚えます。 4. 白・ロゼワインの「グラン・ レゼルバ」の最低総熟成期間を覚える 今までの法則で行くと、「グラン・レゼルバ」の最低の総熟成期間は3.5年が望ましいですが、 実際は4年 です。ここだけ、例外的に 0.5年だけずれる と覚えます。 5. 白・ロゼワインの 最低樽熟成期間を覚える 白・ロゼワインの最低の樽熟成期間は、全て同一の0.5年です。 赤ワインの「クリアンサ」のものと同じと覚えておくと、覚えやすいかもしれません。 最後に、この表を法則とともに覚えておくことで、暗記作業は完了です。 関連記事: スペインの「グラン・レセルバ(Gran Re...

ワインの醸造工程で用いる「容器」に関する英単語

ワインの醸造工程では様々な容器が登場します。用途別に主に次の3つです: ・発酵用 (発酵槽) ・熟成用 (熟成容器) ・最終製品用(ワインボトルなど) WSETレベル3のテキストを読むにあたって、さまざまな英単語が使われていたので、スムーズに読み進められるように、関連する用語で主だったものを一通りまとめてみました。同じものを表す場合でも、異なる英単語が用いられていたのが厄介でした。 WSETでは、目的のワインのタイプによって、どのようなサイズ・材質の発酵槽や熟成容器を用いるのかを理解することが求められていたので、これらの用語は結構重要でした。 ------------------------------------------------------ <容器を表す一般用語> tank タンク vat 大桶、タンク、槽 vessel 容器 container 容器 winery vessel 醸造用容器 inert vessel 不活性の容器 <発酵槽に関する用語> fermenting vat 発酵槽 fermenting vessel 発酵容器 sealed tank 密閉タンク pressurised tank 加圧されたタンク open top fermenter 上に覆いがない発酵槽 open-topped vessel 上に覆いの無い容器 <タンクに関する用語> concrete vessel コンクリートタンク concrete vat コンクリートタンク stainless steel tanks ステンレスタンク stainless steel vessel ステンレスタンク stainless steel vat ステンレスタンク <樽に関する用語> barrel 樽 cas...

パロ・コルタド・シェリーとは?アモンティリャードとオロロソとの製法の違いを調べてみた

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ドイツワインの13の栽培・生産地域の私的暗記方法(語呂合わせ)

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