スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

11月, 2024の投稿を表示しています

最新記事

ドイツワインの品質分類のピラミッドで誤解していたこと

 ドイツワインは、ワイン法によって大きく 4つ に分けられています。 原産地名称保護のある「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」と「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein) 」、地理的表示保護のある「 ラントヴァイン(Landwein) 」、そして、地理的表示のない「 ドイッチャー・ヴァイン(Deutscher Wein) 」の4つです。 図で表すと次のようなピラミッドで表されます。ドイツワインを学ぶ場合、これはおなじみのチャートです。 これは基本的には、 品質分類の順位 を表したものだと思います。つまり、そのワインの 生産における制約の厳しさ を、上から順に並べたものだと思います。 例えば、最上位のプレディカーツヴァインの製造には、ブドウの栽培地、収穫方法、ブドウ中の最低糖度、ラベル表示などに厳しいルールが設けられています。しかし一方で、最下位のドイッチャー・ヴァインにおいてはドイツ国内であれば特にブドウ栽培地の制約はなく、その他についてもそれほど厳しい制約はありません。 そして、このような特徴を持つ品質分類のピラミッドにおいて、私は長らく勘違いをしていました。 それは、 「基準が厳しい=生産量が少ない」という思い込み です。そのため、生産量は階層が下のものの方が多く、上位になるにつれて減っていくと思っていました。 ちょうどピラミッドのチャートが表すように、下位の ドイッチャー・ヴァインやラントヴァインがドイツワインの生産量を下支えしている のだと思い込んでいました。 しかし、実際の生産量は、その思い込みと異なりました。 生産量を考慮すると、ピラミッドは概ね次のような形となります。 ドイツワインの生産量を下支えしていると思われていた「 ドイッチャー・ヴァイン 」と「 ラントヴァイン 」を合わせた生産量は実は全体の4%ほどしかないそうです。 そして、残りの生産の2/3ほどを「 クヴァリテーツヴァイン 」が占めており、残りの1/3ほどが「 プレディカーツヴァイン 」です。 実は、日常的にもっとも多く飲用されているワインは、このチャートが表すように「 クヴァリテーツヴァイン 」なのだとか。 今回の件は、チャートによる視覚的効果によって、事実を誤認してしまう典型的な例の1つだと思いました。 このような品質基準のピラミッドチャート...

ボルドーの右岸、左岸のワインスタイルとは?その違いを考察

 ボルドーワインについて語られるときに、 「右岸(のワイン)」 と 「左岸(のワイン)」 という言葉が用いられます。 「右岸」とは、ジロンド川とその支流のドルドーニュ川の東岸のエリア 、そして、 「左岸」とは、ジロンド川とその支流のガロンヌ川の西岸のエリア を指します。 ワインの世界ではボルドー以外でも「右岸」、「左岸」という言葉が用いられますが、基本的には川の上流を視点に川の右側、左側が決められています。 ちなみに、どちらにも当てはまらないドルドーニュ川とガロンヌ川にはさまれた地域は、「アントル・ドゥー・メール地区」(2つの海の間という意味)と呼ばれています。 「右岸」と「左岸」で異なるワインのスタイル 一般にボルドーの 「右岸」と「左岸」では、そのワインのスタイルが異なる と言われています。ボルドーのワイン生産量のほとんどは赤ワインであるために、右岸のワイン、左岸のワインという言葉が使われるときの多くは赤ワインのことを指しています。 スタイルの違いの主な理由は、それぞれのワインで使われる ブドウ品種の違い にあると言われています。 右岸のワイン で最も多く利用されるブドウ品種は 「メルロ」 であり、それに 「カベルネ・フラン」 などの品種がブレンドされます。 左岸のワイン で比較的多く利用されるブドウ品種は 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 であり、多くの場合それに 「メルロ」 がブレンドされています。 同じボルドーという名の地域にありながら、右岸、左岸で栽培されているブドウ品種が異なる理由は、主に土壌の違いと言われています。 「右岸」の土壌は主に粘土質土壌 です。粘土質土壌は水分を多く含むため、日中の温度が上がりにくいことが特徴です。そのため、果実の成熟に一定の暖かさが必要なカベルネ・ソーヴィニヨンは右岸の粘土質土壌での栽培が難しく、比較的、涼しい環境でも栽培のしやすい メルロ や カベルネ・フラン が多く栽培されています。 一方で、 「左岸」の土壌は砂利や小石を多く含む土壌 であり、排水性が良く、日中の気温が上がりやすいことが特徴です。そのため「左岸」の地域では、栽培に一定の暖かさが必要な カベルネ・ソーヴィニヨン が比較的多く栽培されていると言われています。 「右岸」と「左岸」ではこのようなワインに使われるブドウ品種の違いがあるわけですが、 この違いが...

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使...

素朴なワイン(Rustic Wine)とは?そのワインスタイルを考察

 ワインに関する説明を読んでいると、時々、「素朴な」や「ラスティックな」、「Rustic」と表現されるワインが登場します。 何となく意味が分かるような気がしますが、実はあまりわかっていないような気もするので、このようなタイプのワインのスタイルについて考察をしてみたいと思います。 「素朴なワイン」 の説明でよくあげられている言葉としては次のようなものがあります: ・無骨な ・気取らない ・骨太な ・粗削りな ・ブドウ品種に忠実な ・原料を活かした ・テロワールを表現した また、 「素朴なワイン」の反対のスタイル としては次のようなものがあげられています: ・上品な ・洗練された ・エレガントな ・シルキーな ・樽熟成などの醸造テクニックを前面に押し出した これらの言葉から考察をすると、 「素朴なワイン」とは、醸造技術を前面に押し出さず、ブドウの持つ本来の特徴を表現した、場合により粗さの残るワイン であるようです。 ちなみに、「素朴なワイン」とは文脈によりさまざまなタイプのワインを表すこともあるようですが、 一般的には赤ワインを指すことが多い ようです。その理由は、素朴な(Rustic)という言葉が、 タンニンの性質 を表す言葉として使われることが多いからのようです。 よく「素朴なワイン」として表されるワインは次のような特徴をもっているようです: ・酸味が高め ・しっかりとした舌触りのある粗く乾燥したタンニンを持つ ・野生味のある/乾燥した果実やハーブの風味を持つ ・土のニュアンスを持つ ブドウ品種としては、力強い品種である カベルネソーヴィニヨン や プティ・シラー を使ったワインに対する形容として用いられることがよくあるようです。 <了>

オレンジワインとは?かんたんに、他のワインとの製造工程の違いを比較・考察

 ワインと言えば、白ワイン、赤ワイン、ロゼワインの3つがメジャーなカテゴリーです。 しかし、近年、新たなカテゴリーとして「 オレンジワイン 」が人気を博しています。 オレンジワインとは、恐らくその見た目が命名由来であり、通常、オレンジ色や琥珀色をしています。 では、なぜそのような見た目の特徴が出るのかを、製造工程に焦点を当てて考察してみたいと思います。 オレンジワインの製造工程について まず、オレンジワインは 白ブドウ からできています。 しかし、そのスタイルは 白ワイン とは大きく異なります。そのスタイルの違いは製造工程に由来しており、 オレンジワインは白ブドウを使って赤ワインの製造工程を経て造られている とよく言われます。 白ワインと赤ワインの製造工程の違いを簡単にまとめると次のような図になります。 白ワインと赤ワインの製造工程の大きな違いは、果皮の分離のタイミングであり、白ワインは アルコール発酵前 に果皮が果汁から分離されるのに対して、赤ワインでは果皮は アルコール発酵後 に分離されます。 言い換えると、白ワインは果汁のみでアルコール発酵が行われるのに対して、赤ワインでは果汁が果皮(その他、種子や果肉も含む)を含んだ状態でアルコール発酵がなされます。 これを踏まえて、オレンジワインの製造工程を当てはめてみると、次の図のようにあらわされます。 同じ白ブドウから造られる白ワインと比較をしてみると、果皮の分離のタイミングが アルコール発酵後 であることがわかります。 オレンジワインでは、果汁と果皮が接触している時間が長いために、果皮から溶け出す成分の影響によって、オレンジ色のような色になると言われています。 ちなみに、オレンジワインは別名、 スキンコンタクトワイン とも呼ばれています。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によると、オレンジワイン/アンバーワインは「マセラシオンのある白ワイン」と説明されており、その最低期間は1か月と言われています。 先ほど説明をしたオレンジワインの製造工程では、簡素化のために果皮分離のタイミングをアルコール発酵後としていましたが、OIVの説明によると長期のマセレーションを経ていれば、必ずしも果皮とともにアルコール発酵を行っている必要はなさそうです。 下図の上の流れが、それを表したものです。下の流れは、先ほどの説明のようにアルコー...

ボルドー・シュペリウール(Bordeaux Supérieur)AOCとは?ボルドーAOCとの違いを考察する

ボルドー産のワインを購入してみると、よく見かけるのは「ボルドーAOC(Bordeaux AOC)」のワインです。 (関連記事: 個人的なAOCの簡単ざっくり理解 ~AOCってこういうこと? ) そしてボルドーAOCと同様に、「Bordeaux Supérieur」と書かれたワインもよく目にします。これは、原産地呼称が「ボルドー・シュペリウール(Bordeaux Supérieur)AOC」のワインです。(※Supérieurは、シューペリュールとも表記されます) 例えば、成城石井で長年人気の赤ワインである「CH ラ ヴェリエール ルージュ」は「Bordeaux Supérieur AOC」のワインです。 →  https://amzn.to/40Uz4aU (こちらのAmazonサイトで購入可能です) ふと思い立って、ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールAOCの2つのワインにどんな違いがあるのかを調べて考察してみました。 ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールの共通点 まずは、この2つのワインの共通点から調べてみました。主な共通点は次の通りです: ・ボルドーの全ワイン生産地域で製造可能なワインである(ジェネリックAOCワイン) ・品質レベルはそこそこで、ボルドーの特定地域の名称がラベルに書かれたワインほど品質が高くない ・価格は低価格~中価格程度である ・両者ともに赤と白のスティルワインがあり、赤はメルロ、白はソーヴィニヨン・ブラン主体のワインである ・ワインのスタイルは主にミディアムボディ程度である ボルドーAOCとボルドー・シュペリウールAOCのワインは、ボルドーで最も生産量の多いワインであり、ボルドーで生産されるワインの約半分を占めるそうです。 ボルドーAOCとボルドー・シュペリウール の相違点 では、今度はこれらのワインの違いをまとめてみようと思います。それぞれの違いは次の通りです: ・ボルドー・シュペリウールAOCの 赤ワイン は、その名の通りボルドーAOCよりも若干品質が高い(supérieurとは、上位の、上質のという意味です) ・ボルドー・シュペリウールAOCの 白ワイン は、基本的に甘口で、ボルドーAOCとはスタイルが異なる(ただし、赤ワインに比べると製造量はずっと少ない) ・ボルドー・シュペリウールAOCの ロゼワイン はない ・...

ワインの味とは?ワインの味を感じ取るテイスティング方法を考察

ワインを評価する場合、多くの場合「外観」、「香り」、「味覚」の3つの要素が用いられます。 (関連記事: SAT式ワインの英語テイスティングコメント(英語表現) ) どれも重要な要素ですが、今回はワインのおいしさや飲みやすさに直結をする「味覚」に焦点を当てて、味覚に関するさまざまな要素をどのように感じ取ることができるのかを考察してみたいと思います。 まず、ワインの味覚を構成する要素としては次のようなものがあります: ・甘味 ・酸味 ・タンニン(主に赤ワイン) ・アルコール ・ボディ ・風味のタイプや強さ 甘味 甘味はワインに含まれている糖分によって感じ取られる要素です。糖分が含まれていない/非常に少ないワインは「辛口」で、糖分を豊富に含んで甘味が顕著な特徴となっているワインが「甘口」です。 この定義は当たり前のように感じられますが、実は非常に重要です。 なぜなら「甘味」を評価する場合、「糖分由来の甘い味わい」と「甘い香り」をしっかりと区別しなければならないからです。 例えば、綿あめのような甘い香りを持つマスカット・ベーリーAの辛口ワインの試飲をしてみるとその香りの影響によって一瞬、甘味のあるワインのように感じられてしまうことがよくあります。しかし、よくよく味わってみると、口の中では糖分由来の甘味を感じることはできません。 この「味覚」と「香り」の区別は、テイスティングの練習を重ねることが徐々に精度を上げることができますが、もしかしたら最初のうちは混同してしまうかもしれません。 多くの人にとって、甘味は舌先で最も強く感知されると言われているので、テイスティングの際にはこの部分に注意をしてみるのが良いかもしれません。 補足となりますが、ワインが感知のできる少量の糖分を含んでいる場合、ワインは「オフドライ」と言われます。「BRUT」と書かれているスパークリングワインの多くは泡の影響もあってあまり糖分を感じることができないかもしれませんが、実は「オフドライ」であることがほとんどです。 (関連記事: off-dry(オフドライ)ワインとは? | 英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) 酸味 ワインに含まれる主な酸は、酒石酸、リンゴ酸、乳酸です。そのため、酸味はこれらを多く含む食品であるブドウやレモン、その他の果物、ヨーグルトなどを口に含んだ時に感じられる「酸っぱさ」として感じられま...

ボルドーのブドウ栽培の特徴を考察

 ボルドーのワイン用ブドウの栽培の特徴をまとめると次の4点になるのではないかと思います: ① 高い栽培密度 ② キャノピーマネジメント ③ 収穫量のコントロール ④ 手作業による収穫 ① 高い栽培密度 ボルドーのブドウ畑では、しばしばブドウ木が高い密度で植えられます。 これは特に、高い品質のワインを造る生産者の畑で顕著な特徴です。 このような高密度での栽培がおこなわれる理由の1つは、ボルドーのブドウ畑の土地の価格の高さです。限られた財源で得られた、限られた広さの土地で、いかに効率的にブドウ栽培を行うかということが、ボルドーでのブドウ栽培の重要なテーマの1つになるのではないかと思います。 このような高密度での栽培ができる理由にはボルドーの気候の影響も考えられます。高密度でのブドウ木の栽培には水不足のリスクを伴いますが、比較的雨の多い海洋性のボルドーの気候では、このようなリスクを抱えることはあまりないのではないかと思います。 ボルドーの温和で湿気のある気候では、ブドウの実に十分に栄養をいきわたらせるためにブドウ木の樹勢を抑制することが重要となりますが、高密度で栽培されたブドウ木では自然に樹勢が抑制されます。この点も、高密度でのブドウ栽培がボルドーの気候に合っている1つの理由なのではないかと思います。 一方で、高密度での栽培には、棚付のためのより多くの支柱や針金を用意したり、専用のトラクターを準備する必要があったり、仕立や耕作、スプレーなどにより多くの手間がかかるなど余分なコストがかかることになります。しかし、これらのコストを差し引いても、ボルドーでは高密度で栽培をするメリットの方が大きいのだと思います。 ② キャノピーマネジメント 先ほども触れましたが、ボルドーの気候は温和な湿気のある気候のために、質の高いブドウを栽培するためには樹勢をコントロールすることが重要です。 (参考記事: ブドウの収穫量と果実の品質の関係を考察 ) (参考記事: canopy management(=キャノピー・マネジメント)の意味|英語ワイン書籍に出てくる英単語 ) キャノピーマネジメントには、枝葉の伐採などが含まれ、次のような効果があると言われています: ・ブドウ木の通気性の改善 ・果実の腐敗の防止 ・果実への日当たりの改善 ・収量の調整 ・果実への栄養の配分 ボルドーの雨や湿気の...