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10月, 2022の投稿を表示しています

最新記事

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

ギリシャワインの地理的地方区分に関する疑問と考察

 各国のワインを学習していると、ワイン産地の地理的な区分が、国が行政を行う上での行政区画と一致しない場合があります。 ギリシャもそのうちの1つです。 ギリシャの行政区画は、最も大きな区画で、13の「ペリフェリア(=地方)」に分かれています。 そして、このペリフェリアの下に、県にあたるペリフェリアキ・エノティタ(74)と、市にあたるディモス(325)が区画されています。 しかし、ワイン産地における地理的区分は若干異なり、9つの地方に分かれています。 ここで使われる「地方」は「ディアメリスマタ」と呼ばれていますが、日本語では「ペリフェリア」と「ディアメリスマタ」のどちらも「地方」と翻訳されているようです。 なぜ、行政とワイン産地で地理的な区画が異なるのかが疑問でしたが、調べてみた結果、なんとなく理由が分かりました。 それは、ギリシャでは比較的最近(2010年)に「カリクラティス改革」と呼ばれる大規模な地方制度改革が行われ、新たな行政区画が2011年1月1日付で導入されたからです。 この新たな行政区画が、「ペリフェリア」を用いた13の地方の行政区画です。 最近導入された区画であるため、ワイン産地としては、昔から用いられていた9の地方の地理的区分も用いているようです。 細かい話ですが、このようなことを学んでいくのもワイン学習の楽しみの1つだと思います。 <了>

アントル・ドゥー・メール(Entre-Deux-Mers)のワインとは?

 アントル・ドゥー・メール(Entre-Deux-Mers)AOCは、ボルドーのドルドーニュ川とガロンに川に挟まれた広大な面積のAOCです。 フランス語で「Entre Deux Mers」とは、「Between Two Seas」という意味なので、直訳では「2つの海の間」という意味です。 しかし、一説によると、この地域の名前は、フランス語の「mer」(海)ではなく、「marée」(潮)に由来してしており、潮の満ち引きが激しい2つの川に挟まれていることにちなんでいるとも言われています。 この広大な地域では、赤白どちらのワインも製造させていますが、「アントル・ドゥー・メール AOC」の名称で販売できるワインは白ワインのみです。 生産地域が広いので、赤白両方のワインが含まれている印象があるので、ちょっと見落としがちなポイントかもしれません。 ちなみに、ここで造られた赤ワインは、ボルドーAOC、もしくは、ボルドー・シュペリュールAOCとして販売されます。 アントル・ドゥー・メール AOCのワインの特徴は、辛口の白ワインです。許可されている残糖量は4g/ℓです。 品種は、「ソーヴィニヨン・ブラン」、「セミヨン」、「ミュスカデル」の3種の品種のブレンドです。 ワインのスタイルは基本的には早飲みで、フルーティーなスタイルで作られます。 価格も手ごろで、低価格から中程度の価格と言われています。 ガロンヌ川を挟んで対岸のペサックレオニャンで造られる高品質で、長期熟成スタイルの白ワインとは対照的です。 今回は、有名なAOCの中に埋もれて少し忘れがちになってしまう、ボルドーのAOCについてまとめてみました。 <了>

アロマティックな白ブドウ品種の特徴の違いは?(リースリング、ピノグリ、ゲヴュルツトラミネール、トロンテスの比較テイスティング)

 今回のテーマは、独特な香りを持つアロマティック品種から造られた白ワインとして、次の4つの品種のワインを集めてみました。 ワイン①:リースリング(AOCアルザス) ワイン②:ピノグリ(AOCアルザス・グランクリュ) ワイン③:ゲヴュルツトラミネール(AOCアルザス・グランクリュ) ワイン④:トロンテス(アルゼンチン) 具体的なワイン名は次の通りです: ワイン①:Riesling Tradition Charles Sparr 2017 → https://amzn.to/40WFuGO (Amazonのサイトへ) ワイン②:Alsace Grand Cru Pinot Gris Rangen 2003 Chateau d'Orschwihr 2003 →  https://amzn.to/3YYvHxb (Amazonのサイトへ) ワイン③:Paul Ginglinger Alsace Grand Cru Gewurtztraminer Pfersigberg 2018 →  https://amzn.to/3OhcZMl (Amazonのサイトへ) ワイン④:Cuma Organic Torrontes Bodega El Esteco 2020 →  https://amzn.to/4hUluul (Amazonのサイトへ) 外観の比較 まずは外観の比較から。 アルザスのワインは比較的、色が濃く表れていますが、これは品種による違いというよりは、ヴィンテージによる影響が大きいと思います。 香りの比較 次は香りの比較です。 リースリングとピノグリに比べると、ゲウェルツトラミネールと、トロンテスの香りは非常に強く感じられます。 また、それぞれのワインから感じられる特徴的な香りをまとめると、 ・リースリング → 甘やかな花の香り ・ピノグリ → モモのコンポートやハチミツ ・ゲヴ ュ ルツトラミネール → バラ、ライチ、非常に華やかな花の香り(芳香剤のよう) ・トロンテス → ブドウ(マスカット)の香り、火打石のようなスモーキーな香り このようになりました。 トロンテスの火打石のようなスーッとした香りは、どこから来るものなのかは分かりませんでしたが、樽熟成をほとんど行っていないことを考えると、ブドウ由来の香りであると思われました。 【補足】Decanter

ワインから感じられるバナナの香りとは?

特定のワインはバナナの香りを持っていると言われます。 例えば、マセラシオン・カルボニック製法で造られたボージョレワイン、南アフリカのピノタージュ、スペインのガリシア地方で造られるアルバリーニョなどが該当します。 バナナの香りの元となる化学物質は酢酸イソアミル(isoamyl acetate)と呼ばれるエステルです。この物質は、マセラシオン・カルボニックの副産物として、または、通常のアルコール発酵において酵母から発生すると言われています。酢酸イソアミルの香りは、洋ナシや風船ガムの香りとも形容されます。 (関連記事: 【ワインの表現用語】Pear(洋ナシ)、Pear drop(洋ナシ香味のキャンディー)の香りとは? ) 酢酸イソアミルに代表されるワイン中のエステルは、特に低温(例えば15°C前後)で発酵された場合に多く発生すると言われています。 エステルは、ワインにフレッシュでフルーティなアロをもたらすために、若いスタイルのワイン、特に白ワインには欠かせないと言われています。 そのため、多くの白ワインでは赤ワインよりも低い発酵温度が好まれるとも言われます。 反対に、白ワインの中でもフレッシュでフルーティーな香りが好まれないワインでは、やや高めの発酵温度(例えば、17~25°Cなど)で発酵を行い、エステルの生成が抑制されます。

MOGの意味 | 英語ワイン書籍に出てくる英単語

 MOGとは、"Material Other than Grapes"の略、つまり、「ブドウ以外のもの」です。 収穫時にブドウと一緒に意図せず収穫されてしまう葉や土、茎、枝、石、棒、ワイヤー、虫などを指します。 収穫作業が機械収穫であろうと、手摘みであろうと、一定量のMOGが含まれてしまうと言われています。 MOGはワイン醸造においてはネガティブなものと捉えられており、圧搾・発酵前に果実の選別作業をあまり行わないような大量生産ワインにおいても、通常MOGの除去は行われます。 MOGの悪影響としては、例えば茎が多く含まれると、ワイン中のメトキシピラジンの濃度が増加してワインは青い野菜のような風味を持つと言われています。また、渋み、色の濃さ、酸味も強調されてしまうようです。 また、あまり考えたくはありませんが、虫による影響として不快なアロマがもたらされるという調査結果もあるようです。 テクノロジーの活用などにより、収穫時に含まれるMOGの割合を減らす取り組みもなされています。

WSET試験で重要な白ワイン製造における醸造オプションのまとめ

 WSET試験では、ワイン製造における醸造オプション(醸造手法の選択肢)がよく出題されます。 醸造オプション問題への対策としては、スタンダードな醸造工程を把握して、各工程における検討要素(醸造オプション)を一覧にまとめておくのが良いのではないかと考えています。 白ワイン製造のプロセスは、大まかには次のような流れだと思います。 そして、これをベースに細かい工程と、それぞれの工程における検討要素をまとめてみると次のような表になります。 こんな形でまとめておくと、特定のワインの醸造オプションを考える時に、抜け漏れなく各工程における醸造オプションを検討することができるのではないかと思います。 これとは別に、その醸造オプションを用いる理由や、そのオプションがワインのスタイル・品質・価格に与える影響を把握しておく必要がありますが、このような一覧にはまとまりきらないので、別途まとめておく必要がありそうです。 <了>

「ジンファンデル」と「テンプラニーリョ」の違いをしらべる!比較テイスティング

 今回は、ジンファンデルとテンプラニーリョの品種比較テイスティングをしてみたいと思います。 なぜこの2つを選んだかというと、どちらも赤系~黒系果実の香りを持ち、ミドル~フルボディのワインを造り、オーク樽との相性が良いという共通点を持っているからです。 今まであまり比較をする機会が無かったので、どのような違いがあるのかを調べてみたいと思います。 今回用意をしたワインは次の通り: ----------------- ①ジンファンデル / ドライ・クリーク・ヴァレー(ソノマ、カリフォルニア) ・ワイン名:Dry Creek Valley Zinfandel Dashe 2017 ②テンプラニーリョ / リオハ(スペイン)ー 伝統的スタイル(アメリカンオーク+フレンチオーク利用で、新樽比率高め) ・ワイン名:Dominio de Ugarte Reserva 2013 ③テンプラニーリョ/ リオハ(スペイン)ー モダンスタイル(フレンチオーク利用で、新樽比率は低め) ・ワイン名:Remelluri Lindes de Remelluri Viñedos de Labastida 2014 ----------------- リオハのテンプラニーリョは、念のために異なる2つのスタイルのものを用意しました。結果としては、ワイン②(伝統的スタイル)の樽香が強すぎて、ワイン①(ジンファンデル)との比較にならなかったので、ワイン③(モダンスタイル)も用意をしておいて正解でした。 外観の比較 まずは外観ですが、どれも濃いルビー色で、それほど大きな違いは見られません。 外観での判別は難しいと思います。 香りの比較 次に香りの比較ですが、用意したジンファンデル(ワイン①)は、よりモダンスタイルのリオハ(ワイン③)に近い香りを持っていました。 反対に、ワイン②はヴァニラの甘い香りが特徴的で、ワイン①とワイン③とは少し香りの質が異なります。 これは、ワイン①、ワイン③ともに、それほど新樽比率の高くないフレンチオークで熟成をしているためだと思います。 香りの近いワイン①(ジンファンデル)とワイン③(テンプラニーリョ)を比べると、ワイン①はより成熟度の高いジャムのようなレーズンのような果実の香りを持っていることが特徴的でした。 また、ワイン①(ジンファンデル)は成熟度の高いジャムのような香りを持つ

どれもパワフル!似ている3種の赤ワインの比較 ~ドウロ品種、シラーズ、マルベック~

 今回は、個人的に特徴が似ていると思う3種類のワインの比較をしてみたいと思います。 ワイン①: ドウロ・ルージュ ・ブドウ品種:ティンタ・ロリス、ティンタ・バロッカ、トウリガ・フランカ、トウリガ・ナシオナル ・ワイン名: Quinta dos Avidagos Douro Tinto Reserva 2016 ワイン②:バロッサ・ヴァレー・シラーズ ・ブドウ品種:シラーズ ・ワイン名: Barossa Valley Shiraz Powell & Son 2017 ワイン③:メンドーサ (ルハン・デ・クージョGI)・マルベック ・ブドウ品種:マルベック ・ワイン名: Alpamanta Estate Malbec Alpamanta Estate Wines 2011 3ついずれもパワフル&スパイシーで、果実味としっかりとした骨格を持つワインです。 外観の比較 まず外観は、次の写真の通りです。 どれも最も濃い部類のルビー色で、見た目にそれほど違いはありません。 ドウロとバロッサシラーズがやや紫がかっているように感じられますが、これは2つがマルベックに比べて若いワインであるためで、品種による違いではないと思います。 香りの比較 香りの比較については、どれも熟した黒系果実とスパイシーな香りという、かなり似通った特徴を持っていました。 しかし、若干ながら、それぞれのワインに香りの違いもありました。 まず、ドウロは3つの中で最も控えめなタイプの香りを持ち、香りが最も閉じこもっている印象を持ちました。華やかさの少ないスパイスであるクローヴで形容されるような香りが近いのではないかと思いました。 バロッサヴァレーの香りの特徴は、少し鼻にスーッと感じられるような、コショウを思わせる香りを持つことでした。また、3つの中ではヴァニラやコーヒーで形容される樽香が最も顕著に感じられるワインでもありました。 メンドーサのマルベックは、3つの中では最も果実感が感じられるワインであり、黒系果実に加えて、乾燥プルーンで形容されるような香りを持っていることが特徴だと思いました。また、リコリスのような甘さが感じられることも特徴的でした。 味わいの比較 最後に味わいについての比較です。 どのワインもフルボディでしっかりした骨格を持っているという点は共通する特徴であり、品種による特徴を見つけるのは