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3月, 2021の投稿を表示しています

最新記事

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

シャンパーニュでMLFの香り(乳製品やバターの香り)が感じられないのはなぜ?

MLFと言えば、マロラクティック発酵。 ブドウ中のリンゴ酸が乳酸になる発酵です。 MLFの大きな特徴と言えば、ワインにバターなどの乳製品の香りが加えられることです。 (関連記事: マロラクティック発酵(MLF)の効用 ) マコンやカリフォルニアのシャルドネからは、このMLFに起因する乳製品の香りが強く感じられます。 そう考えると、スパークリングワインの中にも、このバターや乳製品の香りが感じられるものがありそうです。 しかし、これまでシャンパーニュを含め、様々なスパークリングワインを味わってきましたが、はっきりとしたMLF由来の香りが感じられるものはありませんでした。 なので、私は多くのスパークリングワインはMLFをしないものとばかり思っていました。 ずっとそう思い続けてワインの勉強を続けてきたのですが、最近分かったことは、どうやらMLFを行うことはスパークリングワインにおいては決して珍しいことではないということです。 特に寒い地域のブドウを使う場合は、高すぎる酸味を抑えるためにMLFを行うのだそうです。(乳酸はリンゴ酸よりも酸味が低いため) ここで1つ疑問が残ります。それは、「 なぜ、MLF特有の乳製品の香りがはっきり分かるスパークリングワインが見つからないのか? 」です。 これの疑問に対しては1つヒントが見つかりました。それは、「 乳製品の香りの由来となるダイアセチル(diacetyl)という物質はスパークリングワインの2次発酵において、酵母によって代謝されてしまう 」ということです。 つまり、乳製品の香りの由来となる物質がなくなってしまうので、その香りも消えてしまうということです。 スパークリングワインの主な製造方法のうち、 伝統的製法(シャンパーニュ製法) 、 トランスファー方式 、 タンク方式 、いずれも2次発酵を含むので、ダイアセチルの酵母による代謝が原因だとすると、たしかに合点がいきます。 一方で、2次発酵を 炭酸ガス注入法式 は理論的にはMLF香を含むスパークリングワインが見つかるはずですが、そもそもこの方式はMLFと相性の悪いアロマティック品種のスパークリングワインに多く使われる方法なので、そもそもMLF工程は抑制されていそうです。つまり、この製造方式の場合も、MLF香のあるスパークリングワインは見つからなさそうです。 こう考えると、MLFに由来する

シャンパーニュのサブリージョンとグランクリュ村の覚え方【語呂合わせ】

 シャンパーニュには5つのサブリージョンがあります。 そのうち、重要とされる「 モンターニュ・ド・ランス( Montagne de Reims ) 」、「 ヴァレ・ド・ラ・マルヌ( Vallée de la Marne ) 」、「 コート・デ・ブラン( Côte des Blancs ) 」の3つについてまとめてみました。 (※「 コート・ド・セザンヌ( Côte de Sézanne ) 」と「 コート・デ・バール( Côte des Bar ) 」についても追記をしました。) (関連記事: シャンパーニュ地方は、なぜ発泡性ワインの生産に向いているのか? ) まず、シャンパーニュ地方はパリの北東に位置しています。 そして、有名な3つのサブリージョンは、ランス(Reims)とエペルネ(Epernay)の近く下の図のように広がっています。 そして3つのサブリージョンの特徴をまとめてみました。 Googleマップ上に位置を表してみると、地形的な特徴の違いがよく分かります。 3つの地域では、それぞれ主に栽培されているブドウ品種に違いがあります。主要な栽培品種は次の通りです: モンターニュ・ド・ランス → ピノ・ノワール ヴァレ・ド・ラ・マルヌ  →  ムニエ コート・デ・ブラン  →  シャルドネ ムニエは、マルヌ川に沿った谷にあるのですが、谷であるために、霜の影響があったり、土壌が粘土で、ピノ・ノワールやシャルドネの栽培に向かないようです。そのため、霜に強く、粘土土壌でも成熟するムニエ種が栽培されています。 なぜ、「モンターニュ・ド・ランス=ピノ・ノワール」、「コード・デ・ブラン=シャルドネ」なのかは分かりませんが、ブラン(=白)で白品種のシャルドネが造られているのは覚えやすいです。両者ともに土壌は、チョーク質土壌であるようです。 サブリージョンの地形と、グランクリュ村の位置関係 モンターニュ・ド・ランス モンターニュ・ド・ランス には 「マイィ( Mailly )」 、 「ヴェルゼネ( Verzenay )」 、 「ヴェルジー( Verzy )」 、 「アンボネ( Ambonnay )」 、 「ブジー( Bouzy )」 などのグラン・クリュに格付けされている村があります。この地域では、これらを含め、9つの村がグラン・クリュに格付けされています。 そのうち主要な5つの

自宅練習用のワインはどう選ぶ? ~リースリング・ワインの選び方に関する考察~

 ワイン試験に取り組むにあたって、テイスティングの自宅練習は大きなアドバンテージとなると思います。 しかし、自宅練習に取り組むにあたって、大きな壁となるのが、「ワインの選定」と「費用」の問題だと思います。 これは言い換えると、 いかに費用をかけずに試験の役に立ちそうなワインを選ぶか? ということになると思います。 私が初めてのワイン試験(ワインエキスパート)に取り組んだときに、本当にこれに苦労させられました。 例えば、リースリングワインを探そうと思っても、ワインショップに行くと、様々な産地や価格帯のリースリングワインが並んでいて、自宅練習用に一体どのワインを選んだらいいのか全く見当がつかない状態でした。 当時通っていたワインスクールの講師に相談をすると、「インターネットを検索して、試験対策として紹介されている銘柄を選んだらいいですよ」と言われましたが、紹介されている銘柄と全く同じワインが手に入らなかったり、どのウェブサイトを参考したらよいのかわからなかったりで、あまり参考にはなりませんでした。 あれから数年、少しは自分でワイン選定ができるようになった今当時を振り返ると、自分でワインの選定をするには圧倒的に ワインに関する知識が足りなかった のだと思います。 それを反省して、今だったらこうするという、自宅練習用のワイン選定の方法を簡単にまとめてみようと思います。まずは、白ワインの試験頻出品種の1つである 「リースリング」 についてです。想定する試験は、JSAソムリエ・ワインエキスパート2次試験です。 JSAソムリエ・ワインエキスパート2次試験において重要なことは、 ① 品種特徴を捉える ② 主な産地特徴を捉える の2点だと思います。 ワインの選定方針としては、メジャー産地のリースリングワインを用意することで、①および②のための練習ができると思います。 リースリングのメジャー産地と言えば、アルザス(フランス)、ドイツ、オーストラリアです。実際に、JSAソムリエ・ワインエキスパートの過去問を見ても、リースリングワインの産地はこの3地域に限られます。 アルザスのリースリング ワインの選定 アルザスのリースリングワインの選定は、基本的に「アルザスAOC」の最近の収穫年(直近2年くらい)のワインを選んでおけば、あまり銘柄にこだわる必要はないと思います(あくまでも個人的な意見です

フラッシュ・デタント (Flash détente)とは?の備忘録

備忘として、以前に調べた「 フラッシュ・デタント (Flash détente) 」の特徴をまとめます。 フラッシュ・デタントとは? ・発酵前の抽出の方法の1つ ・除梗したブドウを素早くに熱し(85-90°C)、真空下で素早く冷やすことで(約2分)、マセラシオンによる色素や風味成分の抽出を高める ・(発酵前抽出なので、タンニンの抽出は目的としていない) 効果(メリット) ・色素と香りを素早く抽出できる ・ワインの果実味を強められる ・貴腐化したブドウの酸化を抑えられる(高温により酸化酵素のラッカーゼが変性する) ・煙に汚染されたブドウから造られるワインが持つ独特の香りを減らすことができる デメリット ・色が定着しにくい(なので長期熟成のワインには向かない) ・真空装置を購入するのに大きな費用がかかる ・熱する時間が長いとフレッシュな香りが失われてしまうリスクがある(「調理した」果実の香りになる) 似た手法として 「サーモヴィニフィケーション(thermovinification)」 がありますが、こちらは真空状態は利用せずに、50~60℃程度の温度でより緩やかに抽出を行うようです。

ワインの原産地統制名称 - AOC、AOP、PDOのざっくり整理

私がワインの勉強を始めた時に最初に行き詰ってしまったのが、AOC, AOP, PDO, PGI, IGTなどの3文字アルファベットです。 フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ドイツ... と勉強を進めるにつれて、次々とあらたなアルファベットと、ピラミッドが登場します。 必死でそれらを丸暗記してワインエキスパートの試験に臨んだのですが、結局はあまり深い理解が得られないままに、試験の合格と共にワインの勉強を終えてしまいました。 当時は完全に、覚えるべき3文字アルファベットの多さに圧倒されて、その森の中に迷い込んでしまっていました。 今、改めて振り返ってみて、3文字アルファベット(つまり、ワイン法の品質分類)は、すごく平たく言うとこういうことだったのではないかと思っています。その理解を、下に簡単にまとめてみました。個人的な理解なので、完全に正しいかどうかはわかりません。 以下、スライドの説明です。 【ワインの分類】について すごく大雑把に言うと、ワインには「産地名が保護されているワイン」と、そうでないワインがあります。 「産地名が保護されているワイン」とは、例えば、「ブルゴーニュ」ワイン。ブルゴーニュのブドウを使ってなかったり、ブルゴーニュで造られてないワインには、ボトルのラベルに「ブルゴーニュ」という名前を使ってはいけないということです。 さらに、EU圏内の場合、「産地名が保護されているワイン」の中には「産地名が厳しく保護されているワイン」があります。 「厳しく」というのは、ブドウ品種や、ブドウの収穫量、醸造方法、熟成期間などに関する基準を指します。つまり、決められた作り方をしたワインでなければ、その産地名をラベルに表記してはいけないということです。 例えば、シャンパーニュ地方のブドウを使い、そこで醸造をしたワインであっても、シャンパーニュ製法で作られていなければ、「シャンパーニュ」とラベルに表記ができないということです。 【ワイン分類の名称】について 上で説明をしたワインのうち、産地名が保護されているワインは、それぞれの分類(品質分類)の名前がついています。 厳しく産地名が保護されたワイン=PDO 産地名が保護されたワイン=PGI EU圏外で産地が保護されたワイン=GI 【EU各国での名称の違い】について PDOやPGIという名称は、EUが近年(2008年)新た

用途から見たスパークリング・ワインの残糖量のラベル表示

 ワイン試験において、スパークリング・ワイン残糖量のラベル表示は必須です。 しかし、数字ばかりを追っていると、なかなか頭に入ってこないので、どんなケースでその残糖のワインが登場するのかを個人的にまとめてみました。 文字や数字の羅列を覚えるよりは、なんとなくイメージが膨らんで暗記作業もはかどるような気がします。

スペインのスパークリングワイン、カバ(Cava)の主要三品種とその特徴

 スペインのスパークリングワインであるカバ(Cava)に使われる主要なブドウ3品種と、その特徴を覚えるために資料を作成しました。 テーマは、だんご三兄弟ならぬ、「カバ三兄弟」です。 擬人化すると、結構すんなり頭に入るような気がします。