スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

3月, 2023の投稿を表示しています

最新記事

なぜ、A.O.C. フラジェ・エシェゾー(A.O.C. Flagey-Echézeaux) のワインが無いのか?を考察

 今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux)  」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...

ナパヴァレーAVA(カリフォルニア)の覚え方を正攻法で考える

 ワイン学習において、ナパヴァレーAVAの暗記は難関だと思います。 いままで語呂合わせによる覚え方などを考えてきましたが、今回は正攻法による覚え方を考えてみたいと思います。 まず、ナパヴァレーの位置ですが、ナパ郡の西部の広い範囲に位置しています。そして、ソノマ郡とソラノ郡に挟まれたやや内陸に位置しています。 東西を、ヴァカ山脈とマヤカマス山脈に挟まれているために、東のセントラルヴァレーからの暖かい空気や、太平洋からの冷たい空気から守られています。 しかし南部はサン・パブロ湾に面しているために、ここからの冷たい海風や霧の影響を受けています。また、北部の一部も山脈が少しだけ途切れているために、ソノマ郡からやってくる涼しい空気の影響もやや受けます。 さて、ここから本題のナパヴァレーのAVAに関してです。 ナパヴァレーには、この地域全体をカバーするNapa Valley AVAと、その中に16の小地域のAVAが含まれています。覚えるのが難しいAVAは、この16の小地域のAVAです。 主だったAVAは、下の図のように、山の斜面と、谷底の川の近くに、南北に並んでいます。 数あるものを覚えるための1つの方法としては、それぞれの要素をグルーピングすることだと思います。 そこで、これらのAVAを、まずは山の斜面にあるもの(緑色)と、谷間にあるもの(無色)に分けてみたいと思います。 緑色のAVAではほとんどの畑が霧の冷涼効果を受けないフォグライン(Fog line)よりも高い標高に位置しています。一方で、無色のAVAの畑は霧の影響を受けるフォグラインよりも標高の低い場所に位置しています。 そして、次にサン・パブロ湾からの冷たい風と霧の影響を受ける度合によって、谷間のAVAを3つのグループに分けようと思います。南に位置するAVAほどその影響は大きく、北に位置するAVAほどその影響は小さくなります。 下図の青い地域は湾からの影響を大きく受け涼しい地域であり、赤い地域は湾からの影響はほとんどなく暖かい地域です。そして黄色はその中間くらいです。 谷間の南部のAVA まずは、谷間のAVAのうち、もっともサン・パブロ湾に近い地域にある3つのAVAです。 ・ロス・カーネロス(Los Carneros) ・クームズヴィル(Coombsville) ・オーク・ノール・ディストリクト(Oak Kn...

アメリカのワインの原産地名称は2種類ある?素朴な疑問

アメリカのワインの原産地名称と言えば、AVA(American Viticultural Areas=米国政府認定ブドウ栽培地域)が思い浮かびます。 しかし、調べてみると原産地名称がAVA以外のワインも存在します。それは、州名や郡名などの地方行政区画が原産地名称として表示されているワインです。 なぜ、AVAと行政上の区画の2種類の原産地名称があるのでしょうか?少し紛らわしく感じます。 また、この2種類の原産地名称は、原産地名称だけではなく、収穫年のラベル表示に対しても影響を与えます。 アメリカのワインはラベルに収穫年を表記するためには、その年のブドウを一定以上含んでいる必要がありますが、AVA表記のワインと、州/郡表記のワインでその割合は異なります。AVA表記ワインでは95%以上のブドウがその年のワインである必要がありますが、州/郡表記のワインでは85%以上で収穫年の表記が可能です。 このような2種類の原産地表記のワインがある理由について調べてみましたが、これにはAVA導入の経緯が関係しているようです。 AVAは、地質学的・地理学的にユニークな特徴を持つブドウ栽培地域としてアメリカ全土に適用されましたが、それ以前の原産地呼称は、州や郡の行政区画の境界線に基づいて指定されていたそうです。 そしてAVA導入の際、それらの原産地呼称はAVAに組み込まれることなく、そのまま残されました。 これが、2種類の原産地表記が残された経緯なのではないかと思います。 最後に、アメリカのワインの勉強をしていると次のような表をよく見かけます。産地の項目には、州、郡、AVAに加えて「畑」が並んでいますがこれは少し誤解を与えるような表だと思います。 調べた範囲ではアメリカのワインの原産地として認められているのは、「州・郡」、もしくは、「AVA」のいずれかです。「畑」については、、あくまでも条件を満たせば選択的に表記ができる項目であり、「州・郡・AVA」にとって代われるような原産地にはなりません。 しかしこの表を見ると、ブルゴーニュのように、あたかも畑が原産地として認められているかのような誤解を受けてしまいます。 以上、アメリカの原産地にまつわる疑問と、その考察をまとめてみました。 <了>

ワインのマッチを擦ったような香りはどこから来るのか?を考察

 ワインの中には、「マッチを擦ったような香り」を持つものがあると言われています。 このような香りはワインの香りに複雑性を与えるものとして、ポジティブにとらえられることが多いようです。 しかし、この香りが強くなりすぎると、次第に「腐った卵」のような不快な香りに感じられ、これは欠陥ワインの香りとして認知されています。 このような、「マッチを擦ったような香り」や、「腐った卵」の香りが一体どこから生まれてくるのかを考察してみたいと思います。 二酸化硫黄(SO2)? まず最初に、これらの香りの特徴は「硫黄化合物」に共通するものです。 ワインに使われる硫黄化合物でもっともポピュラーなものと言えば、二酸化硫黄(SO2)です。二酸化硫黄は常温では期待として存在し、別名、亜硫酸ガスとも呼ばれています。そして、二酸化硫黄は、ワインの酸化防止剤や防腐剤(抗菌剤)として用いられ、ブドウの収穫から醸造工程のさまざまな工程で用いられます。また、瓶詰めの際には一定量が添加されます。 二酸化硫黄はワインの変性を防ぐというメリットがある反面、人体に有害なことがあるために、ワイン中の上限濃度が大きく法律で厳しく規制されています。しかし、ワイン中の残留濃度は有害なレベルを大きく下回るもので、一般的には非常に安全なレベルと言われています。 さて、ではこの二酸化硫黄(亜硫酸)が「マッチを擦ったような香り」の原因でしょうか? どうやら、この二酸化硫黄は直接的な原因ではないようです。 二酸化硫黄は一部の自然派ワインを除いてほとんどのワインに使われている物質です。しかし、全てのワインが「マッチを擦ったような香り」を持っているわけではありません。 また、先述の通り二酸化硫黄の添加量はごくわずかであり、ワインの香りを変えてしまうような量が添加されているとも思えません。 「マッチを擦ったような香り」には別の理由があるようです。 還元臭 「マッチを擦ったような香り」や「腐った卵」の香りは、どうやら「還元臭」と呼ばれるものであるようです。 還元臭の原因は、揮発性硫黄化合物(VSC)に由来すると言われています。VSCはさまざまな硫黄化合物の相称です。 VSCは、アルコール発酵、澱熟成、瓶内熟成などのワインの醸造・熟成工程に発生します。 アルコール発酵工程においてVSCが発生する原因としては、酵母が発酵中に窒素不足のス...

カリフォルニアのワイン産地の冷涼効果を図にしてまとめてみた

  カリフォルニアはワイン産地としては緯度の高い地域です(北緯32~42度)。 そのため、冷涼効果がなければ高品質なワイン用のブドウの栽培はできません。 カリフォルニアの主な冷涼効果は、「海からの冷たい風」、「霧」、「標高」の3つです。 これらの冷涼効果が働くメカニズムを上のような図にしてまとめてみました。 ① 海からの冷たい風 カリフォルニアはワイン産地にしては緯度が低く、比較的日照の強い地域です。 陸地の空気はこの日照により暖められて上昇気流となり、代わりに海からの冷たい風が内陸まで入り込みます。この冷たい海風は海岸山脈の切れ目を縫って入り込むために、全ての場所がこの冷たい風の恩恵を受けられるわけではありません。 カリフォルニア付近の海風が冷たい理由は、カリフォルニア海流と呼ばれる寒流が関係しています。 この午後から夜間にかけて吹き込む冷たい風は、夜間の温度を下げるために、日中と夜間の温度の気温差(日較差)を生み出します。この気温差のおかげでブドウは高品質なワインに必要な酸を保持することができるとともに、糖分の成熟が緩やかになるために、香りやタンニンが十分に成熟します。 (関連記事: なぜ温暖な地域でのブドウ栽培には冷涼効果が好まれるのか?を考察 ) これ以外にも冷たい風が吹き込む影響は、カビのリスクの軽減や、霜のリスクの軽減にもつながります。 ② 霧の発生 海岸山脈を越えて内陸まで運ばれた湿気を含んだ空気は午後から夜間、明朝にかけて霧を発生させます。 これは午後から夜間にかけて気温が下がり、空気中の飽和水蒸気量が下がることが原因だと思われます。 霧はカリフォルニアの強い日照を遮ることで冷涼効果をもたらします。例えば明朝まで残った朝霧は、午前中の急な温度上昇を和らげます。 また、霧による日照の遮蔽はブドウの光合成にも影響を与え、ブドウの成熟のスピードを緩やかにすると考えられます。 このような霧の発生による冷涼効果ですが、この恩恵を受けられる地域は、海からの湿気を含んだ空気が入り込む、比較的標高の高くない地域に限られます。 ③ 標高 霧の届かないような標高の高い地域ですが、ここでは標高の高さによる冷涼効果が期待できます。 しかし、このような標高の高い地域は日照を遮るものが何もないために、ブドウは強い日照を受けることとなります。このような地域では、黒ブドウの...

なぜ、パリ「ス」の審判と呼ばれているのか? ~カリフォルニアワイン躍進のきっかけを考察~

 パリスの審判(Judgment of Paris)は、1976年にイギリス人ワイン商のスティーヴン・スパリュア(Steven Spurrier)がパリで行った試飲会の通名です。 この試飲会では、フランスとカリフォルニアから集められた最高品質の赤白ワインが集められ、ブラインドテイスティングによって、それぞれのワインの評価が行われました。 当時、最高品質のワインはフランスでしか造ることができないと思われていましたが、赤ワイン、白ワインそれぞれの部門で最も良い評価を集めたのは、なんとカリフォルニアのワインでした。 ----------------------------- 最高評価の赤ワイン:1973 Stag’s Leap Wine Cellars Cabernet Sauvignon(スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ・カベルネソーヴィニヨン) 最高評価の白ワイン:1973 Chateau Montelena Chardonnay(シャトー・モンテレーナ・シャルドネ) ----------------------------- この結果は、この試飲会を取材した記者により「Judgement of Paris(パリスの審判)」と題してタイム誌に掲載され、世界に衝撃を与えました。 これがワイン界で有名な「パリスの審判」の概要なのですが、ここで1つ疑問があります。 それは、なぜ「パリの審判」ではなく、「パリスの審判」なのかということです。パリで行われた試飲会なのですが、なぜ「パリス」と呼ばれているのでしょうか? それは、「Judgement of Paris(パリスの審判)」と呼ばれる通称が、ギリシャ神話に由来しているからです。 ギリシャ神話の「Judgement of Paris(パリスの審判)」とは、ギリシャ神話の英雄であるパリスが天界の三美神のうちで誰が最も美しいかを判定させられた出来事です。この神話は画家の好む主題の1つとなり、様々な画家が『パリスの審判』というタイトルの絵を描いたと言われています。 そして、タイム誌の記者は英雄の名前「パリス(Paris)」を試飲会の場所「パリ(Paris)」にもじって記事のタイトルとしたわけです。 ギリシャ神話や絵画に詳しい人なら、「Judgement of Paris(パリスの審判)」ときいただけですぐに分かるのかも...