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12月, 2024の投稿を表示しています

最新記事

ドイツワインの品質分類のピラミッドで誤解していたこと

 ドイツワインは、ワイン法によって大きく 4つ に分けられています。 原産地名称保護のある「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」と「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein) 」、地理的表示保護のある「 ラントヴァイン(Landwein) 」、そして、地理的表示のない「 ドイッチャー・ヴァイン(Deutscher Wein) 」の4つです。 図で表すと次のようなピラミッドで表されます。ドイツワインを学ぶ場合、これはおなじみのチャートです。 これは基本的には、 品質分類の順位 を表したものだと思います。つまり、そのワインの 生産における制約の厳しさ を、上から順に並べたものだと思います。 例えば、最上位のプレディカーツヴァインの製造には、ブドウの栽培地、収穫方法、ブドウ中の最低糖度、ラベル表示などに厳しいルールが設けられています。しかし一方で、最下位のドイッチャー・ヴァインにおいてはドイツ国内であれば特にブドウ栽培地の制約はなく、その他についてもそれほど厳しい制約はありません。 そして、このような特徴を持つ品質分類のピラミッドにおいて、私は長らく勘違いをしていました。 それは、 「基準が厳しい=生産量が少ない」という思い込み です。そのため、生産量は階層が下のものの方が多く、上位になるにつれて減っていくと思っていました。 ちょうどピラミッドのチャートが表すように、下位の ドイッチャー・ヴァインやラントヴァインがドイツワインの生産量を下支えしている のだと思い込んでいました。 しかし、実際の生産量は、その思い込みと異なりました。 生産量を考慮すると、ピラミッドは概ね次のような形となります。 ドイツワインの生産量を下支えしていると思われていた「 ドイッチャー・ヴァイン 」と「 ラントヴァイン 」を合わせた生産量は実は全体の4%ほどしかないそうです。 そして、残りの生産の2/3ほどを「 クヴァリテーツヴァイン 」が占めており、残りの1/3ほどが「 プレディカーツヴァイン 」です。 実は、日常的にもっとも多く飲用されているワインは、このチャートが表すように「 クヴァリテーツヴァイン 」なのだとか。 今回の件は、チャートによる視覚的効果によって、事実を誤認してしまう典型的な例の1つだと思いました。 このような品質基準のピラミッドチャート...

ピノノワールの味わいは産地によってどう変わるのか?ブルゴーニュ、ドイツ、カリフォルニア、ニュージーランド、チリ産の特徴の違いを考察

今回はピノノワールのワインの味わいが、産地によってどのように変わるのかを考察してみたいと思います。 (関連記事: メルローワインの味わいは産地によってどう変わるのか?チリ、アメリカ、フランス産の違いを考察 ) 取り上げる産地は次の通りです: ① ブルゴーニュ(フランス) ② ドイツ ③ カリフォルニア(アメリカ) ④ ニュージーランド ⑤ チリ ブルゴーニュ(フランス) ブルゴーニュは、世界の醸造家がお手本とするようなピノノワールの代表的な産地です。 今回取り上げたピノノワールの産地の中では比較的涼しい場所にあります。果実の成熟は全ての畑で毎年、約束されているわけではありません。 そのため、ボディは、広域AOCのワイン(Bourgogne AOCなど)でミディアム程度と言われています。涼しい地域であるために、酸味は高めで、アルコールは中程度(11.0~13.9%)です。タンニンについては、ピノノワールは果皮が薄い品種であるために、少なめ~中程度くらいです。 香りについては、赤系果実の香りを中心に、樽熟成のオークの香りが感じられるのが特徴です。新樽が一部利用されていることが多いですが、果実の成熟度に合わせて、バランスの取れた繊細な樽香が付けられていることが特徴です。 ブルゴーニュのワインは、広域AOCのものから、グランクリュまで品質の幅が広いため、その特徴も大きく変わりますが、おおよそ次のような特徴をもっているのではないかと考察します。 【外観】 ・中程度のルビー色 【香り】 ・中程度~強い香りの強さ ・フレッシュな赤系果実の香り(イチゴ、ラズベリー、赤サクランボ) ・樽香(クローブなど)  ※果実の凝縮度が高いものほど、強い樽香を帯びている ・土、猟鳥類、キノコ  ※数年の瓶内熟成を経たワインのみ  【風味】 ・辛口 ・高い酸味 ・少ない~中程度のタンニン  ※ただし長期の樽熟成を経た高品質なワインはもう少し高め ・中程度のアルコール度 ・中程度のボディ  ※品質の高いワインはより厚いボディを持つ 【品質・価格】 ・良いワイン~非常に良いワイン、素晴らしいワイン ・中程度~高価格帯が多い これらを踏まえると、ブルゴーニュの ピノノワールの特徴は、ミディアム程度のボディとアルコール、高い酸味、繊細な樽の香り になるのではないかと思います。個人的には、ミディアム...

【考察】なぜ、ピノノワールの栽培には石灰岩土壌が適しているのか?

 ワインに関する書籍を読んでいると、時々、「ピノノワールの栽培には石灰岩土壌が向いている」という文言を目にすることがあります。 そのために、知らない間に「ピノノワールと言えば、石灰岩土壌」というイメージが勝手に頭の中に作り上げられてしまっていました。 しかし、改めて考えてみると、なぜ「ピノノワールに石灰岩土壌」が向いているのかを深く考えたことはありませんでした。 そこで今回は、「なぜ、ピノノワールに石灰岩土壌が向いているのか」を考察してみたいと思います。 石灰岩土壌は多くのブドウに向いている まず、いくつかのワイン書籍やウェブサイトを調べてみてわかったことは、 石灰岩土壌はワイン用のブドウ栽培一般に向いていると考えられている ようであるということです。 特に、ピノノワールだけが石灰岩土壌の恩恵を受けるわけではないようです。 では、なぜ、ピノノワールと言えば「石灰岩土壌」があがるのでしょうか? その大きな理由の1つ は、ピノノワールのメッカであるブルゴーニュ、特に、コート・ド・ニュイの土壌にあるのだと思います。 ブルゴーニュの土壌は、石灰岩と粘土の混合です。その中でも、世界最高峰のピノノワールワインを生み出すと言われているコード・ド・ニュイの土壌では、石灰岩が大きな比率を占めています。 つまり、 世界最高峰のピノノワールが生まれる土壌が石灰岩土壌であるために、「ピノノワールには石灰岩土壌が向いている」と言われている のだと思います。 そして、 もう1つの理由 としては、ピノノワールがワイン用ブドウ品種の中でも栽培が難しい品種の1つであるということがあげられると思います。 ピノノワールは、よく気難しい品種と形容されることがあるくらい、栽培が難しいことで有名であり、良い果実を実らせるためには最高の栽培環境が求められます。 そのため、 ブドウ栽培にとって非常に適した土壌の1つである石灰岩土壌が適した栽培環境としてあげられている のだと思います。 石灰岩土壌は、なぜ、ブドウ栽培に適しているのか? では、今度は、なぜ石灰岩土壌がブドウ栽培一般に適しているのかについて、考察をしてみたいと思います。 私が調べてみた範囲では、石灰岩土壌の次のような特徴が理由としてあるようです: ① 保水力と水はけの良さ ② ミネラルや栄養素の取り込みやすさ ③ 耐病性 諸説あるようですが、石...

これができないと、テイスティング・スキルが上がらないと思うこと

 個人的に、これができないとテイスティング・スキルがいつまでたっても上がらないと思うことがあります。 それは、 ワインの品質を正しく評価できる ということです。 テイスティング・スキルという言葉が用いられる場合、それはワインに使われているブドウ品種や、ワインが造られた産地を言い当てられることを指すことが多いと思います。 しかし、ワインの品質を正しく評価できることも重要なテイスティング・スキルの1つであり、品種や産地当てよりも真っ先に理解すべきことなのではないかと思います。 さらに言えば、ワインの品質を正確に評価できなければ、いくらテイスティングのトレーニングを重ねても、全く意味をなさないこともあるとあると思います。 例えば、次のような2種類のワインがあります。 右のワインは5000円以上の価格のワイン、左のワインは1000円前後で購入できるワインです。価格帯は異なりますが、両者ともに、チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインです。 まず、 右の高価格帯のワイン を味わってみると、暖かい地域で育ったカベルネ・ソーヴィニヨンのしっかりと凝縮された果実の香り・風味が感じられます。そして、その裏に、長期の樽熟成に由来するヴァニラや丁子の香りも感じられます。味わいとしては、しっかりとした果実味と、これもカベルネ・ソーヴィニヨンの特徴である高いレベルの酸味やタンニンの調和が感じられます。チリの気候と強い日差しによって十分に成熟したタンニンの舌触りも感じられます。 このワインを味わうことで、次のようなテイスティングのトレーニングをすることができると思います。 ・暖かい産地であるチリのカベルネソーヴィニヨンワインの香りの特徴を捉える ・長期の樽熟成に由来する樽香の特徴を捉える ・暖かい産地であるチリのカベルネソーヴィニヨンワインの味わいの特徴(酸味、成熟したタンニンなど)を捉える 次に、 左の低価格帯のワイン を味わってみます。 先ほどのワインに比べると、果実の香りはかなり弱く感じられます。かなり感覚を研ぎ澄ませても、かすかな果実の香りしか感じ取ることができず、どのような果実であるかもかなりぼんやりしています。 果実の香りが弱いために、果実とは異なるアルコールを感じさせるような無機質な香りが感じられますが、それが何の香りかはよくわかりません。 味わいとしては、先ほ...

メルローワインの味わいは産地によってどう変わるのか?チリ、アメリカ、フランス産の違いを考察

メルローは世界中のワイン造りに使われている黒ブドウ品種です。 今回は、メルローワインの味わいが産地によってどのような違いかあるのかを考察してみたいと思います。 産地としては次の3つを取り上げたいと思います: ① チリ、セントラルヴァレー ② アメリカ、カリフォルニア ③ フランス、ボルドー、ポムロール まず、メルローのワインスタイルについてですが、大きく2種類のスタイルがあると言われています。それは 「インターナショナル・スタイル」 と 「ボルドー・スタイル」 です。 インターナショナル・スタイル のメルローワインは、暑い気候のブドウや、温和な気候の過熟ブドウから造られており、 黒系果実の香り を持ち、 高いアルコール度 で フルボディ なのが特徴です。その分、 酸味は中程度~やや低め で、 タンニンも中程度 です。特に熟度が高いものは、 フルーツケーキ や チョコレートの香り を持つと言われています。 一方で、 ボルドー・スタイル は、冷涼~温和な気候で栽培されたブドウから製造されており、先ほどのスタイルに比べるとよりエレガントなスタイルです。 赤系果実やハーブの香り を持ち、 アルコール度が中程度 の ミディアムボディ のワインです。その分、 酸味やタンニンはやや高め です。良いワインはオーク樽による熟成が行われ、 スパイスや樽の風味 を帯びています。 今回取り上げる産地の中では、チリとカリフォルニアのワインの多くがインターナショナル・スタイルで、ポムロールのワインの多くがボルドー・スタイルになるのではないかと思います。 ① チリ、セントラルヴァレーのメルローワイン チリのセントラルヴァレーでは多くの低価格帯のメルローワインが造られていることが有名です。また、一部、品質の高いメルローワインも造られています。 チリのセントラルヴァレーの気候は、温暖で晴れが多く、乾燥しておりブドウ栽培に非常に適しています。また、海洋からの冷涼効果が比較的得られにくいために、日中の温度が非常に高くなり、日差しの強さと相まって、果実の成熟度は非常に高くなります。 このような環境で造られるセントラルヴァレーのメルローワインは次のような特徴を持つと考えられます: 【外観】 ・濃い紫~ルビー色 【香り】 ・黒系果実の香り(ブラックベリー、ブラックプラム、ブラックチェリーなど) ・果実の熟度の...