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6月, 2022の投稿を表示しています

最新記事

ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

ドウロワインがポートワインから恩恵を受けていると言われる理由を考察

ドウロワイン(ドウロDOC)は、ポルトガルの酒精強化ワインであるポートワインと同じ地域で造られるスティルワインです。 生産地域はドウロ川の上流の地域です。 時々、「ドウロワインはポートワインから恩恵を受けている」と言われることがあるのですが、その理由を考察してみました。 参考にしたのはこちらの記事です:『he Port wTine time bomb』(https://www.wine-business-international.com/wine/port-wine-time-bomb) 調べてみると、ポートワインは需要と供給のバランスを保つために畑ごとに製造量が割り当てられているのですが、自社畑の割当以上の量のポートワインを造りたい製造者は、ドウロワイン製造農家からお金を出して追加割り当てを買い取っているというのが、その恩恵を生み出している仕組みなのではないかと思いました。 まず、ポートワインの畑ごとの製造量の割当ですが、これは「ベネフィシオ(beneficio)」と呼ばれているようです。 余談になりますが、「ベネフィシオ」という言葉は、その年にポートワインにすることが許可されているブドウ果汁の総量を表すとともに、この供給量を制限する仕組み自体も表すようで、「ベネフィシオ・システム」と呼ばれているようです。 さらに「ベネフィシオ」という言葉は、ポートワインの製造のために発酵中のブドウマストにブランデーを加えるという酒精強化のプロセス自体もあらわしているようです。 このような規制があるために、ポートワインの製造業者は自社畑に割り当てられたベネフィシオ以上のポートワインは製造できないことになっています。 しかし製造量を増やす方法は1つだけあり、それは他の農家からポート製造用のブドウをベネフィシオと合わせて購入することのようです。 このような買取が許可されているために、ポートワイン製造者が、ポートワインを製造していない農家からブドウ+ベネフィシオを買い取ることが行われているそうです。ポートワイン用のブドウの売買もベネフィシオ・システムで規制がされており、その売買価格は一般のブドウに比べてずっと高い金額でやり取りがされているそうです。 そのため、ポートワインを造らないブドウ農家は、一部のブドウをポートワイン用ブドウとしてベネフィシオと共にポートワイン製造者に販売し、残り

シャルドネの味わいは産地によってどう変わるのか(産地比較)? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~

 前回のリースリングに引き続き、今回はシャルドネワインについて特徴や産地による味わいの違いをまとめたいと思います。 (関連記事: リースリングの味わいは産地やタイプでどう違うのか? ~特徴のまとめと、テイスティングによる確認~ ) まず、シャルドネワインの特徴は次の通り: シャルドネの大きな特徴は、 ・非アロマティック品種 ・なので、品種由来の香りに加え、製造工程由来の香りも強く表れる ・栽培地域によって異なる特徴のワインを造る ・品質の高いワインは、熟成能力を持つ この辺りではないでしょうか。 シャルドネは世界の様々な地域で造られているために、主要な栽培地域もフランスからニューワールドまで様々です。 その主要産地で造られるシャルドネワインの特徴を簡単にまとめてみました。これもやはり個人的な知識や判断に基づく情報が含まれています。 シャルドネのテイスティング では、この情報を踏まえて、実際にテイスティングをしてみようと思います。 用意をしたワインは次の通りです: ワイン①:『La Chablisienne Chablis La Pierrelee (2018)』(通常のシャブリ) ワイン②:『Chablis 1er Cru Fourchaume Half La Chablisienne (2017)』(シャブリ1erクリュ) ワイン③:『Domaine Bouchard Père & Fils Beaune du Château Premier Cru Blanc (2016) (2016)』(コード・ド・ボーヌ 1erクリュ) ワイン④:『Louis Jadot Mâcon Villages (2018)』(マコン・ヴィラージュ) ワイン⑤:『Saint-Veran Les Deux Moulins (2016)』(サン・ヴェラン [マコネ地区]) ワイン⑥:『Jacob’s Creek Chardonnay (2020)』(低価格オーストラリアワイン) ワイン⑦:『Lucky Lizard Chardonnay D'arenberg (2018)』(アデレードヒルズ [豪]) ワイン⑧:『Marlborough Chardonnay Summerhouse wine (2017) 』(マールボロ [NZ]) ワイン⑨:『Carneros Char

リースリングの味わいは産地や製法でどう違う? ~産地・製法比較のテイスティング~

リースリングは、ヨーロッパからニューワールドまで様々な産地で栽培・醸造が行われている国際的な品種です。 このリースリングの味わいが産地やワインのタイプによってどう変わるのかを、調べて表にまとめてみました。多少、独断と偏見も含まれているかもしれません。 忘れずに、リースリングの品種特徴もまとめておきます。 日本語でまとめると、リースリングワインの基本的な特徴は、次のような点だと思います。 ・アロマティック品種 ・花やフルーツの香りが主体(青い香りはあまりない) ・栽培地域によって香りの特徴が変わる ・酸味が高い(完熟でも酸味を失わない) ・熟成能力を持ちハチミツや石油の香りを発展させる(長期熟成をせずともハチミツや石油の香りを持つワインもある) ・品種由来の香りを押し出したワインが多い(樽やMLF由来の香りはあまりない) ・様々なスタイルがある(ドライ~半甘~甘口、完熟・貴腐ブドウの使用など) (関連記事: WSETをやってわかったリースリングの特徴とその素晴らしさ ) リースリングのテイスティング では、この情報を踏まえて、実際にテイスティングをしてみようと思います。 実際のテイスティングを通して、表にまとめたようなそれぞれのワインの特徴が表れているのかを調べてみました。そして、それぞれのワインの特徴を、簡単なテイスティングノートにしてまとめてみました。 今回用意したのは、次のようなワインです。表にまとめた主要なワインを全て網羅しているわけではありませんが、特徴のきわだったワイン5つに絞って選んでみました。 ワイン①:『Erbacher Siegelsberg Q.b.A. Grosses Gewachs 2018』(ドイツのクヴァリテーツヴァイン) ワイン②:『Riesling Tradition Charles Sparr 2017』(アルザスAOC) ワイン③:『Riesling Annie‘s Lane 2019』(オーストラリア・クレアヴァレーGI) ワイン④:『 Selbach-Oster Riesling Kabinett Selbach-Oster 2014 』(ドイツのカビネット) ワイン⑤:『 Udenheimer Kirchberg Riesling Auslese 2014 』(ドイツのアウスレーゼ) ワイン①:『Erbacher Siege