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4月, 2021の投稿を表示しています

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ワインから感じられる「スギ」の香りとは?(考察)

 ワインの香りを表現する際に、しばしば 「スギ」 という言葉が登場します。 この「スギ」という言葉は、おそらく英語の「Cedar」に由来しており、Cedarは正確には日本のスギと異なるセイヨウスギを意味します。 厳密には、日本のスギは、マツ綱のヒノキ科スギ属で日本固有種であり、Cedar は、マツ目マツ科のヒマラヤスギ属です。 香りとしては、スギもCedar(ヒマラヤスギ)も一般に、 森林浴を思わせる爽やかさや清涼感を香り を持つと言われています。基本的には、 「スギ」 も 「Cedar」 を似たような香りを持っているようです。 さて、ワインにおいて 「Cedar」 という言葉が使われる場合、多くの場合、これは 樽熟成を経た赤ワイン に対して使われます。「Oak」という表現に類似しており、 ワインが持つ木の香り を表す言葉として使われます。(※樽熟成の代わりにオークチップを使った場合でも感じられるようですが、その香りは弱くなるようです) そのため、香りのタイプとしては通常、 第2の香り(ワイン醸造に関係する香り) に分類されています。 また、ブドウ品種としては 「カベルネ・ソーヴィニヨン」 によく使われる言葉としても知られています。 カベルネ・ソーヴィニヨンは、製造工程において、比較的、 長期の樽熟成を伴う ことの多いブドウ品種です。そのため、ワインはオーク樽由来の木の香りを帯びることが多く、このような表現と相性が良いのだと思います。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは品種由来の香りとして、 「メンソール」 や 「ハーブ」 のような 青さや清涼感のある香り を持つことで知られています。これが樽熟成に由来する木の香りと相まって、森林浴を思わせる爽やかさや清涼感をもつ 「Cedar」 や 「スギ」 という表現用語で表されるのだと思います。 時々、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種特徴として「スギの香り」と書かれていることがありますが、樽熟成を伴わないカベルネ・ソーヴィニヨンからはもしかしたらスギの香りは感じられないかもしれません。 一般的に、「スギ」や「Cedar」の香りを持つ赤ワインは、フレンチオークで熟成されたものであると言われています。例えば、ボルドーの赤ワインや、高品質なナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどがこれに当たります。 アメリカンオークが樽熟成に使われた場

パロミノ種からできるシェリー酒のタイプと製造工程の個人的まとめ

シェリー酒は、非常に学び甲斐のあるワインだと思います。 なぜかと言うと、その風味の多くの部分が、製造工程(主に熟成工程)における化学反応で作り上げられるからです。特に、ニュートラル品種と言われるパロミノ種から造られるシェリー酒は、この特徴が顕著です。(モスカテル、PXから造られるシェリー酒は今回は対象外としています) 多くのスティルワインの味わいが、主にブドウ品種が持つ固有の特徴から作り上げられるのとは対照的です。 シェリーワインには、「フィノ」、「アモンティリャード」、「オロロソ」など様々なタイプがあり、それぞれが異なる味わいを持ちますが、製造工程を追っていくと、なぜそれぞれが異なる味わいを持つのかが非常に良く分かります。 シェリー酒の熟成工程において、最も重要な熟成方法となるのが「生物学的熟成」と「酸化熟成」です。生物学的熟成というのは、産膜酵母(フロール)下で行われる熟成で、酵母の働きでアセトアルデヒドの香りが生まれるなどワインにさまざまな風味づけがなされます(くわしくはこちら→  関連記事:シェリーにおけるフロールの働きとワインへの影響 )。 すごく大雑把に言ってしまうと、どちらの熟成を経たかによって、シェリーのタイプが決まります。 まとめると、上の表の通りです。 生物学的熟成によって、ワインが帯びる特徴は次の通り: ・薄いレモン色(フロールにより酸化から守られるため) ・アセトアルデヒドの風味 - リンゴの皮、傷んだリンゴ、干し草、カモミールの風味、多少の苦み(フロールがアルコールを代謝しアセトアルデヒドを作り出すため) ・酵母の自己分解の風味 - うまみ、ナッツの風味 ・ボディの軽さ(フロールがボディを作るグリセロールを代謝するため) ・低めのアルコール(フロールを生かすために酒精強化が弱めであることと、フロールがアルコールを代謝するため) これらの特徴は、フィノやマンサニーリャの特徴そのままです。つまり、フィノやマンサニーリャの主だった特徴は、酸化熟成工程に作り上げられます。ニュートラル品種であるパロミノの特徴は、その特徴として現れません。 (続く)...........

絵で見るポートワインの製造工程

 ポートワインの製造工程を絵とともにまとめてみました。 まずブドウは、香りとタンニンが十分に熟してから収穫されます。ポートはマセラシオンによる抽出を行うので、十分に成熟していないブドウから抽出される青い香りや、苦みのあるタンニンが好まれないからです。反対に、酒精強化を行うので、ブドウが熟し過ぎて糖度が上がることにはそれほど問題が無いようです。 ポートワインのポイントは、抽出をいかに素早く効率的に行うかです。残糖を多く残すためにアルコール発酵が途中で止められてしまうので、辛口ワインのように長らく抽出に時間がかけられないからのようです。 かといって、強めの抽出を行うと、苦いタンニンが抽出されてしまうので、古くから足でやさしくブドウを踏みつけるという方法がとられてきました。近年は機械化が進んで、これを疑似的に機械で行うなどの方法が用いられているようです。 アルコール発酵は、自然酵母を使って比較的高めの温度で行われるのが一般的のようです。これにより、複雑な香りが得られます。 アルコール発酵が始まると、マストのアルコール度が5~7%程度になったところで、アルコール度77%のブランデーが加えられます。このブランデーは、アグアルデンテと呼ばれます。これによりアルコール発酵は止まります。 多くの酒精強化ワインでは95%くらいのブランデーが加えられますが、ポートの場合は77%と低めです。他の酒精強化ワインと同様に、ワイン全体のアルコール度は20%近くまで上げられるので、より量の多いのブランデーを加える必要があります。これにより、ポートワインには、加えたブランデーの風味が加えられます。ポートワインからアルコールっぽい香りがするのはこのためです。 酒精強化のされたワインは、圧搾されてブドウの果皮から分離されます。 ポートワインでは、ワインのバランスをとるために補酸されることがよくあるそうです。 ワインは清澄されて、熟成のために移送されます。 熟成場所には、ある程度の涼しさ、一定の温度、湿気などが必要です。昔は、ブドウ栽培地からドウロ川を下って、これらの条件を備えるヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアという町でワインの熟成を行っていましたが、最近は人工的にこれらの条件を備えた倉庫を作り出せるので、ブドウ栽培地でそのまま熟成をすることが増えているようです。 この熟成の方法や期間の長さは、ポートワインの

シェリーにおけるフロールの働きとワインへの影響

シェリーワインの学習において何かと覚えることが多いのは、生物学的熟成を経て作られるタイプの「フィノ」や「マンサニーリャ」。 これらのタイプのシェリーは、フロールと呼ばれる産膜酵母の下で熟成されることが特徴です。 通常の白ワインの製造工程で作られたベースワインは、95%のグレープスピリッツで酒精強化され、オーク樽で熟成されます(通常、バットと呼ばれる660Lのオーク樽で、アメリカンオークで作られるものが多い)。 酒精強化されたワインは15.0~15.5%にするのがポイントで、この範囲でのみワイン表面にフロールが発生するそうです。 フロールの発生はその環境に大きく依存するようで、次のような環境が必要とされています。 ・ワインのアルコール度数=15.6~16.0% ・酸素:ワインは樽の85~90%満たし、空気の入るスペースを残す ・貯蔵庫の温度:16-20°C ・貯蔵庫の湿度:65% このような環境を整えるために、シェリーの貯蔵庫(ボテガス)は特別な構造になっているようです。 例えば、屋内の温度を涼しく一定に保つために、ボテガスの壁は厚く、屋根は高く、屋根の近くには窓があり、床は湿った状態で保たれています。屋根が高いと暖かい空気が逃げやすく、また、窓からは大西洋からの南西の風が入り温度が下げられるようです。 また、湿った床や、大西洋からの風は屋内の湿度を保つのにも一役買っているようです。 最後に、フロールによるワインへの影響ですが、「フィノ」や「マンサニーリャ」が持つ独特な特徴の多くはフロールの影響によって作り出されています。 まず、色は「淡いレモン色」ですが、これは熟成期間中にフロールによりワインが酸素から守られているためにこのような新鮮な色が保たれています。 香りは、フロールがアルコールを消費することによって発生する「アセトアルデヒド」の影響が大きく表れます(フロールはアルコールと酸素を消費し、アセトアルデヒドと二酸化炭素を生成する)。アセトアルデヒドの香りは、リンゴ、干し草、カモミールの香りと言われています。また、味に少し苦みも現れるようです。また、酵母であるフロールの影響で、旨味、ナッツの香りが現れます。 また、フロールは熟成中にアルコールやグリセロールを消費するため、アルコール度は上がらず(15.5%以下)、ボディーは軽くなると言われています。 「フィノ」や「マ

絵で見るスパークリングワインの製造工程(伝統的製法)

 スパークリングワイン、特に、伝統的製法の製造工程を覚えやすいように絵でまとめました。 伝統的製法とは、シャンパーニュなどの製造に用いられる製法です。 まだ理解が十分でない部分もあると思うので、誤りはわかり次第修正していきたいと思います。 まず、最初はブドウの圧搾から、1次発酵まで。 高品質なスパークリングワインは、房のまま圧搾が行われます。房のままの圧搾のメリットとしては、「苦みの原因となるフェノール類が抽出されにくい」、「不要な色が出にくい」、「圧力が少なくて済む(茎が液体の逃げ道を作る)」の3つがあるようです。 抽出されたジュースは、自然に流出する「フリーランジュース」と、圧力をかけることで流出した「プレスジュース」に分けられます。かけた圧力ごとにジュースを分けておくこと(press fractions)で、ブレンドの際に様々な選択肢が増えるようです。 ブドウジュースはその後、清澄を経て、1次発酵が行われます(清澄の目的は、オフフレーバーを防ぐためだと思われます)。 1次発酵発酵の温度は14~20°C程度とのこと。フルーティーな香りを残せる低い温度でありながら、酵母が活動できる温度です(多くの酵母の適正温度は16°C前後とか)。 これでベースワイン(スパークリングワインのもとになるワイン)が出来上がります。 この時点で、場合によって樽熟成や澱との熟成が行われる場合もあるようですが、あくまでもオプションの1つのようです。 次は、ブレンド(アッサンブラージュ)から、2次発酵のための瓶詰まで。 別々の地域や畑、製造工程から造られたベースワインが、目的によってブレンドされます。長期熟成目的のワインであれば、フリーランスジュースを多めにブレンドするなどがあるようです。 ここで酒石やタンパク質の安定化処理が行われます。製造後に酒石が発生したり、タンパク質による濁りが起こることを防ぐことが目的ですが、一般のワインでは瓶詰のちょっと前に行われることの多い処理です。このような早いタイミングで行われる理由は、伝統的製法の場合は、一度瓶詰をしてしまうと、あとから処理をするのが難しくなってしまうからのようです。 そして、ベースワインは「リキュール・ド・ティラージュ」とともに2次発酵のために瓶詰されます。 リキュール・ド・ティラージュには、ワイン/マスト、砂糖(約24g)、酵母、酵母の