今回のテーマは、ブルゴーニュの「コート・ド・ニュイ(Côtes de Nuits)」地区にある「 フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) 」村です。 場所は下の地図のように、モレ・サン・ドニ村、ヴージョ村、ヴォーヌ・ロマネ村の間に挟まれています。 コート・ド・ニュイの村名のワインが認められている他の村と比べると、特にそれほど小さい村でもありません。ヴージョ村やヴォーヌ・ロマネ村の方がよっぽど面積は小さめです。 しかし、このフラジェ・エシェゾー村ではその名を冠したAOCのワインを造ることは許されていません。つまり、「A.O.C. Flagey-Echézeaux」という名のワインは存在しません。 その代わり、この村で栽培されたブドウから村名を冠したワインを造る場合、全て「A.O.C. Vosne-Romanée」という隣の村の名前を冠したワインとして造られます。 なぜ、フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echézeaux) には村名のワインが無いのでしょうか?少し疑問に思って、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑について調べてみました。 まず、フラジェ・エシェゾーのブドウ畑の場所ですが、村名以上のワインを造ることのできるブドウ畑は、村の西側に局地化しているようです。村の中心地は、点線の楕円の部分に固まっているので、場所としては村の外れにあるようです。 この村の西側に局地化した畑のうち、大部分を占める畑は、特級畑である「エシェゾー(Echézeaux)」と「グラン・エシェゾー(Grands-Echézeaux)」です。 これら2つのグランクリュ畑から造られるブドウからは、唯一、フラジェ・エシェゾー村のアイデンティティの感じられる、「A.O.C. Echézeaux」と「A.O.C. Grands-Echézeaux」のワインが造られます。 残りの畑は、プルミエ・クリュ畑と村名ワイン畑となりますが、これらの畑で造られるワインはそれぞれ「A.O.C. Vosne-Romanée Premier Cru」と「A.O.C. Vosne-Romanée」となり、フラジェ・エシェゾー村の名前が使われることはありません。 それでは、ここでヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑の分布を見てみたいと思います。 これを見ると、ヴォーヌ・ロマネ村のブドウ畑は、フラジ...
日較差(昼夜の気温差)はブドウ栽培に大きな影響を与える要素です。 日較差の大きい地域でブドウ栽培を行う場合、次のようなメリットがあると言われています: ・ブドウ中の酸味が保持される ・ブドウの成熟速度が緩やかになり、香りやタンニンが十分に成熟する (→ 補足記事: ブドウ栽培で涼しさはなぜ必要? ~温暖地域で冷涼効果が好まれる理由を考察 ) そして一般的に、高地では日較差が大きくなると言われています。 たとえは、アルザスのブドウ畑は日較差が大きいと言われていますが、多くの畑は山の東側の比較的標高の高い斜面に位置しています。 それでは、なぜ高地では日較差が大きくなるのかを考察してみたいと思います。 まず、日較差に大きな影響を与えるものは、 大気中に含まれる水分 であると言われています。 地面は日中、太陽光から得た熱を吸収し、夜間にはその熱を放出します。日中に得られた熱は大気中の空気や主に水蒸気によって保持されるために、一部の熱は夜間にも保持されます。 標高の高い高地では、空気が薄く、水分も保持しにくいために、日中の熱が急速に逃げるために、夜間の温度は低くなりやすいと言われています。 これをイメージ化すると、上のようなチャートで表すことができるのではないかと思います。 この空気中の熱を保持する力(主に水蒸気量)の違いが、標高の違いによる夜間の熱の放出量に違いを生み、日較差(寒暖差)を生み出しているようです。 そしてこれ以外にも、「放射冷却の影響」や「海からの距離」、「地中の水分量」なども、日較差に影響を与えていることが考えられます。 放射冷却は、雲があることによって妨げられますが、標高の高い地域の方が、平野部に比べて雲がかかることが少ないと考えられます。 海などの大きな水塊は、気温の変化を緩和する役割を果たしますが、一般的に標高の高い地域は、内陸の海から離れた地域に位置しています。 標高の高い特に斜面では、水はけのよい土壌が多いために、平野部に比べて地中の水分が少なくなります。乾いた土壌は水分の多い土壌に比べて、夜間の温度変化は大きくなります。 このように、空気中の水蒸気量の影響を中心に、標高の高い高地では、寒暖差が大きくなるのではないかと考察されます。 <了>