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10月, 2024の投稿を表示しています

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ドイツワインの品質分類のピラミッドで誤解していたこと

 ドイツワインは、ワイン法によって大きく 4つ に分けられています。 原産地名称保護のある「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」と「 クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein) 」、地理的表示保護のある「 ラントヴァイン(Landwein) 」、そして、地理的表示のない「 ドイッチャー・ヴァイン(Deutscher Wein) 」の4つです。 図で表すと次のようなピラミッドで表されます。ドイツワインを学ぶ場合、これはおなじみのチャートです。 これは基本的には、 品質分類の順位 を表したものだと思います。つまり、そのワインの 生産における制約の厳しさ を、上から順に並べたものだと思います。 例えば、最上位のプレディカーツヴァインの製造には、ブドウの栽培地、収穫方法、ブドウ中の最低糖度、ラベル表示などに厳しいルールが設けられています。しかし一方で、最下位のドイッチャー・ヴァインにおいてはドイツ国内であれば特にブドウ栽培地の制約はなく、その他についてもそれほど厳しい制約はありません。 そして、このような特徴を持つ品質分類のピラミッドにおいて、私は長らく勘違いをしていました。 それは、 「基準が厳しい=生産量が少ない」という思い込み です。そのため、生産量は階層が下のものの方が多く、上位になるにつれて減っていくと思っていました。 ちょうどピラミッドのチャートが表すように、下位の ドイッチャー・ヴァインやラントヴァインがドイツワインの生産量を下支えしている のだと思い込んでいました。 しかし、実際の生産量は、その思い込みと異なりました。 生産量を考慮すると、ピラミッドは概ね次のような形となります。 ドイツワインの生産量を下支えしていると思われていた「 ドイッチャー・ヴァイン 」と「 ラントヴァイン 」を合わせた生産量は実は全体の4%ほどしかないそうです。 そして、残りの生産の2/3ほどを「 クヴァリテーツヴァイン 」が占めており、残りの1/3ほどが「 プレディカーツヴァイン 」です。 実は、日常的にもっとも多く飲用されているワインは、このチャートが表すように「 クヴァリテーツヴァイン 」なのだとか。 今回の件は、チャートによる視覚的効果によって、事実を誤認してしまう典型的な例の1つだと思いました。 このような品質基準のピラミッドチャート...

なぜ高地では日較差(昼夜の気温差)が大きいのかを考察

日較差(昼夜の気温差)はブドウ栽培に大きな影響を与える要素です。 日較差の大きい地域でブドウ栽培を行う場合、次のようなメリットがあると言われています: ・ブドウ中の酸味が保持される ・ブドウの成熟速度が緩やかになり、香りやタンニンが十分に成熟する (→ 補足記事: ブドウ栽培で涼しさはなぜ必要? ~温暖地域で冷涼効果が好まれる理由を考察 ) そして一般的に、高地では日較差が大きくなると言われています。 たとえは、アルザスのブドウ畑は日較差が大きいと言われていますが、多くの畑は山の東側の比較的標高の高い斜面に位置しています。 それでは、なぜ高地では日較差が大きくなるのかを考察してみたいと思います。 まず、日較差に大きな影響を与えるものは、 大気中に含まれる水分 であると言われています。 地面は日中、太陽光から得た熱を吸収し、夜間にはその熱を放出します。日中に得られた熱は大気中の空気や主に水蒸気によって保持されるために、一部の熱は夜間にも保持されます。 標高の高い高地では、空気が薄く、水分も保持しにくいために、日中の熱が急速に逃げるために、夜間の温度は低くなりやすいと言われています。 これをイメージ化すると、上のようなチャートで表すことができるのではないかと思います。 この空気中の熱を保持する力(主に水蒸気量)の違いが、標高の違いによる夜間の熱の放出量に違いを生み、日較差(寒暖差)を生み出しているようです。 そしてこれ以外にも、「放射冷却の影響」や「海からの距離」、「地中の水分量」なども、日較差に影響を与えていることが考えられます。 放射冷却は、雲があることによって妨げられますが、標高の高い地域の方が、平野部に比べて雲がかかることが少ないと考えられます。 海などの大きな水塊は、気温の変化を緩和する役割を果たしますが、一般的に標高の高い地域は、内陸の海から離れた地域に位置しています。 標高の高い特に斜面では、水はけのよい土壌が多いために、平野部に比べて地中の水分が少なくなります。乾いた土壌は水分の多い土壌に比べて、夜間の温度変化は大きくなります。 このように、空気中の水蒸気量の影響を中心に、標高の高い高地では、寒暖差が大きくなるのではないかと考察されます。 <了>

ピノグリ/ピノグリージョは産地によってなぜスタイルが異なるのか?を考察

 今回は、ピノグリ/ピノグリージョの産地によるスタイルの違いを考察したいと思います。 ピノグリとピノグリージョは名前は異なりますが同一品種であり、フランスでは「ピノグリ(Pinot Gris)」、イタリアでは「ピノグリージョ(Pinot Grigio)」と呼ばれています。 この品種は、萌芽が早く、成熟が早いことが特徴です。また、収穫を遅くすることで果実中の糖度を高めることができます。しかし、糖度の高まりが早い一方で、酸味を失うのも早いと言われています。 ピノグリ/ピノグリージョの主な特徴をまとめると次の通りです: ・萌芽が早い ・早熟 ・中程度の終了 ・高い糖度を持つことができる ・糖度の集積が早く、酸味を失うのも早い では、ここから各地で造られるワインのスタイルの確認をしていきたいと思います。 対象とする産地としては、アルザス(フランス)、トレンティーノ=アルト・アディジェ(イタリア)、ニュージーランドの3つをあげたいと思います。 アルザス アルザスのピノグリは、熟度の高い果実から造られるフルボディのスタイルが有名です。 そのスタイルの特徴をまとめると、およそ次のようになるのではないかと思います: ◆アルザスのピノグリワインのスタイルの特徴 【見た目】 ・濃い黄金色 【香り】 ・中程度の香りの強さ ・モモ、リンゴ ・熟成させると → トロピカルフルーツ(バナナ、メロン)、ショウガ、燻製、ハチミツ 【味わい】 ・基本的には辛口~オフドライ(中甘口や甘口のものもある) ・酸味:中程度 ・ボディ:フルボディ ・その他:オイリーな口当たり 【品質】 ・品質:良い~素晴らしい ・価格:中程度~高額 では、なぜアルザスではこのようなフルボディのワインができ上るのかを考察したいと思います。 ◆アルザスの栽培環境による影響 アルザスでフルボディのワインが造られる大きな理由の1つは、高緯度のわりに比較的暖かく、日照時間が長く、乾燥した気候にあると考えられます。 多くのブドウ畑は、ヴォージュ山脈の東側の斜面や平野に位置しており、西側からの雨風から守られることによって、このような好ましい気候に恵まれています。 ブドウ栽培地域としては比較的北部に位置するために日照時間が長く、ブドウの香り成分が十分に成熟することも特徴の1つです。収穫期は1年の中でも比較的乾燥した時期であり、これも...