スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

6月, 2024の投稿を表示しています

最新記事

リースリングの味わいは産地によってどう変わるのか?ドイツ、フランス、オーストラリア産のワインを比較・考察

 今回は、リースリングワインの産地による味わいの違いを考察してみようと思います。 リースリングの有名産地を3か国あげるとしたら、次の3つがあがると思います。 ①ドイツ ②フランス(特に、アルザス) ③オーストラリア(特に、イーデンヴァレー、クレアヴァレー) ドイツ リースリングは、ワイン用ブドウとしてドイツで最も栽培面積の多い品種です。 ドイツ国内のリースリングの産地としては、モーゼルやラインガウなどいくつかがありますが、ワインのスタイルの違いは、産地による影響よりも、ワインのカテゴリ(品質分類)の違いによって大きくあらわれるようです。 スタイルの異なるワインのカテゴリとしては、辛口ワインが多く造られる「 クヴァリテーツヴァイン(Quälitatswein) 」と、多くの甘口ワインが造られる「 プレディカーツヴァイン(Prädikatswein) 」との2つがあげられます。 クヴァリテーツヴァイン は最も生産量の多いワインであり、その多くは、辛口で、ライトボディ、かつ、フルーティーな早飲みワインです。ドイツのワイン産地は、世界のワイン産地の北限に位置しており、ブドウの成熟度はそれほど高くならないために、このようなスタイルになるのだと考えられます。 より成熟度の高いブドウから造られる一部の最高品質の辛口ワインもこのクヴァリテーツヴァインに含まれていますが、その数はそれほど多くありません。そのため、 クヴァリテーツヴァイン は主に次のような特徴をもっていると考察されます: クヴァリテーツヴァインの特徴 【外観】 ・淡いレモン色 【香り】 ・弱い~中程度の香りの強さ ・フルーティーでフレッシュな香り ・ 緑色系果実(青リンゴなど)~柑橘類(レモン、ライムなど) ・白い花の香り 【風味】 ・辛口~オフドライ ・高い酸味 ・低~中程度のアルコール度 ・ライトボディ 【品質・価格】 ・良いワイン ・低価格~中程度の価格帯 ちなみに、先ほど言及したGG(Grosses Gewächs)などの最高品質の辛口ワインの場合には、ブドウの成熟度が高まるために、香りの強さが高くなり、香りには有核果実やトロピカルフルーツの香りが現れ、ボディも中程度以上になることが予測されます。それでも、冷涼地域のワインの特徴である香りの繊細さやボディの軽さ、酸味の高さはしっかりと感じられる...

発酵温度によるワインスタイルの違いのまとめ

マスト(ブドウ果汁や果肉、果皮などの混合物)の発酵温度によって出来上がるワインにどのような特徴の違いが出るのかをまとめてみました。 まず発酵温度についてですが、白ワインと赤ワインでは、低温、高温と言われる発酵温度は異なります。 一般に、白ワインの方が赤ワインに比べて低い温度で発酵されます。 低温での発酵の特徴 低温での発酵の特徴は、フレッシュでフルーティーな香りが生成・保持されやすいこと、また、ブドウからの果汁以外の成分の抽出度合いが低いことです。 それにより、出来上がるワインはフレッシュで果実味があり口当たりの良いものになると言われています。 しかし一方で、長期熟成に必要な果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンや酸味が十分に抽出されないために、早々に出荷されて消費されることを目的とした早飲みタイプのワインになりやすいと言われています。 ちなみに白ワインの発酵温度が赤ワインよりも低い理由は、白ワインにとってフレッシュでフルーティーな香りはより重要で、赤ワインのようにタンニンの抽出を必要としていないことにあるようです。 高温での発酵の特徴 高温での発酵の特徴は、ブドウの果皮などからの抽出度合いが高まるために、果実の香りの凝縮度や、骨格となるタンニンなどの成分が果汁内に多く抽出されることです。 一方で、揮発性のエステルなどの成分が失われてしまうことで、フレッシュでフルーティな香りが失われてしまうとも言われています。 このような発酵の特徴から、高温で発酵された場合には、より長期熟成に向いたワインが出来上がると言われています。 <了>

【考察】なぜ、マセラシオン・カルボニックではタンニンがあまり抽出されないのか?

 赤ワインの製造には、 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」 が用いられることがあります。 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」を用いると次のような特徴を持ったワインが製造されると言われています: ① 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)が起こるためにキルシュやバナナ、風船ガム、シナモンのような独特な香りが加えられる ② 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)によりリンゴ酸が消費されて酸味が抑えられる ③ 嫌気性の反応(ブドウの細胞内の発酵)によりグリセロールが生成されてワインに質感が加えられる ④ 茎由来のスパイスやハーブの香りがワインに加えられる ⑤ 茎由来のタンニンがワインに加えられる ちなみに、 『マセラシオン・カルボニック』 も「房ごとのブドウを用いた発酵手法」の1つです。マセラシオン・カルボニックで製造されたワインは次のような特徴を持っていると言われています: Ⓐ 品種由来の香りに加えて、キルシュやバナナ、風船ガム、シナモンのような独特な香りを持つ Ⓑ フルーティーでタンニンが少なく、早飲みスタイルのワインを造る ここで1つ疑問が発生します。上にあげた特徴の⑤とⒷは明らかに矛盾しているような気がします。 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」を用いると茎の存在のためにより多くのタンニンが抽出されるはずなのに、マセラシオン・カルボニックではタンニンが少ないワインができると言われています。 一見、矛盾に思われるこの特徴の違いがなぜ表れるのかを、一般的な「房ごとのブドウを用いた発酵手法」と「マセラシオン・カルボニック」の工程を比べることで調べてみました。 まず、 「房ごとのブドウを用いた発酵手法」 としてよく用いられる、破砕したブドウマストに房ごとのブドウを加えて発酵させる手法の工程をしたにまとめてみました。 この工程では、果皮や種子に加えて茎もマストに加えられてマセレーション~アルコール発酵が行われています。 タンニンはアルコールに溶けやすい性質を持っているために、発酵によってアルコールが生成されることで、果皮や種子、そして茎から多くのタンニンがマスト内に溶け出します。 これが「房ごとのブドウを用いた発酵手法」において、茎由来のタンニンが抽出される理由です。 では次に、 「マセラシオン・カルボニック」 における流れを見てみたいと思います。下にマセラシオン・カル...