タイトルの通り、ワインの名称に出てくる 「Côte」 と 「Coteaux」 は非常に紛らわしい言葉です。 両者ともに丘陵地や斜面を表す言葉ですが、「Côte」は 「コート」 、「Coteaux」は 「コトー」 と表記されることが多いようです。 「Côte」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Côtes du Rhône (コート・デュ・ローヌ) ・Côtes de Provence (コート・ド・プロヴァンス) 一方で、 「Coteaux」 を含んだワイン名の例としては次のようなものがあります: ・Coteaux Champenois (コトー・シャンプノワ) ・Coteaux Bourguignons (コトー・ブルギニヨン) この2つの言葉の違いを調べてみましたが、どうやら 「Côte」 の方が狭い、特定の丘陵地・斜面を表し、 「Coteaux」 は比較的広い地域を表し、複数の丘陵地・斜面を表すことが多いようです。 例えば、 「Côtes du Rhône 」 はローヌ川沿いにある斜面という特定の地域のブドウ畑から造られたワインを示しています。一方で、 「Coteaux Champenois」 は、シャンパーニュ地方にある広範囲の数々の丘陵地から造られたワインを指しているようです。 詳しいことはそこまでよくわかりませんが、 ・「Côte」 → 狭い、特定のエリア ・「Coteaux」 → 広い、包括的なエリア のような使われ方のようです。 ちなみに、プロヴァンス地方のロゼワインのAOCでは、広さにそんなに違いがないにも関わらず「Côte」と「Coteaux」 の名が付くAOCが入り混じっています。 「Côte」と「Coteaux」 のどちらが含まれるのかは、必ずしも広さだけでは決まらないようです。 <了>
赤ワイン、白ワインにはブドウの果皮からの成分抽出を促すためのさまざまな醸造の選択肢(オプション)があります。
しかし、どれも名称や手法が似ていて、覚えるのにとても苦労をした経験があります。
例えば昔、JSAソムリエ・ワインエキスパートの模擬試験で、次のような問題が出題されました。
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Q. 次の中から、果醪中の種子からタンニンの抽出を強めることができる醸造法を1つ選び、解答欄にマークしてください。
1. Cold maceration
2. Maceration finale a chaud
3. Cryo-extraction
4. Micro-bullage
(答え: 2)
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この問題を見て、当時は面食らってしまって、当てずっぽで回答をしたのを覚えています。。
面食らってしまった理由は、何よりも、醸造理論をしっかりと理解していなかったからです。
そんな経験を踏まえて、今改めて、果皮からの抽出における醸造オプションを整理しなおしてみました。
適用のタイミングと、適用温度で整理をしていくと、それぞれのオプションが異なる目的で行われている理由が見えてきて、それぞれの違いが明確になりました。
マセラシオン・プレフェルメンテール・アショー(Macération préfermentaire à chaud)=MPC
【特徴】
・破砕後、果醪を70℃前後まで加熱し、一定時間保持。色素・タンニン抽出を行い圧搾、その後は果汁を常温まで下げてから発酵させる方法。(加熱、冷却後、圧搾せずに果皮・種子ともに発酵させる場合もある)
・色素がよく抽出される。タンニンが少ないので早く飲める。
【ポイント】
・高温(70℃)により細胞壁から色素成分であるアントシアニンが抽出されやすくなる。
・アルコールに抽出されやすいタンニンはあまり抽出されない。
・温度を適切に管理しないと、ワインの香りが熱処理をされたような香りになってしまう。
マセラシオン・フィナル・アショー(Macération finale à chaud)=MFC
【特徴】
・アルコール発酵が終了してからマロラクティック発酵が始まるまでの間、果醪中に果皮と種子が残っている状態で、30~40℃に揚げ、一定期間保持する方法。その後、果醪の温度は下がり、20℃以下になることもある。
・果醪中にアルコール分があるため、果皮や種子からのタンニン抽出を強めることができる。
【ポイント】
・アルコール発酵後なので、アルコールに溶けやすいタンニンが抽出されやすい。
・アルコール発酵後そのまま放置なので、温度は自然にやや高温(30~40℃)になる。
マセラシオン・プレフェルメンテール・ア・フロワ(Macération préfermentaire à froid)= MPF /コールド・マセレーション(Cold maceration)
【特徴】
・発酵前低温(5~15℃程度)浸漬(しんし)。発酵前に果醪を数日~10日間程度低温で保持させ、果皮成分を抽出させること。
・ブドウの酵素により、果実味のある赤ワインとなる。
【ポイント】
・アルコール発酵が開始されないように、温度は低温に保たれる。
・アルコールがないためにタンニンは抽出されにくく、主に色素、風味成分が抽出される。
スキン・コンタクト(Skin contact)= マセラシオン・ペリキュレール(Macération pelliculaire)
【特徴】
・白ワインのアルコール発酵に先立ち、短期間(数時間から一日程度)、果汁と果皮を接触させておく技術。
・果皮からの香り成分の抽出が目的。
【ポイント】
・白ワインの場合は、果皮から苦いポリフェノールが抽出されるのを防ぐ必要があるために、果皮との接触はごくわずかな期間(数時間~1日)である。
・白ワインに不適切な香りは低温では抽出されにくいために、温度はごく低温に保たれる。
・不適切な香りが発生する危険があるために、この手法による効果の大きいソーヴィニヨン・ブランなどの一部の香りの強いブドウのみで行われる手法である。